-K会講師OB・OG講師によるコラム- 数学つれづれ草 2017年度 K会講師OB・OGによるコラム | K会
「数学に出会えて本当に良かった」関 典史
「数学に出会えて本当に良かった」関 典史
これを読んでいる方は数学が好きだったり、数学に興味を持っていたりする方が多いかもしれません。みなさんにとって数学の魅力は何でしょうか。例えば、小学校で学んだ算数と比べて中高の数学についてどのような印象をお持ちでしょうか。実は私自身は小学生のとき、「算数はとても好きだけれど、数学になると色々な謎の道具が増えるらしい。少ない道具や知識でいろんな工夫や発想を駆使する算数のほうが面白いのではないか。」と思っていました。しかしこの考えは数学を勉強し始めて直ちに改められることとなりました。中高の数学で新たに導入される概念や道具は、(初めて見るときは謎に思えても)理解が進めば決して謎なものではなく、算数では扱えなかった、あるいはバラバラに扱われていた様々な現象をより統一的に捉え、さらに広く深い数学的思考を実現するために非常に有益なものだったのです。例えば算数では別々に扱われることの多い◯◯算たちは、本質的には一次方程式を解くことによって解かれることが分かったり、算数では深く解析しきれない図形の様々な性質が座標・ベクトル・三角関数といった道具によって解明できたり、といったようなことです。
このように算数から数学になると世界が広がるのですが、実は中高で学ぶ数学は数学の世界のほんの入口にすぎません。その先には大学で学ぶ数学、さらには大学の数学科に進学した人たちが学ぶ数学、そして現在数学者たちによって研究されている数学があります。こういった先端の数学は現代数学と呼ばれていますが、この現代数学の魅力について個人的な思いを以下に述べようと思います。ここでは現代数学の魅力を大きく三つに分けて説明します。
一つ目は統一的な理論を追究する学問であることです。統一的というのは抽象的あるいは一般的と言ってもよいのですが、できるだけ広範にわたる対象・現象を統一的に扱うことのできる概念、説明することのできる理論を構築することが数学の大きな目標です。過去の、そして現在の数学者たちの一般化・抽象化の努力の上に現在の数学は成り立っており、その努力によって生み出された数々の理論を学ぶことができるのは現代に生きる我々にとって非常な幸運だと思います(もちろんより後世の人たちはより幸運かもしれませんが)。これだけだとなにかぼんやりしていて魅力が伝わらないかもしれませんが、身近なところで言うと冒頭で述べた算数と比べた数学の魅力もこれにあたります。中高の数学からより先に進むと、より広範な対象を扱う美しい理論に出会うことができるのです。
そして二つ目は、数学は普遍の真理であるということです。定義や公理から出発して、客観的に誰から見ても正しい論理の積み重ねのみで非自明な深い結論に到達するという数学の営みの中には一点の曇りもなく、圧巻という他ありません。みなさんは普段の勉強の中で問題を解く際に、一見して解法の道筋が見えなくても、こつこつと議論を重ねて最終的に解答に辿りついたという経験をすると何とも言えぬ気持ちよさを感じるのではないでしょうか。あるいは解けずとも、解答を読んで完全に納得がいったときの気持ちよさでも構いません。その曇りなき完全な納得こそ、数学の大きな魅力の一つであると思います。
最後に三つ目は、一見関係の無さそうな対象どうし、分野どうしの間に不思議な共通点や対応が見つかることです。代数的な対象と幾何的な対象に実はなんらかの対応があり、代数的な対象を調べることで幾何のことが分かったり、またその逆のことができたり、ということがしばしばあります。「不思議な」と言いましたが、そのような共通点や対応は、よく考察すると自然に思えることもあれば、本当に不思議だけれども共通点はたしかにある、ということもあります(後者の場合でも理解できていないさらに深い何かがあって実は自然なのかもしれませんが)。このような事象に出会うと、数学という世界の広大さと深淵さを垣間見たような気分になります。
これまで私の個人的な思いを述べてきましたが、これを読んで少しでも現代数学に興味を持ってくだされば幸いです。本屋や図書館で面白そうな数学の本を手にしてみるのもよし、K会で現代数学を学んでみるのもよし、さらにのめり込んで自分で数学の研究をするのもよしです。私自身は数学の世界から離れて現在証券会社で働いていますが、数学と出会うことができて、数学の魅力の一端を感じることができて、本当に良かったと思っています。数学という唯一無二の存在が、みなさんの人生を豊かなものにしてくれることを願っています。
-K会数学科OB講師によるコラム-
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