2023年度 日比谷高校問題分析 受験生情報局 | 河合塾Wings 関東
2023年度 日比谷高校の入試問題分析
日比谷の英語
2023年度入試問題
難易度の表記
A:易問(全問正解したい)
B:標準問(受検者平均を取るために正解したい)
C:難問(差をつけるために得点したい)
D:最難問
問題分析
【2】は海外からの留学生を含む、4人の学生による対話文形式の出題。「代替肉」というテーマで、大きく「植物由来」のものと「動物細胞由来」のものとで分かれることを比較しながら、それぞれの特徴を理解するという読解力が求められた。問2では会話の流れに合うように、英文の並べかえを問う問題が出題されたが、単語自体は平易なものだが確実な文法力、そして文脈に合った英文構成力が求められた。引き続き出題頻度の高い後置修飾の英文に慣れておく必要がある。
【3】は日常生活にあふれている「デザインの有用性」に関する説明文が出題された。問2では本文の流れから「取り除いた方がよい文」を選択する問題が出題され、また問5では本文の流れに合うように空欄に15語以上の英文を記述する問題が出題された。いずれも正確に英文の内容を把握する力、そして本文に適した正確な英作文力が求められる。日比谷高校の英語の特長として「記述問題」が多く出題されているが、今後もより速く、正確な、そして本文の流れに沿った論理性の高い記述力が求められる。普段から簡潔な表現で自分の考えとその経緯・理由を英語で書いたり、他の人が書いた表現を参考にしたりと、自身の表現のレパートリーを増やしておくことも記述対策の勉強法になるだろう。
【4】は中学校の文化祭で、クラスの演劇をするにあたり2つの案のうち、どちらがよいか、2つの資料からそれぞれ根拠をあげて、50語以上の英語で記述する問題が出題された。資料1ではそれぞれの案のメリット、デメリットの比較、資料2では文化祭で何を重視するかの比較をしたうえで、自分の英語力に合わせて表現するということから、難度はかなり高いと考えられる。しかし、この英作文の得点が他の受験生との差につながるとも考えられるので、普段から自分の英語力にあった分析能力・表現力を意識することが大切だと言える。今後も、いかに速く読み取り、記述の時間を確保できるかが合格へのカギとなるはず。普段からスピーディな処理能力を高めることを意識していこう。
日比谷の数学
2023年度入試問題
難易度の表記
A:易問(全問正解したい)
B:標準問(受検者平均を取るために正解したい)
C:難問(差をつけるために得点したい)
D:最難問
問題分析
全体的な難易度は他の自校作成問題校と比べても易しい。令和3年度入試から続いている易化の流れだが、得点に差をつけさせ、数学の得意な中学生を合格させたいという狙いだろう。
【1】は例年通り、5題構成の小問集合であった。内容も計算、方程式、変域、確率、作図とほぼ例年通り。いずれの問題も難易度は高くなく、全問正解を目指したい。
【2】の内容は例年通り、放物線と直線をテーマとするものであった。3題のうち2題は「平行線と線分比」に関する知識が必要で、座標平面における線分比の扱いには慣れておきたい。いずれの問題も複雑な条件などがないため、素直に解けば正解できる。ミスなく正確に解き進めたい。
【3】も例年通り、内容は円をテーマとするものであった。ただし、3題とも円の性質としては「円周角の定理」のみを利用すれば(もちろん、他の図形的性質は利用するにしても)答えまでたどり着ける問題であった。また、3題とも問題文が1行という驚きのシンプルさで、複雑な条件などはないため、証明問題も含めてしっかりと正解したい。
【4】も例年通り立体図形の問題で、いずれの問題も難易度自体は高くない。ただし、問2は、日比谷特有の「普通に解くと途中の数字が汚いが、比などを使って工夫すればきれいに解ける」問題で、計算力が問われた。問2と問3は問題用紙に図形が書かれておらず、受験生が自分で図を書くなどして考えなければならなかった。これは大学入試なども意識した作問であろう。
いずれの問題も難易度は高くないが、良問である。日比谷高校の入試問題では、しっかりとした数学力が求められるため、合格するためには日頃から暗記に頼るのではなく本質を追求するような姿勢が必要となろう。
日比谷の国語
2023年度入試問題
難易度の表記
A:易問(全問正解したい)
B:標準問(受検者平均を取るために正解したい)
C:難問(差をつけるために得点したい)
D:最難問
問題分析
【1】漢字の読み 10点 【2】漢字の書き取り 10点
【3】小説文 28点(前年比+4点) 【4】論説文 32点(前年比-4点) 【5】融合文20点
昨年は【4】にあった80字の記述問題が【3】に設けられたが、80字の記述問題と250字作文以外は選択問題という形式は昨年と同じであった。文章量は昨年と比べて全体で2000字程度減少しているが、それをもって易化としたとは言えない印象。
【1】、【2】(漢字の読み書き)
書きの「リクゾク」「カンケン」など、中学生が日常で接する機会が無い熟語が出題されるのは例年通り。難易度Aに分類した小問も「日比谷高校の受験生」を想定したものであり、平均的な中学生にはとっては決して容易ではない。語彙力の強化が合否を分ける。
【3】小説文(山本兼一「花島の夢」約3,300字、前年比-約1,900字)
現代が舞台だった昨年と変わって、今年は狩野永徳(安土桃山時代の絵師)が主人公の作品。ここ数年継続していた「年長者との対話を通じて年少の主人公が気づきを得るという展開」とは異なり、「狩野一門を率いる永徳が一門を破門になった長谷川信春から気づきを得る」という展開であった。「気づきを得る」という展開は同じだが、「得る者」の立場が「年少者」ではなく「狩野一門を率いる永徳」に変わったため、受験生は「気づきを得る側の気づきを素直に受け止めることへの葛藤」という要素も読み取る必要があった。昨年にはなかった記述問題は、この「葛藤」を問うたもの。
【4】論説文(若林幹夫「地図の想像力」 約3,500字、前年比-約100字)
「『世界というテクスト』を読み解こうとするそうした試みの一つの可能なあり方として、世界を空間的な像として読み解く」地図について述べた文章。上記引用部のように難解な文体であり受験生は本文の理解に苦労したのではないかと思われる。一方で、設問の選択肢は正誤の判断がしやすかった。「本文を十分理解できなくても、設問は解ける」というある種の割り切りを試験中にできない場合、多くの受験生にとっては試験全体の時間配分が難しかったであろう。試験中の臨機応変な対応能力が問われた問題といえる。もちろん、これから十分な時間をかけて受験勉強ができる受験生は、この手の文体に慣れておくことも大切である。
【5】融合文(尼ヶ崎彬「花島の便」 約3,800字、前年比+約100字)
歌人が題材に着想した「心」とその歌人が持つ世界観との関係性を、室町時代の歌人・連歌師心敬を例に挙げて論じた文章。「本意」、「無常」、「幽玄」、「あはれ」、「うつくし」、「冷え」といったそれぞれの概念の本文中における定義を素早く把握することが求められる。文法問題は助詞「ばかり」の識別で、特に知識がなくても現場で対応しやすい問題であった。都立の【5】は「古文の問題」というイメージもあるが、日比谷高校のこれは「古文が出てくる論説文の問題」といった印象で、共通問題のように【5】で時間を稼ぐのは難しいと思われる(稼げるのは文法問題の分くらいだろうか)。なお、引用されていた古文などには概ね現代語訳あるいは大意の解説がついていた。
お問い合わせ・お申し込み
-
イベント申し込みはこちら
-
資料請求はこちら