第5回「留学コラムのまとめと中高生のみなさんに贈る言葉」 横山匡の留学コラム・オンライン個別相談 | 海外大進学相談センター
中高生のみなさんに贈る言葉ベスト10はVUCA & Globalな時代を生き抜くためのキーワード!
みなさんこんにちは。河合塾グループ・海外大進学シニアアドバイザーとして海外留学を検討、希望する中高生の指導、支援をさせていただいています横山です。隔月でグローバル時代、グローバル社会に求められる人材像や海外大学の入学審査官の視点などを通じて、中高生のこれからの高校生活で意識しておいて欲しいポイントをお伝えできればと思いこのコラムを書いてきました。
第1回では「VUCA & Global時代を生きる人材に求められる意識と行動。高校生活における最優先テーマ」に関して、第2回では「Global人材の定義とは?」と題して、とかく一人歩きする「グローバル人材」という言葉のエッセンスについて伝えさせていただき、第3回では「グローバル人材に求められる5本柱」の話を紹介させていただきました。そこで紹介した「求められる人材像」を前回の第4回ではもう少し具体的に「海外大学の入学審査官が求めたい人材像」という視点から深掘りしてみました。
そして今回、最終回の第5回ではこれらのエッセンスの振り返り、それらの連動性をまとめ、そして最後に私が大学在学中に出会った、これからみなさんが学生生活を送っていく中で意識しておいていただきたいいくつかのキーワードをお伝えして1年間お付き合いいただいたコラムの締めくくりとしたいと思います。
留学コラム1年間の振り返り
第1回目のテーマは「VUCA & Global時代を生きる人材に求められる意識と行動を考えて見る」でした。
自己紹介や私の大学時代に刺激を受けたエピソードなどを紹介させていただきました。
そして、現在さまざまな活動に関わらせていただいていますが、それらの活動の根底にあるキャリアテーマは「世界を舞台に一番ワクワクする未来像を考え、(どこで、だれと、何をしながら生きて行きたいか)の選択肢に気づき、めざし、近づいていく応援と指導」であるとお伝えしました。ゆえに、表面的な職種は多様に見えても私の活動の共通点は
1)自分では気づけない自分の選択肢や可能性に気づかせる「気づかせ屋」
2)「正解」を作っていく上で最も納得度の高い意思決定を導く「納得づくり」のパートナー
3)そして、定めた目標を諦めずに近づいていくために手と声が届く距離で伴走する「プロフェッショナルおせっかい」
の3本柱で成り立っています。それではこの1年のコラムの振り返りをしてみましょう。
過去4回のハイライト
第1回 VUCA & Global時代を生きる人財に求められる意識と行動とは?
VUCAとは
Volatility:変動性
Uncertainty:不確実性
Complexity:複雑性
Ambiguity:曖昧性
の頭文字を並べたものです。
これまでの常識が通用しないVUCA時代においてはこれまでの常識や価値観、慣例にとらわれず「本当にそうかな?」「今でもそうかな?」を考え、様々な多様性を認め合える柔軟な思考を持つ人材が求められます。シンプルに例えるなら“The Answer”の「正解がある」時代から“My Answer”「自分の判断、決断への納得」が求められる時代になっていきます。日本の教育で育ってきた若い世代にはThe Answerを導く力は高いものの、“My Answer”を導く練習、そしてその前段にある“My Questions”の立て方の練習不足を感じます。練習不足であって能力不足ではありません。
●「Global人材」とはどういう人?
第2回のコラムで深掘りしましたが、初回でも皆さんがどんな人材像を持ってこれからの学生生活を送っていくのかを考え始めました。そして、SDGs、ESG、Well Being、DEIなどこれから頻繁に耳にするであろうテーマや視点を紹介しました。国際社会で語られることが増えているこれらのテーマを頭の片隅に置きながら、私がさまざまな分野で指導をする際に投げかける極めてシンプルながらもとても大切な2つの質問を紹介しました。
①今日現在あなたが考えられる、または想像できる「最も納得感の高い(ワクワクする)未来」
を私に語ってください。それに近づく為に今を過ごし、これからを過ごしていくのだと思います。
②では、なぜその未来はすぐに実現しないのかを考えてみてください。
何が必要で、そして何を今の段階である程度持っているのかを把握し、故にまだ何が足りないのかを理解する。そしてそれをこれから何年もかけて順番に揃えていくのが「キャリア・プランニング」ですね。
これは、新たな学び、新たな出会い、新たな気づきで「その時の最適」「その時の最も高い納得度」をアップデートしていく癖付けを身につける上での一つの考え方で、正解がない時代における「個々のその時の最適な納得作り」の初めの一歩です。そしてその未来像は来年「進化」して行って良いのです。それは進化と捉え、変化を「ブレた」というマイナス思考にする必要はありません。一度納得したものを新たな気づきや出会い、学びを経てアップデートし変化していくことは成長ですから「その時の最適」を考えていける思考と行動が起きれば大丈夫です。VUCAの時代に「今決めたことがずっと最適であり続ける可能性」の方がむしろ低く感じられます。
第1回では教育とEducationそれぞれの価値についてもお伝えしました。ぜひ読み返してみてください。
そして、AIなどが発達していくこれからの時代では「求められる作業をこなせる」以上に「個々の価値の出し方」が求められる時代になっていきますから大学生活の後に待っているキャリア設計にも大きな変化が生まれていることへの意識も持っていてください。今や「海外」という言葉の意味は「海の外」ではなく、パソコンの「スクリーンの向こう側」となり、世界と繋がれない理由は無くなってきているゆえに世界と繋がれない人材の未来の可能性は狭いものになっていく時代になっていきます。
そして第1回の締めでは第3回目で詳しくお話しした「海外大学の入学審査官や人事採用担当者が求める人材像」からひとつだけ一番当たり前であり大切な人物評価の基準を予告編として紹介しました。
●「高校生活における最大の評価基準とは?」
それは、新たな発見でもなんでもない「成績」です、とお伝えしました。
では、なぜ高校の「成績」が欧米の大学進学のみならず、その大学における成績においては就活にまで影響を及ぼすのかを考えてみました。第3回ではその辺りを詳しく説明させていただいています。
それは「自分が望み、機会をもらった場で結果を出すコミットメント(計画性、責任感と行動力)」が成績の持つ意味だからです。与えられた機会をどう活かすか?これは大学生でも社会人でもアスリートでも芸能人でも皆同じです。
若い人材は「場をもらうために」様々なチャレンジに取り組んでいます。場がもらえれば機能する人材は多数いますが多くの場合そのチャンスはなかなか貰えないことが多いのです。高校という場を得たい、大学という場で過ごしたいと思い受験に臨むのですし、キャリアスタートというステージを求めて就職活動をします。例えばメダリストになる為にはまず出場権が必要になります。「場を得る」ですね。
少し乱暴な言い方ですが、試験で出した正解は翌日には導ける答えです。受験やテストで求められているのは「求められる成果を期限までに導ける能力」であり、それは「間に合わせる計画と間に合わせる準備(行動)」の成果です。テストが測っているのは「求められる成果を求められる期日までに出せる準備。計画性と実行力」です。
それに対して、成績は
1)自分が望んで選んだ場において
2)合格をし、求めた場を得た
の2点を前提に「求め、得た場で成果を出す行動が伴ったか?」という資質を判断しています。それは今後どのような場においても「与えられた、または勝ち取った場を活かせる能力」として評価されます。学生にとってまずは成績が一番当たり前の最初の評価基準であることは早めに意識しておいていただきたいと思い第1回目に追加でお伝えさせていただきました。
第2回 Global人材とは?
とかく一人歩きするテーマですが、そのエッセンスについてお伝えしました。
日本において人口減少より深刻な課題とは?
2050年頃には日本の人口は9000万人レベルに減少し国力が落ちていくのではないかという懸念を示したグラフについて話す機会がありますが、その際に伝えていることは数の減少に対する懸念ではありません。確かに数は力の一つですからそれを否定するつもりもありませんが、例えばヨーロッパの人口上位5カ国(ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペイン)の人口は8000万人強から5,000万人弱で、日本の人口が9000万人に落ちてもまだそれらの国の人口よりも多いということです。セミナーでお話しさせていただくのは「人口減少よりも深刻な課題とは世界とつながれない9000万人になっていく事」という視点です。「稼げる、価値を生むものを増やす」(Innovation)と「稼げる、価値を生む場所を広げる」(Globalization)がこれからの世代にとってのキーワードになることは疑う余地のないことだとお伝えしました。
●グローバル人材の定義とは?
「グローバル人材」という言葉をよく耳に(目に)しますが、「グローバル人材」という「人種」がいるわけではありません。あくまでも「あなたという人材のグローバル化」でしかありません。「人材」が本題であり「グローバル」は応用・適応範囲で、「あなたという人材が価値を発揮できる範囲」ということだと捉えています。詳しくは第2回を振り返っていただきたいですが、未来豊かな若い人材の皆さんに意識していって欲しい一言をお伝えししました。
「どこでも、だれとでも、そこそこ、自分らしく振る舞える人材」
これが私が定義するグローバル人材です。
「どこでも」は場所もそうですし、場面もそうですね。初めて訪問する外国、または1対1の交渉の場、千人の前での講演、オリンピックの本番、などですね。
「誰とでも」は目上の人、国籍や人種が違う人、自分とは異なる身体機能の持ち主、宗教が違う人、権力者、弱者、など「わかりやすい違い」を感じられる人々に限らず、突き詰めていけば国籍や所属先などの属性やレッテルではなく「その個人を見る」という視点に落ち着くのだろうと思いますが、そんな視点で人と接する意識が求められます。
「そこそこ」は、最初から思い通りに行くわけもなく、不完全を心配すると行動が起きにくくなるので、最初は「めざす」だけで十分という意味で「そこそこ」からトライしていきましょう、という意味です。
「自分らしく振る舞える」はこの後にも述べますが、「自分らしく」は「自己理解力を高め、自分らしさを知り」、「振る舞える」は「思いを行動に起こす習性を持つ」ということです。
そして最後の「人材」とは他ならぬ「あなた」のことです。
そんな「どこでも、誰とでも、そこそこ、自分らしく振る舞えるあなた」をめざしていく中で求められる意識と行動を第2回から3回目にかけてお伝えしてました。
●グローバル人材への第一ステップは「自己理解力」
「グローバル人材をめざせ」と言われても、具体的にイメージが沸かないという人は多いのではないでしょうか。それはきっと、「グローバル」よりも「人材」のほうが曖昧になっているからです。つまり、海外を舞台に、自分はどんな人(材)になりたいのかを考えてみることがはじめの一歩になります。ですから、グローバル人材をめざすための出発点は「Self Awareness(自己理解)」を高めること。自分に今できることを知り、これからやりたいことを思い描き、行動に起こすようになることです。留学受験をサポートするアゴス・ジャパンのプログラムでも、もちろん試験対策はしますが、それ以上に受講生たちが自分のことを知れるよう導くことに多くの時間を費やしています。そのための「雑談」がとても多いです。
そのような語り合いの際にはまず、「今の段階で一番ワクワクできる自分の将来像を教えてください」と投げかけ、「なぜその将来像が明日にはすぐに実現できないのか」と問います。足りないものはなんなのか?漠然と「海外に留学したい」と考えている人は、この質問には最初はあまり上手く答えられませんが、それは「自分の持ち物に気づく場やそれを整理してみる練習がこれまでになかった」ということですから「無い」のではなく、個々の特性に「気づいていない」「整理できていない」ということなのです。練習してきていないだけの話です。自分の将来像を思い描く際、他人と比べる必要はありません。減点主義の日本では、「自分よりもあの人のような生き方のほうが正しいのでは」と不安になりがちですが、「ザ・アンサー」ではなく「ユア・アンサー」で生きられれば良いのです。ただ、「ユア・アンサー」は「ユア・クエスチョン」から導き出されるので、自分が何にこだわり、何を起こしたり生み出したりしたくて、どんな日々を過ごしたいか」というような「自分に対しての質問」を持つことから始まります。
●グローバル仕様に自分をギアチェンジさせるには?
海外の人と接して、人的交流から化学反応を起こし価値を生んでいくには日本にいるときの自分からいくつかの「ギアチェンジ」をする必要があります。そのために磨くべき資質として「自己理解力」に加えて以下の4点を意識しておいてください。自己理解とあわせてこの5つは若いうちに意識しておいて欲しいと思い紹介しました。これらの資質は、どの国、どの業界にいても求められるものです。
1.知的・人的好奇心:グローバルアジェンダ(国際的課題や話題)や出会う人に対して関心と当事者意識をもてること。
2.効果的な意思伝達:コミュニケーション力ですが、伝えたいメッセージを持ち、伝える意欲を持ち、それを伝わる形で発信できること。「伝わらなければ独り言」、普段自分にも言い聞かせています。
3.多様性への対応力:自分とは価値観の異なる相手との人的化学反応を起こせる柔軟な意識と行動。
4.リーダーシップ:他人を巻き込み思いを動かす能動的行動力の癖づけ。
「自己理解の深掘りの仕方」に上記の4点を加えた「グローバル人材に求められる5本柱」についてはさらに第3回で深掘りさせていただきましたので振り返りも兼ねて再読いただければと思います。
●留学が人生に大きな影響を及ぼす本当の理由とは?
第2回の締めくくりに、留学の価値の本質としてのヒントが世界を代表する経営コンサルタントとしても知られる大前研一さんの語った言葉に見てとれるので紹介させていただきました、
「この3つ同時に起きるのが留学生活だ!」と瞬時に感じたことを思い出します。第3回ではこの3つの変化が同時に起こり、上記の5本柱が「日常の当たり前」として根付いていく留学生活の価値を掘り下げてお伝えしました。
第3回 「グローバル人材に求められる5つの柱」とは?
「どこでも、誰とでも、自分らしく振る舞える人材」に近づくために、国内外の多様性豊かな人々との人的交流の中で起きる(起こす)化学反応から新たな価値を生んでいく人材へと進化していくには日本で生活している今の自分からいくつかの「ギアチェンジ」をしていく必要があるとお伝えし、そのギアチェンジに求められる意識と行動の中でも基礎になる5つのポイントを紹介しましたが、第3回ではその5本柱をさらに深掘りしてみました。
グローバル人材に求められる5つの柱
1)深いレベルでの自己理解
2)好奇心
3)コミュニケーション力
4)多様性への対応力
5)リーダーシップ
<自己理解力>Self-Awareness
第2回でもこの柱に関しては紹介していますので第3回ではさらに「自己理解の3段階」について紹介しました。自己理解を高め、自分に今できることを知り、これからやりたいことを思い描き、そこに近づくために足りていない武器を揃えていく。これらを一言で表しているのが「キャリア・プランニング」という言葉だと捉えてみてください。
自己理解力の3段階
1.自分の持ち物(資質)を知る。
これまでみなさんが行ってきたすべての行動にその「資質」は埋まっています。学生であれば学位、勉学で得た知識、出身校、部活動、ボランティア活動など。社会人であれば経験を積んだ業界、会社名、業務実績、昇進、給与、役職、専門スキル、などなど「持ち物」は様々です。大切なのはその「何をした」(What)以上に、それを「どうやって得た」(How)と「なぜそれをめざした?そしてなぜできた?」(Why)を理解することです。Whatは既に終わっていますので思い出にはなりますが、これから再度未来に向けて再利用できる資質はそこで発揮したHowとWhyに埋まっています。第3回ではいくつかのサンプルを紹介しましたので「具体的にこれまでの行動とそこに埋まっている資質を整理する際の参考」として復習してみてください。
2.自分と社会の関係性を知る
「持ち物」が理解できてきたら、次は「自分の持ち物を社会のどんなテーマに使いたいか?」を考えて見ます。これは決して「決める」ために考えるのではなく「気づく」ために考えてみる意識で考えてみてください。例えば私の場合は、UCLA在学中に出会った伝説のコーチの「世界で最も大切な仕事とは親業である」という一言がキャリアの方向性を決めたと言っても過言ではありません。
今の私のさまざまな活動のベースにはこの言葉があります。ですからおそらく職業として何を選んだとしても「若い世代に世界を舞台に一番納得感の高い未来に気づいて、めざして、近づいてく支援・応援」という社会に対してのテーマは同じだっただろうと捉えています。このように、私の場合は「職種・産業」で決めたわけではなかったということですが、それで決めてもいいですし、「社会との関係の中で何を大切にキャリアとしていくのか」を考えていくと意外と選択肢は広く気づけるのではないかと思います。
3.自分の価値の産み方を知る
自己理解の3段目は(1)で揃えたあなたの持ちものを(2)で気づいたあなたのキャリアテーマに対して「どこで誰とどう使ってその目的を達成するのか」という「実際の行動、価値の出し方」の理解ですね。「持ち物」は武器ではありますがまだ価値を生んでいません。あなたという人材の価値は「あなたの持ち物」を「その時代に社会で価値を生む場所で使った時」に生まれます。その一つの例としてアスリートの武器と価値の出し方を例にその関係性を第3回で紹介しました。それをシンプルな方式にしたのがインパクトの産み方という考え方です。
Xは持ち物
=学力、知識、スキル、体力、人脈、財力、権限など
YはXをアウトプットに転換する方法や場所
=どこで誰と何のために持ち物からの化学反応を起こせるか?
そして、XのY乗が生むIMPACTが成果、評価につながり、信頼や給与に反映されていくという意味です。このインパクトの産み方を理解してゆく、というのが自己理解の3段目です。
第3回では「グローバル人材に求められる5本柱」の他の4つの資質にも触れました。
<好奇心>Curiosity
●知的好奇心 さまざまなグローバルアジェンダ(国際的課題や話題)に対しての興味と当事者意識
●人的好奇心 出会った人に対する興味と関心
とある入学審査官との語り合いのエピソードから「好奇心の意義」を「自分ごとが広がる」と「チャンスを察知するアンテナが敏感になる」とお伝えしました、
<コミュニケーション能力>
正しい意思伝達と意思受信:伝えたいメッセージをもち、伝える意欲を持ち、それを伝えられること。
最適な意思伝達とは最適な発信と最適な受信の組み合わせがなせる技です。
a)伝える能力と理解する能力
伝える能力はここではシンプルに「語学力」としておきましょう。日本語でも英語でもある程度の語学力は必要になります。
b)伝える意欲と理解する意欲
日本語を話せる人皆を「コミュニケーション能力が高い」とは評価しませんから、伝える熱意や意欲を感じなかったり、聴く側にそこに対する興味がなかったりではコミュニケーションは成り立ちませんので「伝える意欲と受け取る意欲」が大切になりますね。
C)伝えたいメッセージを持つ
そしてコミュニケーションスキルの3本柱の3本目は「伝えたい中身(メッセージ)」です。自分が伝えたいメッセージがなければ語学力があってもなにも発信しないでしょうし受信もされないですね。
Communicationとは「発信すること」ではなく「届かせること」です。意図したメッセージが届き、意図した行動が起きること。「届かなければ独り言」。これは大学のバスケットボールチームで常に私が当時言われ続けた言葉です。
<多様性への対応力>
「多様性」と言う言葉を頻繁に聞く時代になりました。私が創設時から深く関わってきたHLABという高校生向けのリベラルアーツ・サマースクールの創設前の企画書にこんな一文がありました。「多様性」というと何か特別なことに聞こえますがシンプルに言えば「違い」です。それは何百年前からも既にあった事です。国、性別、世代、産業、宗教、文化、などなど、「違い」はいまさら起きてきたことではないですね。「多様性の価値」は「違い」にあらず、その違いが「枠を超えて(Beyond bordersとそこでは表現されていました)化学反応を起こすことで生まれる新たな発想や行動」こそが多様性の価値だ、とありました。まとめとして、多様性への対応力として皆さんに意識しておいてほしい3段階に分けて紹介しました。
●自分とは価値観の異なる相手との人的化学反応を起こせる意識と行動=多様性への対応力の3段階
a)耐久力(忍耐)
例えば自分の価値観やペースと異なる行動を起こす人に接した際の我慢。これを持たないと対人関係では友達を失い、国家間では戦争にまでなりますね。ただし、自分が「しょうがないな~。わかってないな~。違うんだよな~。」と思っているときには、相手からも似たような感情でみられているという「自己理解力」も必要ですね。
b)理解
「私はそう思わないけどそれもありだよね」という自分の価値観や意見と異なる思想がそこにあるという理解。相手を理解するということは必ずしも相手に同意し、譲るということではありませんが、異論、議論、反論(Feedback)は思考や理解を深めていくための「贈り物」(gift)である、とアメリカの西海岸の大学の教室に掲げられていました。違いがあって当然という理解への意識ですね。
c)感謝
「私にはない発想だった」「どういう視点でそういう発想が生まれるのだろう」「それ面白い」という多様な場における交流から生まれる新たな気づきへの感謝、ですね。当たり前のレベルが上がる、自分ごとの範囲が広がる、そんな成長への燃料が多様性の中での交流にはあるという意識を持ってもらえたら嬉しく思います。
<リーダーシップ>
5本柱の最後は「他人を巻き込み思いを動かす能動的行動力」です。「違いを生む」「インパクトを産む」行動力ですが、Lead-er-shipという言葉はそのまま訳せば「導く人の精神」ですね。タイトルでもなければポジションについてくる権限でもなく、「興味のあること、自分に関係があると感じたことに対して、周りを巻き込み、行動を起こす意識と行動の癖づけ」とでも言っておきましょう。ですから、リーダーシップでは上に述べた4つの柱の全てに加えて「自分で考える力」の2つ、論理的思考という意味のLogical Thinkingと「一度疑って考えてみて自分で納得する」Critical Thinkingがあります。詳しくは第3回をご覧ください。
第4回 「海外大の入学審査官の視点~出願書類をどのように審査し、評価しているのか~」
入学審査官と長年付き合ってきた中で語り合ってきた2つの視点を紹介し、そのあとで各提出物のポイントと審査官からの視点を説明させていただきました。
ひとつ目の視点は、入学審査官が説明会などでよく使う「入学審査の3つのP」でした。
それは「成功する可能性の高い人を選出する際に見る出願者の
Preparation(準備)
Performance(成果)
Potential(将来の可能性)
の3つのキーワードです。
それぞれがどのような項目で審査されているのかに関しては第4回を振り返ってみてください。この3つのPはこれからもあらゆる場面で応用できるフレームワークですので憶えて、意識して行ってください。
そして、審査官の視点のフレームワークとしてもう一つお伝えしたのが、入学審査官の審査の根本にある「将来、社会で影響力を持って行くと信用される人材」を選出する際に用いる“Indicators of Future Success”の4本柱からなる評価基準のセットです。
1)Past Success(これまでの実績・成功体験)
2)Personal Quality(特性・資質)
3)Personality(人となり=価値観、情熱、深淵の、目的意識など)
4)Credibility(信憑性と信頼性)
入学審査官から「我々はCan doを探しているのではなくWill doを探すのだ」という言葉を耳にします。審査官が願書から読み取りたいのはこれまでの準備と実績に込められた意識と行動を根拠に、「掲げている未来像がおそらく実現する」という「Will doの説得力」です。主に願書のどの部分でそれらが審査されるのかを前回説明しました。
Past Successは主に成績やテスト、課外活動での実績などで測ります。「取り組んだ活動で成果を出すまでやる」と言う資質の信憑性を積み上げる項目ですね。
Personal Quality(特性・資質)やPersonality(人となり=価値観、情熱、深淵の、目的意識など)の2つの柱とVision(未来への希望や計画性)を伝えるのがエッセーの役割です。エッセーのテーマは「具体的なエピソードの描写を用いてCan doを語るだけにとどまらず、Will doを起こす人材であることを、説得力を持って伝える」と言うことです。
そして最後に推薦状についてのキーポイントを振り返っておきましょう。
推薦状の2つのキーワード、それはcredibilityと言う英語の一言が意味する「信憑性」と「信頼性」です。
信憑性:Essayなどで伝えるVision, Strength, Personalityなどを他人も裏付けてくれるか?
エッセーで描かれている内容を他人の視点から裏付ける「中身の信憑性」。
信頼性:出願者のことを深く理解し、信頼し、描く未来像の実現性を信じ、支援・応援をいとわない人間関係という「信頼関係、人望」。
この2点です。
エッセーと推薦状はこのように表裏一体です。繰り返しになりますが、願書のそれぞれの提出物が審査官に伝えるテーマは「私の将来性を信じて成長の場を与えてほしい」という出願者の提案であり、審査官の仕事はそれに対して「魅力的だね、そしてあなたなら出来そうだね」という視点で審査をするということだと理解しておいてください。そして、そこに求められるのはPreparation/Performanceを根拠として描く未来像実現の高さを示唆するPotentialです。
そして、エッセーと推薦状には具体的なエピソードの描写が求められます。
その、「何をしたか」とそれが伝える「これからの可能性」をつなげるための準備(ネタ揃え)のヒントを紹介しましたのでWhat/How/Whyの3つを常に意識して皆さんのこれまでの行動に詰まっている資質に気づいて、整理して行ってください。
そして皆さんの資質を描写する際の組み立て方の一つの形として紹介したのがS・T・A・R・Tを用いた資質の描写です。
Demonstrated Future Potential(根拠ある将来性の資質)を組み立てる5段階の頭文字を並べて
「その資質や人となりが発揮された際の以下の5つを伝えるという方法です。
Situation(その資質を発揮した状況)
Task(課された課題や目標)
Action(とった行動)
Result(結果)
Take away(その過程で得た学びとその後への影響)
繰り返しになりますが、エッセーと推薦状は表裏一体で、伝えたい主なテーマは、出願者のビジョン(目標)、Strength(資質)とPersonality(人となり)を伝える、ということです。
そして、前回の最後にはエッセー課題を例に「質問の裏に込められたエッセーの本質的な語りかけ」の理解を、アメリカの多くの大学で使用されているCommon Applicationに出題されているエッセー課題を題材として紹介しました。出願のためではなく、これらの資質がいずれ問われる将来へのヒントとして参考にしていってください。
これらがこの1年皆さんにお伝えしてきたメッセージの大まかなサマリーです。細かな事例は各回に紹介させていただきましたが、今回整理した中で紹介している視点やフレームワークなどは「理解」にとどまらず「反射神経」として根付いて行っていただければと期待していますので、くどいぐらい復習してもらえればと願っています。
中高生のみなさんに伝えておきたい10の言葉
では、1年の締めくくりとして、私がUCLA時代に毎日のように意識させられた言葉、そして世界トップレベルのアスリートたちや、自分への期待を極めて高いレベルに定めて留学をめざしてきた方々に伝えてきた言葉の中からいくつかを紹介してコラムを締めくくりたいと思います。留学や進路に直接は関係ないように感じると思われるかもしれませんが、これらの言葉は今でも私の毎日に影響を与えているものなので1年のコラムの最後に皆様にも共有させていただこうと思います。思い出深い、今でも毎日のように意識する言葉は何十とありますが、高校生のみなさんに今伝えておきたいものベスト10とでも言えるようなものを選んでみました。
影響を受けて、意識してきた言葉10選
振り返りも含めて、0番から。
0)能力とは?
自分の持ち物を知りその持ち物をどこで誰と何のために使うかを選び行動を起こし、その行動がその時代が求めるなんらかの価値に繋がったときにその「使った持ち物が能力として認識される」ということをお伝えしました。XのY乗でIMPACTの出し方を知る、ですね。
1)“Experience”とは?
この言葉には日本語で二つの意味があります「体験」と「経験」ですね。体験とは今日までの皆さんの人生の中で起きたイベント全てです。テーマパークに行った、友達と旅行に行った、音楽活動をしてきた、スポーツ大会に出た、学業で成果を出したなどなど、終わったことはすべてこの「体験」の中に入ります。大切なのはこの「体験」の中から「覚えて、振り返って、次に活かすもの、活かしたもの」。これが「経験値」となります。イケてない大人は「体験量」を自慢します。たくさんやってきた、これだけやってきたと。しかし大切なのはそれをこれから、何に対してどう活かせるかですから、体験は経験値に落として行かないとこれから価値を生みません。Whatに込められたHowとWhyが未来に再利用できる知恵になります。覚えて、振り返って次に生かすこれが経験の価値です。若い世代にとってはあくまでこれまでの出来事からこれからの行動を起こすために、です。
2)「不安」はどこからくる?
進路談義を重ねていくとさまざまな不安に出会います。では不安というのはどこからくるのでしょう?
不安は大きく分けて二つの種類があります。年齢を重ねた世代(私もですが)になると不安は「失う不安」になります。健康、財産、社会的地位、周りへの影響力、体力、などなどです。それに対して、若い世代の不安というのは自分に対しての期待からくるものです。届かない不安、求めているものが手に入らないという不安ですね。高校に入りたい。大学に入りたい。就職をしたい。めざしたいキャリアを実現したい。その他、スポーツや課外活動で結果を出したい。オリンピックに出たい。などなどです。ですから若い世代の不安というのは自分に対しての期待値からきます。決して悪いことではないですね。自分への期待が高ければ高いほどそこにたどり着く可能性が低いということになりますから不安は大きくなります。しかし求めて近づくということを成長と捉えてください。毎回思った通りの結果が出るわけがありませんが、高い目標を掲げそこに近づいていくこと自体が成長の源になります。そして志の高い方々は一つの不安(期待)を解消すると、また自ずから次の不安(期待)を持つようになります。それは向上心ですから決してネガティブな感情ではなく成長を続けたい人材にとってはこれから常に付き合っていく言葉になります。
3)失敗ではなく「未達」
The journey is better than the inn
旅において最も価値があるのは目的地以上に旅路そのものである。
この言葉に出会ったのも大学時代です。2)からの続きになりますが、私は若い世代には「失敗」という言葉を使わせないようにしています。「未達」ですね。「めざした、近づいた、でも届かなかった」。
そこにヒントがあります。近づいた理由=できたことも理解しておいてください。そして足りなかった際の原因、これが成長へのヒントになります。関連した、UCLA時代に出会った言葉があります。
「完全」(Perfection)とは「届かない事も納得した上でめざす目標」であり、「あきらめてはいけない目標」である。近づくことが成長。できた「自信」と足りなかった「謙虚さ」のバランスが大切ですね。
今できないことが最大の問題ではない。その課題が残り続けることが問題である、ということですね。
4)「努力は報われる」ではなく「正しい努力が報われやすい」
最適な努力が成果につながりやすい。その為には
・最適な方法を知る(知識)
・最適なプランを作る(計画)
・そして行動力でやり切る。その行動力の源は「意志」である。
できないのではなく間に合わないことがほとんど。そこに必要なのは、
間に合わせたい目標(意思):これが弱いと諦めやすい。
間に合わせる方法(計画):最適な方法を計画に落とす。
間に合わせる行動(行動):やりきる。最初の目標が弱いとここにつながらない。
5)The time to make friends is before you need them「友達は必要になる前に持て」。
これはシンプルに聞こえますがとても大切なことです。社会に出るとメリットで付き合う人たちに多く出逢います。決して悪いことではないのですが、そんな時に「損得関係なく、あなたのために集まってくれ、手を貸してくれ、応援してくれる人を持てる」というのが学生時代の大きな財産の一つです。損得で付き合うのは「思惑」ですから友情とはまた違った人間関係ですね。
6)Failing to Prepare is Preparing for failure!「準備不足は失敗の準備である!」
これはキャリア、勉強、スポーツ全てにおいて言えることですが、準備の質が悪ければ成功しにくい。
当たり前ですが、準備不足でも結果だけは心配する。それがメンタルが弱いと言われる大きな原因です。メンタルが弱いのではなく準備が弱い、ということがほとんどではないかと思います。「準備」に集中し、結果はコントロールできないということですね。結果を出したいなら準備の質を上げる、ですね。
関連して、
7)Do not Permit What You cannot do to interfere with what you can do.
「できない」ことに支配され「できること」を見失わない。
「今日できないこと」は問題ではない。それに気づいたことが今日の財産。そして、気づいた問題を残し続けるのは問題になるかもしれませんね。大切なのは、今できることとできないことを客観的に理解する。そのなかから「何を選び」対応(練習)するのかを選択する。長所をさらにのばす?欠点を補う?どの長所、どの欠点?などなどです。自分で運命を握れることと握れないことを理解する。
Controllable vs. Uncontrollable
同じ文脈でもう一つ。Worry about Today’s Efforts, not Tomorrow’s Results
明日の結果の心配ではなく今日の行動に集中する。
オリンピックでメダルを取ったアスリートと話していてこんな言葉を聞きました。「横山さん、勝つ運命は握れないですが、勝てると信じた準備の運命は握れるんです」。今、今日、今年できることとできないことを整理する。大切ですね。
8)結果は変えられないが結果の意味は変えられる。
期待どおりの成果が出た時、そうでないとき。終わったことの結果は変えられないですね。大切なのはその結果が出た経緯や理由を振り返りその結果の意味をこれから変えていくということはこれから常にできるということです。あの日の負けが今日の勝ちに繋がった。あの時の失敗(未達)が今回の成功に繋がった。あの時一歩踏み出せなかった後悔が今の積極性に繋がった、などなどです。ですから、結果はしばし悔しんだり喜んだりした後は「その意味を進化させる」ということを意識してほしいと思います。
9)Set Your Norm Abnormally High
直訳すると「標準値を異常なレベルにもつ」とでもいう意味ですが、言い換えると
「当たり前のレベルを上げる」
「当たり前のレベルを極めて高く持つ」ですね。
当たり前の積み重ねが「異常値」をもたらす。「今日の努力を明日の当り前に」ということですね。
当たり前というのは人それぞれによって違います。目標値の高い人に囲まれる。当たり前のレベルが高い人たちの中で自分の当たり前の水準を上げていく。だからチャレンジ度の高い場所を求めて努力をする。ということではないでしょうか?今日できないことが来年は普通にできている。これがレベルアップですよね?今の当たり前を進化させる。違った当たり前を持っている人たちとの出会いと交流を通じてみなさんの「当たり前を高めたり広めたり深めていく」を意識して行ってもらいたいと思います。
10)「成長を止める最大の要素とは?」
これも大学時代であったやや厳しい言葉ですがそれは「人にはばれない妥協」です。人にばれないから困らない、恥ずかしくない、しかられない。なので直そうとしない→直らない→それが続いていく、ということですね。ですから信頼できる友人を持ちばれる場所でお互いに伸びしろを伝え合い、やり過ごさない、やり過ごせない場に身を置くというのが成長にとってはとても大切なのではないかと思います。
そして、これを学生に対して話すとよく聞かれます。「横山さんはばれない妥協はしないんですか?」と。「しょっちゅうしてるよ」(笑)と答えます。でも意識はしてるから2回に1回ぐらいは妥協しなくなるかな?」と。その「2回に1回、5回に1回妥協しない」のと「意識しないで毎回妥協する人」では長い時間を経て結構な違いを生んじゃうよね、というような伝え方をしています。ばれてもいい関係を持てる、応援し合える仲間を持つ。これが上でもお伝えした「友達は必要になる前に持つ」ということにもつながるのではないかと思います。
まだまだ伝えたいことは残りますが、1年、5回に渡り、かなり多くのことをお伝えしてきました。
「理解」で止まらずに皆さんの反射神経、DNAに少しでも根付いてもらえることがあったなら嬉しく思います。春以降は、別の形でまた皆さんと接点があることを楽しみにしています。皆さんの未来が実り多き日々で積み上がっていくことを期待し、応援しています。