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「たった5点」というその人は、他人よりも「1ランク成績が下」という認識がない

夏のしくじりの元の「過去問」「模試」「回数」「時間」・・・思い込みを外して誘惑に負けない夏にしよう。

夏の学習計画の「アレ」を防ぐ

「夏は入試の天王山」。受験学年の方にとって、いよいよ決戦の夏がはじまりました。夏の決戦を制するためには「学習計画」を立てて、これを実効性あるものにしていく必要があるでしょう。ところが、失敗しない「学習計画」はどう立てればよいか、という迷いが多くの受験生にはあるようです。そこで、今回は典型的な「学習計画」のしくじり事例をピックアップしながら、受験生の皆さんが「夏の学習」を、できるだけ「失敗」から遠ざける方法を考えることにいたします。
この時期に「アレ」で失敗しないように…と言われると、みなさんはどのような「アレ」を想像されるでしょうか? 実をいいますと、しくじりの元である「アレ」は一つではありません。そこで、ある意味「別解」だらけと言える「アレ」に、皆さんがどのような回答を与えられるかを想像しながら、夏の「しくじりのもと」を順次みていきましょう。

「過去問」の亡霊

最も多くの方が想像された「アレ」は、「過去問への取り組み」の方法なのではないでしょうか。今年の4月1日に私がアップした「医学部志望の高2生が高3生になったら意識すべきこと」に詳細を述べていますが、少しでもアドバンテージを保ちたい受験生にとって、過去問への取り組みはかなりの誘惑です。大学の過去問は本屋の店頭に並びますから、どうしても受験生の目に入ります。
正確にいうと、過去問に取り組むことそのものが悪というわけではありません。問題なのは「大学の過去問にばかり取り組み、自分の何ができていないかを振り返らず、ひたすらに過去問に取り組むことが自分の学力アップにつながっていると勘違いする」ことです。
大切なことは、「過去問への取り組み」を、「自分の本来の学習」に結びつけることです。ところが、残念ながら、無計画に夏から大量に過去問演習をする受験生は、単純に丸ごとの過去問に繰り返し取り組んでしまうだけで、結果的に「時間を喪失」してしまう人が多いのです。
大学の過去問は当然、ある程度のレベルですから、学力をつけたり、体系的な知識をつけたりするためには、学力構築を目的にした教材との学習バランスに注意しなくてはいけない…というのが予備校的な考え方です。しかし、丸ごとの過去問に取り組むことは難度が高いため、受験生に勘違いを生むこともあります。「自分は人よりも大学の本格的な問題に取り組んだのだから、他の受験生よりも学力が上になったはずだ」という曲がった「思い込み」に結びついてしまうことは少なくないのです。
アドバイスを無視して過去問演習ばかり続けた生徒の中には、「あんなに夏に頑張ったのに成績が出ないんです。おかしいなぁ。」という人がいるのは驚きです。私は「そりゃ、そうでしょうよ。」といいたいのですが、突き放す訳にはいきませんから、「次に向けて頑張りましょう」といってあげるくらいしか、できることはありません。

「模試で成果を出したい」という誘惑

次に思いつく「アレ」は、「模試で成果を出したい」ことに執着する偏向した学習計画です。模試は目標を設定して受けるものですから、「模試で成果を出したい」ことそのものは、正当な行動指標です。では、何が問題なのでしょうか。そこで、本当の問題点を正確に書き出すと、「直近の模試ですぐに成果を出したいがために、無理な学習計画を作り上げて実行しようとすること、あるいは学習成果が身についたことにしてしまうこと」です。
河合塾では「共通テスト模試」が8月の上旬にありますが、受験生はどうしても自分のいい成績状況を見て安心したい心理が働きますから、できるだけ学習計画をひととおりそれまでに終わらそうという人が出てきます。「全部の基礎学習は模試までにやってしまって、模試で成果をみよう」ということなのでしょう。しかし、どんなに学習計画を早く終わらせても、学習成果はそう簡単には出ないものです。考えれば当たり前のことですが、模試の問題は単に「知識的に知っているからできる」とはなりません。実際に学習内容定着には、ある程度のアウトプットの回数が必要で、そう簡単に成果は出にくいことを忘れてはならないでしょう。
困るのは、指導する側にも変な勘違い指導をする人がいることです。生徒はともかく、指導する側がそんな拙速な計画をけしかけるのは困りものですね。学習は夏いっぱいのスケジュールを十分に活かして、一つ一つを着実にアウトプットできるように定着させることが必要でしょう。いろんな指導の考え方はあるでしょうが、私は、「学習は全体のスケジュール優先、模試成績は途中経過だから出せるものがあれば出ればいい…」くらいの、思い切った割り切り程度で十分だと思っています。
夏最中の模試で成果を期待しすぎ、過度に偏向した学習を進めたために、結果として学習定着が中途半端になってしまっては元も子もありません。夏模試の成果は、1学期の学習成果であって、今やったことの成果がダイレクトに出ているのではないことが多いのです。夏の成果は夏以降、1カ月くらい経ったくらいのところで出れば良いだろう…くらいに考えて、落ち着いて全体のスケジュールを進めたいところです。どうしても学習成果が模試で見たいのなら、一部の科目や一部の範囲に特化して成果を試してみる…程度がせいぜい可能な範囲のことと心得ておきましょう。

「回数さえこなせば学力は向上させられる」という思い込み

テキスト「3回まわし」とか、「4回まわし」という言葉があります。これは、1冊の教材(テキスト)を何回復習するかということを指しています。復習を何回も行えば学習効果が高いことは間違いありません。しかし、どのくらいの期間でそれを回すのか、そのサイクルが大切なのですが、この「○回まわし」という言葉を使う人に限って、「どれくらいの期間で?」という時間単位が適当で、自分なりに曖昧な前提のままで計画を立てていることが少なくありません。
河合塾では高卒コースのテキストは1学期あたり12週間、現役生なら11週間で終了するように設計されています。各授業で扱う問題数のことを考えると、かなりの分量が入っているので、復習するにはそれなりの期間をかけて取り組む姿勢が必要です。
「夏は全科目のテキスト3回まわしです」…科目も範囲も限定せずにそう宣言されても、わずか1カ月で全科目を高いレベルで3回まわしなど、私にはできるとは思えません。ところが、こういう方の持ってくる計画にはきっちりとそのような内容が書かれており、「できるの?」と問うと、自信満々で「できます」というのです。
夏の終わりに「できているの?」と尋ねると、これまた自信満々で「できています」と答えます。ホッと一息…とはなりません。なぜなら、彼らの大半は「回数ありき」で学習進捗させることが重要なので、「高いレベルで理解できていて、かつ、そのレベルでアウトプットもできるようになった」ということを気にしている訳ではないからです。この種の方は「本当にできている」かどうかはお構いなしで、「できている」とは「こなしている」という意味です。彼らは「こなしている」ことを「できている」ことにしないと計画が進まないのですから、無理矢理にでもできていると「自己催眠」をかけるしか方法はありません。
河合塾の教材でいうと、夏に1回のみの復習ではまだ時間に余裕があります。ただし、全科目2回やろうとするとおそらく時間は足りません。部分的に2回やっている問題があったり、2回やった科目があったり、ものによっては3回やったところもある…というのが本当の「複数回まわし」なのです。短絡的な方は、「複数回まわし」を全部に当てはめれば、きっとより効果があるだろう…的に単純に考えるのでしょうね。
学習経験がないからこそ、学習の奥行きを無視して単純に考えられるのでしょうし、学力保持の経験が浅いからこそ、できたことにしてしまえる自己暗示が効くようです。ただ、例外的に世の中には才能のある人がいて、実際に深いところまで理解しつつ全ての「テキスト3回まわし」を達成する秀才が1000人にひとりくらいいます。私は目の前の人はそうではないと見越した上で、「テキスト3回まわし」を全教科行うことは無理だと伝えることにしています。

「時間が多ければ学習量は多い」的な勝手な思い込み

これも過去記事の中で私が少し触れています。不思議なもので、1学期に学習が自分の思い通りにできなかった人に限って、夏に13時間とか14時間と書いた学習計画表を提出してくるのですが、実際にはそれだけの学習時間を1日の生活の中で確保することは難しいのです。
ただ、学習時間を確保することが難しいからできないというだけではなく、本当に私がやめさせたい一番の理由は、自分の答案作成ペースや思考のペースが慢性的なのんびりモードに固定されてしまい、慢性的な集中力不足人間が出来上がってしまうからです。こうなると、スピード不足がアウトプットのレベルを制限するようになるでしょう。特に現役生に多いといえますが、自分の考えるペースをスピードアップできないと、与えられた時間内に解答の質を上げることが難しくなってしまいます。例えば「大学入試センター試験」や現在の「大学入学共通テスト」の問題などは、医学部を目指す受験生なら、時間さえあれば満点にできるのは当たり前のことです。しかし、これを60分や80分程度でやれといわれるから満点にできないのです。
スピードは実力のうちです。家でのんびり学習していて、取り組む問題がそれなりにできることは当たり前で、試験の限られた時間でそれを解くと、大概の人はできなくなってしまうはずです。私の心配は、今目の前にいる受験生が、本来は10時間あればできるはずの学習内容を13時間かけてやるような体質の人になってしまわないかということです。つまり、時間をかければ問題が解けるために、時間内にアウトプットできない自分の姿には目をつぶってしまい、「本当の自分はできる人間だ」と勘違いしてしまうことを避けさせたいのです。1日の学習時間を10時間に限定させるのは、集中してスピードを上げる訓練を積ませようとした指導なのです。
「あと5分あったらこの問題はできた…」「本当はこの問はできたけれど、時間におされてその時はできなかった。たった5点だけどね…」。常日頃、のんびりと学習するクセの人は、そんな言い訳をいつもしています。「たった5点」…100点満点あたりで「5点」は全統記述模試では「偏差値2.5」に相当します。つまり、1ランクです。「たった5点」といってしまうその人は、自分が他人よりも「1ランク成績が下」という認識はないでしょう。その油断が夏の成果を台無しにしてしまう元になるかもしれないというのに。

そこまで1周くらい考えてから、私は皆さんに言うのです。「過去問の演習はもっと先、10月で良い」「目の前の模試で成果を出そうと学習計画を偏らせるな」「回数ばかりに気を取られて、やったことにしようとするな」「時間ばかり増やして集中力を失うような体質にするな、1日の学習は10時間で良い」と。

その言葉の裏に、中身の濃さをどれくらい求めているかは、これ以上言わずともお分かりのはずです。