今春の都立高校入試を振り返る 受験生情報局 | 河合塾Wings 関東
2022年度の都立高校入試を振り返る
~コロナ禍の下2回目の入試で変わったこと~
全日制都立高校の一般入試の受検状況
今春の都内公立中学卒業生は76,400人余りで、昨春より約1,800人増加しました。全日制都立高校の募集定員も、30,204人に変更され、前年度の29,407人より797人増となりました。それに対して受験者は1,404人の増加となり受験倍率は1.29倍と、昨春の1.28倍から微増しました(表A参照)。
この結果、全日制168校全体で1,709人の欠員(昨春1,152人)が発生し、23区東部と多摩西部の中堅・下位校を中心に多くの第二次募集が実施されました。その数は分割後期募集の学校も含め、71校(昨春も同数)に及びました。
都立高校への出願者が減少していること、上位校を中心に、出願していて当日の試験を欠席する生徒が2,180人に及ぶことは、有名私立大学の附属校を中心とした私立高校との競合が23区西部から多摩東部にかけて激化していることを示しています(表C参照)。
一方で進学指導重点校(日比谷・西・国立・戸山・青山・立川・八王子東)と進学重視型の単位制高校(新宿・国分寺)などの都立トップ校は大学受験の実績に裏づけられた人気を保ち、受検生にとっては厳しい入試が続いています。進学指導重点校と進学指導特別推進校(新宿・国分寺・駒場・町田・小山台・国際・小松川)の入学手続き後の辞退者は合わせて43人(内:日比谷14人)で、昨春の26名から大幅に増加しました。
また、進学指導重点校では昨春に比べ、すべての学校で不合格者が増加しました(表B参照)。
入試制度の変更点と令和5年度入試の展望
昨春に続きコロナ禍の下での入試となった今春の都立高校入試では、コロナへの対応をより進めた一方で、新たな選抜方法の試みもなされました。主な変更点は以下の通りです。
(1)男女定員の緩和の拡大
男女定員の緩和とは、男女別の定員を設けている高校で、定員の10%は男女合同で選抜する制度です。
全国の公立高校で唯一、男女別で定員を設けている都立高校は、段階的に制度を見直し、男女別の定員を廃止することになりました。撤廃の時期は未定ですが、性別によって合格点に差が生じている現状を解消する方向にかじを切りました。
その第一段として一部の都立高校(42校)で実施していた男女定員の緩和を、普通科全日制のすべての都立高校(109校)に拡大することになりました。その結果、男女の合格者数にどのような影響を与えたのでしょうか。都立高校の男女の定員比は都内の中3生の比率に合わせてあり男子52%・女子48%になります。男女定員の緩和分をすべて男子の合格にした場合は男子57%・女子43%、すべて女子の合格にした場合は、男子47%・女子53%になります。この割合をふまえて進学指導重点校7校の合格者の割合を見ていくと(表D)、日比谷・国立では緩和分の定員のほとんどが男子に、西ではほんどが女子にまわされています。意外だったのは青山で、女子の倍率が高い中、男子に定員がまわされています。戸山・立川・八王子東ではほぼ影響がありませんでした。
普通科全日制都立高校全体でみると、男女の倍率の差が0.3以上あると、緩和分の定員のほとんどは倍率の高いほうにまわされていました。
まだ実施年度は発表されていませんが今後男女定員の緩和枠を20%に拡大し、その後男女別定員の廃止になります。
(2)インターネットによる出願の拡大
昨春は立川高校のみで実施されたインターネットによる出願が20校に拡大されました。来春には全校で導入ということも考えられます。受験生にとっては利便性があがります。
(3)インターネットによる合格発表のセキュリティ強化
従来通りの校内掲示と併せて、昨春からインターネットによる合格発表も導入されました。校内掲示よりも早い時間(8時30分)に開示されるため、ほとんどの受験生はインターネットで合否を確認しました。しかし、都立高校のインターネットによる合格発表は合格者の受験番号をすべて掲載する方式のため、自分の前後にいた受験生の合否までわかってしまうという問題点があります。そこで今春はインターネットによる出願をおこなった20校については、合否を確認する際にパスワードを入力し自分の結果だけがわかる仕組みに変更されました。ほとんどの私立高校が導入しているため、受検生もトラブルなく見ることができたのではないでしょうか。こちらについても来春は全校で導入の可能性が高いのではないかと考えられます。
(4)募集停止と新設学科
募集を停止したのは両国高校、大泉高校など、新設学科は立川高校創造理数科などです。
(5)新たな特別推薦枠(理数等特別推薦)の設置
理数等特別推薦では、科学技術の根底にある理数系分野の素養を前提に、「探究の過程を通して課題を解決する力」、「他者の考えから自分の考えを深めるとともに新しい価値を生み出す創造性」など、変化し続ける社会にあって生徒たちに必要となる力を評価して選抜が行われました。今春は立川高校創造理数科で実施されました。来春以降は多摩科学技術高校・科学技術高校や区部に新設される理数科などでも導入される可能性があります。
(6)令和5年度入試の展望
東京都の中学3年生人口は増加傾向にあります。都立高校では中学3年生人口増加分の5~6割程度募集定員を増やしますが、過去の例ではトップ校のクラス増は1校あるかないかです。将来の難関大学の受験をめざす学力上位層にとっては一層厳しい競争となりそうです。
また、延期されていた「英語スピーキングテスト(ESAT-J)」がいよいよ始まります。入学者選抜での正式な活用方法は令和4年9月公表予定の「令和5年度東京都立高等学校入学者選抜実施要綱」で決定されます。
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