日比谷高校問題分析 受験生情報局 | 河合塾Wings 関東
2024年度 日比谷高校の入試問題分析
日比谷の英語
2024年度入試問題
難易度の表記
A:易問(全問正解したい)
B:標準問(受検者平均を取るために正解したい)
C:難問(差をつけるために得点したい)
D:最難問
問題分析
今年度の日比谷高校は、【2】では対話文、【3】では説明文、【4】では自由英作文の出題となり、例年の出題傾向を踏襲した形であった。
【2】は「環境」をテーマにした内容で、地球環境にやさしい素材についての読解問題であった。本文中や選択肢にもsustainable(環境にやさしい、持続可能な)という語が使われており、こういったテーマに日頃から数多く触れていた受験生にとっては読みやすいものであった。問2では文整序問題が出題されており、指示語や代名詞に注意を払いつつ、文章の流れを読み取る力が求められた。また、問5では昨年度と同様、プレゼンテーションの原稿の空所に合う内容という条件で、30語以上の自由英作文が出題された。本文中で言及されている内容をもれなく含み、論点がずれない形で表現するには、確かな読解力と記述力の両方が必要となる日比谷高校の特徴的な問題の1つである。「自由」とは名ばかりで、書くべき内容は決まっていることに注意したい。
【3】は「記憶と忘却のメカニズム」についての説明文型の読解問題であった。選択式の問題については全般的に平易なものが多く、確実に得点したい。問3は、昨年度同様「不要文選択」の問題が出題されており、下線部はもちろん、下線が施されていない箇所の内容を前提に、文脈を正確に捉える必要がある。問4の自由英作文も同様ではあるが、下線部や空所前後の内容を精読し、「論理的整合性」が取れる英文を選んだり書いたりする力が極めて重要だと言える。
【4】は例年通り自由英作文の出題ではあったが、昨年度までの「50語以上」から、今年度は「50語程度」への変更が見られた。資料2で提示された2種類の議論の仕方のうち、どちらがよいかを資料1を踏まえて記述しなければならないのだが、目に見えている部分の特徴だけを結び付けただけでは十分な解答とは言い難い。資料1から読み取れるのはthere are many different opinions among studentsという内容であり、これは発表されている解答例2種のいずれにも含まれている文である。つまり、その内容とType-AまたはBがよいと結論付ける文の間に「何を書くか」が重要であるということを物語っている。可視化されたことだけに終始せず、根拠を論理的に説明する力が必要になってくる。
日比谷高校は記述問題の配点が高いことが特徴であり、本文の流れに沿った論理性の高い記述力が求められる。高度な内容を使ったからと言って加点されることはないため、普段からシンプルな表現で自分の考えとその経緯・理由を英語で書いたり、他の人が書いた表現を参考にしたりと、自身の表現のレパートリーを増やしておくことも記述対策の勉強法になるだろう。
日比谷の数学
2024年度入試問題
難易度の表記
A:易問(全問正解したい)
B:標準問(受検者平均を取るために正解したい)
C:難問(差をつけるために得点したい)
D:最難問
問題分析
今年度は記述式の問題が1問減る(その代わりに記号選択問題が2問追加された)など、昨年度までの易化の流れを引き継いだ。ただし、記述式の問題でシビアな採点がなされており、高校がしっかりとした記述のできる生徒を求めていることがわかる。
【1】は例年通り、5題構成の小問集合であった。計算、方程式、確率、作図の他に四分位数の問題が出題された。「データの活用」の出題は最近のトレンドなので、しっかりと準備をしておくべきである。ミスなく解き進め、全問正解を目指したい。
【2】は例年通り、放物線と直線をテーマとするものであった。座標を文字でおき、長さを求める際に符号に注意が必要だが、3題とも比較的解きやすい問題である。いずれの問題も複雑な条件などがないため、素直に解けば正解できる。ミスなく正確に解き進めたい。
【3】も例年通り、円をテーマとするものであった。問1の角度の求値、問2(1)の三角形の合同の証明とも、「円周角の定理」や「円に内接する四角形の性質」を利用すればよく、サクサクと解き進めたい。問2(2)も「三平方の定理」の基本問題なので、しっかりと正解しておきたい。
【4】も例年通り立体図形の出題であったが、図形の影に関する問題であったため、この手の問題に触れたことの無い受験生にとっては難しく映ったかもしれない。また、問題文が会話文形式となっており、文の中から正確に条件を読み取る必要がある。特に問3は「円の接線の性質」が絡む難問で、総合的な数学の知識を必要とした。問1は確実に正解したい。
標準的な難易度の問題が多いが、いずれも非常に良問である。今年度の大問2は過去に国立高校で出題された問題と非常に似ていた。他の自校作成問題校の過去問を解いておくのも、日比谷高校対策には有効である。
日比谷の国語
2024年度入試問題
難易度の表記
A:易問(全問正解したい)
B:標準問(受検者平均を取るために正解したい)
C:難問(差をつけるために得点したい)
D:最難問
問題分析
【1】漢字の読み 10点 【2】漢字の書き 10点
【3】小説文 28点 【4】論説文 32点 【5】融合文 20点
昨年度と出題形式を比較すると、【4】【5】それぞれの記号選択問題が一題ずつ抜き出し問題に変更され、それ以外の変化は見られなかった。文章量は昨年と比べて全体で1,250字程度増加しており、その大半は【4】であるものの、テーマは「科学における客観性」「AI」というよく取り上げられるものであるため、都立最難関校の問題として捉えると、文章内容の把握が難しかったとはいえない。
【1】、【2】 (漢字の読み書き)
書きの「ボウガイ」「フタイテン」など、中学生が日常で接する機会が無い熟語が出題されるのは例年通り。「カイシン」は傍線部だけで見ると難易度Aといえるが、「カイシンの友」という言葉を聞きなれない受験生は一瞬戸惑ったと考えられる。その他「イチヨウライフク」や読みの「眉唾物」「閑寂」なども含め、語彙力の強化が望まれる。
【3】小説文(川﨑秋子「温む骨」約3,650字、前年比+約350字)
40代半ばで勤め先の銀行をやめた主人公が、趣味であった陶芸を新たに仕事とし働く中での苦悩が描かれている。昨年度の「狩野永徳」「画家」の文章と比較すると、現代が舞台となっているため、受験生として一般的な小説文の読解力が身についていれば、「受験生と年が離れた主人公」「陶芸」という内容を差し引いても読み取りの易しい文章であったといえる。設問については、適切なものを2つ選択するという日比谷高校では新傾向の問題が一題出された。80字の記述問題は、陶芸を続けることに対する主人公の「苦悩」の内容を問うたもの。
【4】論説文(大塚淳「深層学習後の科学のあり方を考える」一部改変 約4,600字、前年比+約1,100字)
科学における「合理性」「客観性」の関係と、「AI」の導入について述べた文章。「AI(コンピュータ)」がテーマとして日比谷高校で出題されたのは、古くは2006年度、また2020年度にも。文章量が多いため、段落ごとの要旨を捉えながらテンポよく読み進める必要があった。一方で、設問の選択肢は正誤の判断がしやすく、3字の抜き出し問題についても傍線部以降の同段落内にあることから、文章読解の基礎的な力があれば解答できたであろう。250字の作文についても、「AIの活用の可能性」についてという“流行り”のテーマのため、本年度は時間配分をうまく行って書き進めたい問題であった。
【5】融合文(中西進「万葉のことばと四季」一部改変 約3,600字、前年比-約200字)
万葉人が和歌の中で詠む「花」に対するイメージを、8首を例に挙げ説明している文章。和歌の数が多いものの、直後にそれぞれの解説があるため読解について難しいとはいえず、中学の学習範囲「万葉集」の背景知識があれば、むしろ受験生にとっては読みやすい文章であっただろう。文法問題は副詞「およそ」の意味・用法の識別で、特に知識がなくても現場で対応しやすいものであった。小問5は本文全体の表現や内容について問われているため正答を吟味する時間がいささか必要であろうが、3年ぶりの出題となる抜き出し問題を含め、いかに時間をかけずに【5】を解ききるかが合格点を取る鍵となる。
お問い合わせ・お申し込み
-
イベント申し込みはこちら
-
資料請求はこちら