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2024.5.10更新

学力の高い人は何をやっても行動が非常に速く、フォーカスする対象を瞬時に切り変えているのです。

カフェでの学習は「ゆったりペース」かつ「ながら」学習の掛け算ですから「カフェ勉=落ち勉」です。

学習に「かける」時間

「1日に何時間くらい学習すれば良いでしょうか…」。これは受験生からよく寄せられる質問です。学習時間は多ければ多いほど「カッコいい」気がしますが、どんな人でも1日のうち学習に捻出できる時間には限界があります。少なくとも、ご自身の睡眠時間と生活に必要な時間だけは確保しなければなりませんから、それを除く「時間資源」のうち何時間を学習に使うかがポイントですね。
しかし、果たして学習時間の大小だけで学習の量を測ることができるものなのでしょうか。例えば「数学問題を4問解く」というと学習量は明確です。ところが、「学習に2時間かける」という時、その中身は急にあやふやなものになってしまいます。人によって「2時間で5問解く」人がいる一方、同じレベルの問題なのに「2時間で2問しか解けない」人もいるでしょう。集中力がないために「5時間でできること」をゆっくりと「8時間かけてやる」人がいます。この場合、当の本人は「8時間学習した」と言いはるでしょうが、その値打ちがないことは明らかでしょう。

学習時間は机に向かっている時間と同じとは限りません。正確には、机に向かって「頭をフルに使って集中している時間」のことです。机に8時間向かっていても「頭をフルに使って集中している時間」が3時間しかなければ、「3時間の学習」と同じことです。それなら、初めから「集中して3時間」だけ机に向かえばよかったことになってしまいます。
ですから、「学習時間」という時には、「最大集中して机に向かっている」ことを前提で考えることにしましょう…では、果たしてその時間どれくらい可能なのか…ここが問題なのです。

「1日1000分学習」に臨んだ受験生のこと

「1日15時間学習」…1学期の学習の遅れを夏休みに挽回しようとする人が、よくこの種の長時間の学習計画を立ててくるように思います。しかし、本当にそれを実行しようとすればかなり大変になることを「ある実例」で検証してみましょう。
真剣に1日に15時間以上集中して机に向かった受験生が過去にいましたので、ご紹介します。本人の言葉を借りれば、正確には「1日1000分学習」です。さて、みなさんは「1日1000分学習」と聞くと、どのような状況か想像できるでしょうか。実際にわかりやすい時間に直してみるとその大変さが伝わりやすいかもしれませんね。
1時間が60分ですから、60分×16時間=960分。これでは40分足りませんから「+40分」で合計1000分です。つまり、1000分は16時間40分に相当します。1日に16時間あまりの学習をすることになるのですが、これを「最大集中して机に向かう」状況で継続することはできるのでしょうか。

彼女(女性でした)に聞くと、紛れもなく机に向かって集中して学習している時間のみを計算して1000分にすることにしていたので、合間の休憩時間は全く計算せずに純粋に1000分の学習を目指したのだそうです。ということは、学習の合間の休憩時間や食事、風呂などの生活時間を足すと寝る時間がなくなってしまいそうですが、彼女はそうならないようにかなり人間離れしたことをやっています。
朝昼晩の食事時間を各5分…合計15分で済ませ、学習の合間の休憩時間は毎回2分程度までとして1日のうちの合間の休憩を合計で10分までにするように、自分を追い込んでみたのだそうです。さらに、お風呂なども30分、トイレは1回を1分程度で毎回ダッシュして帰ってくる…これらを合計してなんとか18時間00分(1080分)までに収めるような計算です。1日は24時間ですから残りは6時間…これが睡眠時間です。

彼女はイベント的に何度かこの「1000分学習」をやっていたようで、「もう、めちゃくちゃたいへんでしたよ」と、懐かしそうに当時のことを笑って話してくれました。これを笑いながら話してくれるような人だからこそ、こんな過酷な学習が実行できたのでしょう。因みに彼女はその年、大阪大学の医学部に合格しました。そんな人をもってしても、16時間に及ぶ学習は「必死」に見えますから、何の経験にも裏打ちされていない普通の人が1日15時間学習などというのは、どう考えても実効性のない机上の空論というべきでしょうね。

学力の高い人はフォーカスを切り替えている

長年医進クラスの担任をやっていると、学力の高い生徒とそうでない生徒には、生活全般のスピードに違いがあることが見えてきます。
特に違いがあるのは「集中するフォーカス対象を切り替えるスピード」です。学力の高い生徒たちに何かの説明をすると、手元から資料を手早く取り出し、その「資料チェック」に集中力をフォーカスし、説明が始まるとすぐに「説明を聞くこと」に集中力のフォーカスを切り替える様子が見てとれます。さらに、メモしなくてはならないことは説明の隙間にメモに集中力をフォーカスしています。
つまり、彼らは「見る」「聞く」「行動する」を同時にやっているように見えて、実はフォーカスする対象を瞬時に切り変えているのです。そういう人は学習中でも常に英文を全速で読み、数学も最速で計算するなど、いかに無駄を排除して最速で結果を出すかを生活全般の習い性にしているようです。
また、学力の高い人は何をやってもとにかく行動そのものが非常に速く、名前を書くだけ…のような単純なこと一つとってもペンの速度が非常に速いのが特徴です。アンケートを書くだけ…のようなものでも、そういった人の多いクラスでは短時間で終わってしまうものです。

一方、なかなか学力が上がらない生徒の場合、とにかく「ながら」の行動が多いように思います。瞬時にフォーカスを切り替えて交互に集中…という訓練を積んでいないのですから、資料をチェックし「ながら」説明を同時に聞くことになり、集中力が分散しがちです。こういう生徒さんは、説明が始まってしばらくすると資料のどこを解説しているのか見失ってしまい、まごまご探していることがよくあります。概ね、生活全般でも同じで、自分が何かしている時に大切なアナウンスがあっても、フォーカスを切り替える癖がついていないために聞き逃がすことが多く、アナウンスした内容をずいぶん後になって「知らなかった」といわれることがよくありました。
また、先ほど触れたアンケートを書くだけ…のような単純なことでも、時間が経っても書き終わらないことが多く、生活全般のスピード感にも差があるように見受けます。

メリハリのある生活への切り替えのために

では、フォーカスを切り替えて学習する方法を考えてみましょう。これには日常の「訓練」が大切です。まずは「ゆっくり読む癖」「ゆっくり計算する癖」…つまり、試験の時に比べて日常で「ゆっくり学習する癖」がある人は、これを日常から「試験並みのスピード」にしましょう。答案に名前や受験番号を書く時でさえ、最大スピードのパフォーマンスで臨まなくてはなりません。そのためには集中力を高めなければなりませんので、日常行動でも「時間を大切にする心構え」を養うようにしたいものです。

今、私がいる校舎は比較的学力が高いといわれる人たちがいる校舎です。長らくここでの指導が中心になっているのですが、先日久しぶりに別の校舎に行く用事がありました。ちょうど休み時間になり、生徒たちが自習室などに移動する時間になりました。ここで驚いたのは彼らの移動…歩く速度の遅さです。用事のある私がそそくさと歩いていると、前の生徒と距離が縮まって何度もぶつかりそうになりました。彼らに悪気はないのですが、友人と話しながらとてもゆったり歩いている生徒が大半です。
ここで体感したことによって、自分のいる校舎の生徒は普通の人より移動することさえ速いということがわかりました。これはこれまで考えもしなかったことです。おそらく、速く自習室に行って席を確保し、隙間の時間を有効に活用したい…そんな思いが彼らの歩く速度さえ速くしているのではないかと思います。朝、自習室の開室前から並んで待っている彼らの気合いは、当然そういった日常行動にも直結するのでしょうね。どうやら学力の高さは、日常行動の速さとも関係しているといえそうです。

あとは学習中の集中力をいかに維持するかです。私はこれまで多くの講演で「ながら」を排除する必要がある…とお伝えしています。特に「イヤホンをして音楽を聴きながら」学習する癖の人は注意が必要です。私は自分のクラスの生徒にはこれを禁止しています。また、当然ですが「飲みながら」「食べながら」など、日常の「ゆったり」を想起させるものを傍において学習することも不適切です。学習環境はカフェではないのですから。
さて、集中力を高めれば、普通の人が4時間かかることを3時間でできるようになり、「時間の節約」が日常的になってきます。そうなれば学習の総量も増加するというものです。入試で答案を時間内に作成する時でも、日常の学習スタンスが最終的には答案完成度の差になって出せるはずです。

カフェ勉について

そんなに日常を拘束しなくても…いえいえ、学力の高い人は、すでにそれが日常生活になっているのですから、そのレベルに到達していないと自覚している方は、無意識にそれを発揮できるようになるまでやるしかないのです。
そんな生活とは真逆に、多浪生の中には予備校の授業をサボってカフェに行き、自分の「やりたいペース」で「ゆったりと」取り組もうとする人がいます。さて、彼らがどうなっていくかお話しておきましょう。異論のある方や多少の例外もあるでしょうが、私個人がこの25年で2,000人以上ご指導した経験からは、「一人も医学部に合格できていない」と言い切っておきます。強調しておきますね…「一人も」です。カフェでの学習は「ゆったりペース」かつ「ながら」学習の掛け算ですから「カフェ勉=落ち勉」です。学習していることに本人は自己陶酔しているようですが、彼らの学力の伸びはせいぜい「ナメクジの歩幅」程度です。もちろんご注意していたのですが、それを振り切った「残念な人」の末路…といったところです。

今年の1月上旬、カフェにいましたら、向かい側の席の男の子が「共通テスト」の赤本を出して勉強しはじめたので驚いてしまいました。もう少しで「家か自習室で勉強しなさい」といいそうになりましたが、黙っていることにしました。彼は今どうしているのだろう、ちゃんと志望校に合格できたんだろうか…とふと思います。
「カフェで勉強してくる」と子供がいうと、きっと保護者は小遣いをくれるのでしょうね。でも、そんな情けが本人の受験に影響するなどと保護者は思ってもいないでしょう。

さて、もしこの記事をカフェで読みながら学習している人がいたら、そんな皆さんに私からのメッセージです。

「家か自習室で勉強しなさい」