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2021.7.1公開

模試のたび「あと5分で終了です」でダッシュで答案を書き込んでいませんか?

「時間の壁」の突破方法は?入試本番では猛ダッシュなしの涼しい顔で、合格に間に合ってほしいものです。

新しい自分を作る決意を持ちたい

一般の方にとって特に何でもない6月ですが、我々予備校の世界ではちょうどこの6月が一つの節目になっています。それは授業とか学習単位とはちょっと違い、「入試分析」という局面においてのことです。ちょうどこれくらいの時期、多くの予備校が「大学入試研究会」というものを実施しており、高校の先生方に「今年度の入試はこういう概況でした…」という総括報告をする時期がちょうど6月なのです。学校によってはこれを一つの機会として、次年度に向けての指導をする参考にされている場合もあります。
ご承知の通り2021年は「大学入学共通テスト」の初年となっていましたから、今年度の入試がどうなっていたかを検証することは、次年度に向けた指導にとってとても重要なことです。平均点だけを取り上げれば「大学入学共通テスト」は大して難しくなさそうな入試に見えましたが、これまでとは違う出題方針が散見されたことから考えると、次年度はその傾向を踏まえてやや難度が高くなるであろうことは想像に難くありません。当然ながら、次年度受験する生徒には学習指針として生かして欲しいことがたくさんありますから、この時期から新しいことを取り入れ、受験生は「新しい自分」に学習や生活パターンを改めていくべきなのです。しかし、人間というのはなかなか生活を改めることが難しいものです。そのあたりのことを今日は考えてみます。
「自分を変えることの難しさ」を、入試から少しだけ離れたエピソードで、ひとつ挙げてみましょう。そのエピソードとは、以前私が河合塾の京都校にいた頃、片道2時間ほどかけて通勤していました時のお話です。片道2時間ほどですから、ちょっと遠距離気味の通勤ですね。途中の大阪駅で京都行きの電車を待っていますと、乗り継ぎのために毎朝「猛ダッシュ」で駆け込んでくる中年のサラリーマンのおじさんが一人おられ、乗車と同時にいつも汗だくになっておられました。それを見ていて、私はとても不思議でなりませんでした。毎朝のことですから、どうしてあと5分家を早く出て1本前の電車に乗るとか、あと5分早起きするとかできないのか…ということです。その「猛ダッシュおじさん」はとっくに50歳を超えておられるように見えましたが、そんな年齢になってもたったそれだけのことがお出来にならないことが不思議だったのです。常識的に考えて、毎朝汗だくになることが好きで仕方ないようには思えないからです。
学習もそれに似たところがあり、このままではダメだとわかっているのに、受験生が自分を改められないことがやはりあるようです。特に他人と自分を比べる環境にない場合、自分のやっていることが非効率であるとか、一般的なやり方ではないから変えなければいけない…ということが見えないことは意外とあって、いつまでも変わらないことが続きます。人間というのは、誰かが「変えるべきこと」を見つけてくれて、アドバイスしてくれる環境にいてはじめて自分を変える一歩が踏み出せるというものでしょう。

「成績表」+「面談」で見つけられること

河合塾では面談を実施しますので、生徒と一緒に学習方針を考える機会が頻繁にあります。面談の前にはアンケートを実施していますから、われわれチューターはそのアンケートをじっくり読み込んだり、成績表を読み込んだりして「この生徒はこういう人」なんだなということをイメージしてから面談に臨むようにするのが常です。もちろん、そのための精度を上げるための研修にも余念がありません。我々チューターは面談の時に何を検討し、どう指導すべきかを常に研鑽して生徒指導に臨むようにしています。先日も若いチューターの方達に対し、ベテランチューターが面談の研修を実施しました。
さて、その研修の時のこと。研修用にサンプルで「昨年の生徒」の実例を持ってきたのですが、その成績表をみて面白いことを見つけました。ベテランの指導者にとってはよく見知った傾向なのですが、比較的新しいチューターには教えておかなければならないことでもあります。それは何だったのでしょうか。
そのサンプル生徒の成績状況はというと…、国語の得点状況が、共通テスト型の模試では漢文の得点が非常に低くなっていましたが、記述型の模試ではさほど漢文の出来が悪いわけではない…という例だったのです。皆さんはこういう生徒にどのような質問をしていけば真実を突き止められると思われますか。
おそらく私なら、「どの順番で解答しましたか」と尋ねます。高卒生コースの生徒の場合には「古文→漢文→小説→評論」の順で解答する人は少なくありません。大問の順でいえば「3→4→2→1」というところです。ところが、とりわけ現役生は普通の順番で解答することが多く、この場合なら「1→2→3→4」ということです。漢文は4番ですから、もしも本人が漢文を苦手としていなくても前半の問題に時間の資源を奪われると、最終問題の段階で精読する時間がなくなってしまいがちです。結果として「漢文ができなかった」という事実は出てしまいますが、何も漢文が苦手なわけではない…ということになるわけです。彼が記述型の模試では漢文の出来が悪くないのは、そういう可能性を示しているのではないかということです。
これとよく似たことは他の教科でもあります。数学の例でも「出来なかった問題」の範囲、例えば「三角」なり「整数」なりが弱点だと決めつけてしまうのは早計で、どの順に問題を解いたかは重要です。その時に「時間の資源を消費したもの」が成績全体が伸びなかった真犯人である可能性があります。そういう時に限って、その真犯人そのものは時間を喰ったことと引き換えに「出来て見える」ことがあり、なかなか上手く隠れているものだと思います。
例えば失点している「確率」の問題の一つ前に解いた「整数」の問題で時間を相当取られ、結果的に最終に回した「確率」問題を解答出来なかったとしたらどうでしょう。面談でその生徒が「確率は苦手ではないんです」という可能性は高く、成績表に出ている得点状況と彼の感覚は違っていることがあり得るのです。ベテランのチューターにとって、こういうことは瞬時に思いつくことなので、生徒に実際に質問を投げかけて、その「あたり」をつけていくことになります。河合塾が面談を必須にしていることは、そういう指導上の経験があるからなのです。
さて、こういう生徒が成績を上げるポイントは、本当の苦手を突き止め「本当の原因を取り除く」ことだということがわかりました。しかし、その後には予期せぬもう一つの壁が立ちはだかります。

「時間の壁」を突破する

自分の苦手なり弱点なりが判明したら、もうできそうに思いますが、そう単純ではないようです。多くの生徒は「分かっていても時間がないからできない」というからです。やらなければならないことは分かっていても、今やっていることで手一杯だから、新しいことをする時間がないということですね。要は時間の資源…これが第二の壁です。
「壁」の突破方法は主に2つです。単純には「時間のやり繰り」をすることで隙間を空けることで、それはそれでとても大切な心がけです。多くの方は1日のうちの15分や30分程度の時間は切って捨てていることが多いようですが、それをつなげるような工夫をしてみる価値はあるはずです。では、それを一段深めてもうひといき行きましょう。多くの人の発想にないのは、生活習慣を改めて「時間を生み出す」ことです。これを考えてみましょう。

先程の「乗り継ぎのために毎朝猛ダッシュで駆け込んでくる中年のサラリーマン」の例、歳をとると生活習慣を改めにくくなることが結果として「猛ダッシュ」につながっています。きっと彼は毎朝同じように起き、同じように朝食を食べ、新聞を読み、着替え…そんなところでしょう。あと5分を生み出すには、新聞を読むのを後回しにして電車に乗ってから読むとか、朝食を2分早く食べ終えるなど、生活で自分が守っている無意識のリズムを根本的に変える発想が必要です。多くの人は、たったこれだけのことがなかなか出来ないでいます。
受験生にとってそれはどういう形で立ち現れてくるでしょうか。それは、やはり「猛ダッシュおじさん」と同じです。自分の常識、集中力やスピード、1日の時間の使い方を他人と生活レベルで比較して変えようとしてみることです。皆さんは他人と自分を「生活」て比べてみたことはあるでしょうか。多くの方は他人と自分を「成績」では比較していても「生活」ではしていないままのことが多く、なかなか気づくことがないようです。
今までがそうしていなくても構いません。だったら、これからやってみられればよいのだろうと思います。そのために、できるだけ他人と自分の行動やスピードを比較できるところに自分の身を置いておいたり、注目してみたりする方法を積極的にとってみてください。例えば、チュートリアル(ホームルーム)でアンケートをとった時など、こんな単純なことでさえ速く終える人といつまでもかかる人がいることにきっと気づきます。「えっ、みんな終わってるの?」と焦る人、みんなが終わっていることさえ気づかないほどボーッとしている人など、様々な反応の人がいるのには笑ってしまいます。人が多く集まれば、それだけ自分の位置がわかりやすくなる例でしょう。
模試や小テストに臨むと、自分よりも先に「ページをめくる音」がする…。自分よりも計算が速い人、速読できる人がいるんだと感じて、自分ももっと日常で速くしなければならないと悟るでしょう。計算力や速読力など、基本的な処理能力をアップするように自分の常識レベルを上げることが「時間を生み出す」ことのはじまりです。
日常の学習はどうでしょう。時間があったらあったでゆっくり解いていませんか? 時間をかけて解けさえすれば「解けたことにする」ような感覚を持っていませんか。時間内に解けるように日常学習の集中力を高める、時間を意識して学習する、1日の学習でも終わりの時間を気にしながら進めるなど、自分の時間を集中して高めていく方法が必要です。
毎日のそうした積み重ねが生活習慣を作り、それが学習習慣になり、答案作成力になり、得点になります。自習室の緊張感の中で、自分のペースを最大限にして集中する訓練をするのは、最もよい「自分を変える」ことへの一歩だといえるでしょう。間もなく夏期の休暇期間に入ります。1日をフリーに学習に使えるようになった時、8時間でできるはずの内容を10時間かけてやって「自分は1日に10時間学習した」と言っているようでは、時間の「壁」は乗り越えられません。
自分の本当の弱点を把握する、それを強化しようと意識する、そのための時間のやり繰りをする、それで時間ができないなら、集中力を高めて時間の資源を生み出す、そして最大のスピードで答案を作成する自分に訓練する…それが全て揃った時が自分のベストというところです。ここまできてようやく、本番でほんの少しの余力が生まれます。

模試のたびに「あと5分で終了です」のアナウンスとともにダッシュして答案を書き込んでいるようでは辛いでしょう。これでは汗だくの「猛ダッシュおじさん」と同じではありませんか。それと…せっかく汗だくになったのに、彼は時折電車に間に合わないことがありました。皆さんは入試本番では「猛ダッシュ」なしの涼しい顔で、「合格」に間に合ってほしいものだと思います。