理科 高等学校学習指導要領分析
2018(平成30)年3月に告示された高等学校学習指導要領の分析報告
*2018年7月に公開された「高等学校学習指導要領解説」の分析を踏まえ、分析結果を修正・追記しました。(2018年10月)
1.科目構成・単位数
新学習指導要領(以下、新指導要領)の理科においては、科目の構成、標準履修単位数ともに現行教育課程から大きな変更はないが、『理科課題研究』が発展的に廃止となり、「課題研究」の内容を踏まえた共通教科として理数が新設され、『理数探究基礎』及び『理数探究』科目が設置された。
[理科の変遷]
2.理科の目標
今回の改訂は、平成28年(2016年)12月の中央教育審議会答申の中で示された基本的な考え方と改善事項を踏まえて行われており、目標の示し方や学習内容等の改善がされている。目標については、現行の学習指導要領(以下、現行指導要領)では「科学的な見方や考え方」の育成を目標として位置付け、資質・能力を包括するものとして示してきたが、新指導要領では「見方・考え方」は資質・能力を育成する過程で働く、物事を捉える視点や考え方として整理し、育成を目指す資質・能力を具体目標として示している。
教科、各科目で示されている目標は、小学校及び中学校理科の目標との関連を図り、それぞれの特徴を踏まえながら、どのような学習の過程を通してねらいを達成するのかを示した前文と、どのような資質・能力の育成を目指しているのかを示した(1)~(3)の具体的な目標で構成されている。(下記「理科の目標」参照)また、資質・能力は「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力等」、「学びに向かう力、人間性等」の三つの柱に沿って整理されて示されている。
今回新たに目標に追加された「理科の見方・考え方」の「見方」については、現行指導要領においても科学の基本的な見方や概念の柱として、理科を構成する領域を「エネルギー、粒子、生命、地球」の4つの柱に分け、小学校、中学校及び基礎を付した科目の理科の内容の構成を示している。新指導要領では同柱のもと、内容構成を改善し、各領域の様々な事象等を捉える各科目ならではの特徴的な視点を具体的に記し、科学に関する基本的概念の一層の定着が図れるようにしている。
「考え方」については、現行指導要領でも科学的な思考力・表現力の育成を図る観点から、観察・実験などの科学的な探究活動を通じて、結果を分析し解釈して自らの考えを導き出し、それらを表現するなどの科学的に探究する方法を用いて考えることと整理されている。新指導要領では「資質・能力を育むために重視すべき学習過程のイメージ」(下図)が示され、探究の過程と、どのような考え方で思考していくのかが明確化されている。ただし、この「考え方」は、物事をどのように考えていくのかという思考の枠組みであり、「~的に考えることができる力」や「~的に考えようとする態度」のような資質・能力としての思考力や態度とは異なることに留意が必要である。
これらの「見方」「考え方」から「理科の見方・考え方」については、「自然の事物・現象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え、比較したり、関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」と整理することができる。また、これらの科学的に探究するために必要な資質・能力を育成する観点から、探究の学習活動を一層充実させるために、各科目の内容には「観察、実験などを行い」や「特徴を見いだして表現する」などの記載がされ、「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学び」の視点で、学習の見直しや指導の改善を進めることを強調している。
3.今回改善・充実した主な内容
教科、各科目の内容については、内容の系統性の確保とともに、育成を目指す資質・能力とのつながりを意識した構成、配列となるように、学習内容の改善が図られている。改善・充実した主な内容は下記のとおりである。
また、『生物基礎』『生物』においては、主要な概念を理解させるための指導において重要となる用語を中心に、その用語に関わる概念を、思考力を発揮しながら理解させるように指導することとし、重要用語が『生物基礎』では200語程度から250語程度、『生物』では500語程度から600語程度と示された。
各科目の分析内容については、科目ページで報告する。
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