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2024.1.12公開

―前年の面接試験分析で今年のトレンドを予想する―

毎年同様の対策でよい…というわけにはいかない医学科面接試験。必要な「準備」と「心構え」とは。

前年の面接試験のトレンド

昨年のちょうどこの時期、同じことをテーマに記事を書きました。医学科の面接試験には質問のトレンドがあり、毎年同様の対策でよい…というわけにはいかないからです。大学どうしで連絡をとっているはずはないのですが、よく似た質問がされるのは、それだけ大学が社会の流れに敏感なっていることの証でしょう。
前年と同じようなことを尋ねているようでも、質問の仕方が違っていたり、尋ねる方向性が違っていたりすれば答え方も変わります。毎年同じような面接試験だろうからと安易に準備していては、本番で通用しない可能性もあるでしょう。自分たち予備校の人間の立場に翻って考えれば、毎年同じような質問練習を生徒たちに繰り返しているようでは、年ごとの面接質問の研究や社会のトレンドへの注意力が不足しているとさえいえるのです。
一例を挙げれば、一昨年はトレンドだった「SDGs系の質問」は昨年全くされている気配がないのに、ここ2年ほどあまり尋ねられていなかった「本」に関する質問が昨年は再び増加しているなど、スタンダードなタイプの質問に回帰する流れがあります。ただし、質問で求めている「回答」への深さが違ってきている様子がありますので、ここで改めて、面接試験の質問内容全体に触れながら新しいトレンドをいくつか見ていきましょう。

志望理由の「きっかけ」止まりの回答を脱出する

医学科の試験では出願時に志望理由書が必要な大学がいくつもあります。毎年何人もの生徒の志望理由書を添削していますと、大多数の受験生が「志望理由」の「きっかけ」に重きを置いて述べていることには閉口します。それは面接試験でも同様でしょう。例えば、祖父母の死に際して感じたことから医学科を志望した云々…程度のお話です。受験生は18歳以上ですから、それなりの年齢になれば祖父母が亡くなることは普通のことです。ですから、そういった誰にでもある当たり前の個人の経験に根ざすような「きっかけ」を面接で長々と述べられても、さほど価値を持ちません。多くの面接官は「また、きた…」と興味すら示してくれないに違いありません。
祖父の死がきっかけで…、祖母の死がきっかけで…、自分のお世話になった先生がとても良くしてくれて…。たいていの人はこんな感じのワンパターンの「きっかけ」なので、「A定食」か「B定食」か程度の差としか面接官には聞こえないでしょう。ただ、「定食」が悪いといっているのではありません。「きっかけ」は「過去」の経験ですから、医学科志望のモチベーションが「過去」の自分で止まっていることが問題なのです。
ここで「現在」に目を移して「現在の自分が関心を持っている医療状況」、それを通じて「未来」に目を移し、「未来の自分が関わりたいこと」つまりビジョンを述べれば、志望理由は「過去」「現在」「未来」の三つの時制を貫いて説明することが可能です。多くの受験生は「過去」のみに囚われ、「現在」と「未来」を見ようとしません。ところが、面接する側の心理に立てば、受験生にとっていたって簡単にまとめられる「過去」への関心は低く、問題認識に時間のかかる「現在」と選択に手間のかかる「未来」に興味を持つものでしょう。それが述べられてこそ、面接官は傾聴してくれるに違いないのです。

自分が周りから受けてきた影響とは

本人の人となりに影響を与えたことが何かを尋ねるため、ご本人が所属した場所のことを尋ねることは、割とオーソドックスな質問です。具体的には「高校」のことを述べさせるもの、人によっては「留学経験」、「浪人経験」など何らかその人格形成に影響を与えたに違いないことをよく質問しています。
受身的な経験よりも、自分が積極的に関わって人格形成に影響したものを述べるのが理想ですから、面接試験での質問の多くは「部活動」に関するものに集中しています。その他では「SSH」に関する活動なども多いといえます。「部活動」も「SSH」も関わりがない人の多くは、「文化祭での活動」や「体育祭での活動」などを挙げて話されることが大半です。ただし、「部活動」や「SSH」が外部からの評価が自身の評価としてのエビデンスを与えてくれることに比べて、後者は「頑張った」とか「みんなが素晴らしいといってくれた」などの自己本意の評価に終始する面が強いことが欠点です。それならむしろ、友人関係で得たものや自分がこだわってきたこと、学校外の活動などを「同時代」の活動として述べる方がよいでしょう。
もちろん、いずれの場合でもその活動を通じて自分の何を成長させてきたのかを述べることが、「自分に与えられた影響」を述べることにつながります。

自己PRの準備をしておこう

長所と短所を尋ねる質問は古くから多いものの一つです。単純に「長所は何ですか」などと尋ねることもありますが、最近はこういった直球的な質問方法は少なくなりました。むしろ「あなたの長所は医療ではどのような場面で生かされると思いますか」という尋ね方が多いようです。
ついついやってしまいがちなのが「私は明るいので、場を和ませることができます」などの「言葉を言葉で説明する」ような一本調子で抽象的な答え方です。同じ答え方でも、「私は場の雰囲気作りにはこだわりを持っているので、前向きに同僚には働きかけたい性格です。そのことを通じてお互いがコミュニケーションをとりやすい職場環境を実現できると思います」などと場面が想像できる伝え方でご説明してみてはどうでしょうか。それから、決して「医療関係者として非常に適しています」などと評価までつけて述べてはなりません。質問への回答では適正評価を自分で決めないように注意しましょう。あくまで「どのように生かされるか」のみを尋ねられたのであって、適正があるかどうかの評価は「面接官が下すもの」だからです。
さて、長所の述べ方で最近多くなっているのは「自己PRしてください」というものです。「1分で…」、「5分で…」などと時間制限をセットにしていることも多々あります。この場合は一方的に自分の「長所」を伝えることになりますが、面接練習を何度もした経験では、それをその場で考えて答えることはかなり難しいことがわかっています。準備していなければ当然できないでしょうが、仮に準備していてもなかなか上手くいかないものです。
毎年、希望者に「志望理由書」を書いてもらってから面接練習をしており、その中に「自分の長所を3つ程度とそれにまつわる具体的なエピソードを交えて伝えられるよう書きなさい」という指示をしています。その上で面接練習を行い、「自己PRをしてください」と質問してみるのですが、ほとんどの人は自分で書いたはずの「長所3つとエピソード」がすっかり飛んでしまっており、ちゃんと答えることができません。
ということは、人間は「質問の角度」がほんの少し違うだけで、準備しているものを活かすことができなくなる…ということでしょう。準備したものは、よほど意識して伝えようという構えで自分の中に落としておかなければ、すぐに引き出すことができないということですね。

社会的なトレンドを検討しておく

冒頭でご説明したように「社会のトレンド」に注目しておくことも必要です。具体的にみておきましょう。

・オンライン医療の長所と短所は(秋田大/後期)
・AIの発達で医師はどうなると思うか(香川大/前期)
・人間の職業がAIに置き換えられないために必要な教育は何か(日本大)
・LGBTQについて社会が受け入れる際の問題点、病院ではどんな配慮が必要か(国際医療福祉大)

一昨年まで新型コロナ関連や感染症関連の質問が目立っていましたが、昨年はオンラインやAI関連の質問内容が非常に多くなりました。いずれの質問も定形の説明を求めているのではなく、質問の裏に「あなたはどう思うか」ということが見え隠れしています。あくまで自分自身の理解とそれにまつわる考えを表明してほしいということです。社会で話題になっていることへの意識を持っているかどうか、またそこから自身の関わる環境への問題意識にどう結びつけているかという質問だと言えるでしょう。もうすぐ受験本番がスタートします。受験勉強の忙しさにかまけて新聞や本を読むことから遠ざからず、常にトレンドな話題に問題点を持っておきましょう。

覚えるな、組み立てろ

自分のことを相手に知ってもらうには「言葉」に置き換えることが必要です。ところが、そのための準備を「回答を暗記する」という方法でしている人がおられます。「志望理由」がその代表で、AIが再生するように「文語調」で音声再生してくれる様子は拍子抜けでしかありません。この方法で色々と準備をしたところで、「志望理由」以外では質問の方向性が微妙に変わるので、何の役にも立ちません。おそらく「その場で考える緊張」から逃れたいために、「準備段階の緊張」に置き換えようということなのでしょう。
しかし、「その場で考える緊張」からは逃れられない…と諦めましょう。ある程度の自分の考を「箇条書き」のように自分の中に持っておく程度に準備段階では止め、面接現場ではそれを「組み立てる」ことで適切な言葉に置き換える緊張を覚悟することです。面接試験とは「その場で考える緊張」を課すものだからです。
最近の面接試験のトレンドは、とにかく本人の話す量を増やす方向になっています。一問一答のような面接は、すでに時代にそぐわないものです。「覚える」方法は過去のこと、自分の言葉で自分の考えを「組み立てる」ことを覚悟することが、面接試験への初めの一歩なのです。

いよいよ本試験がスタートします。腹を括って一歩前進しましょう。