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2020.1.6公開

「気になること」を「気にならないこと」へと切り替える

「気になること」の多くは健康問題や履歴などが大多数です。ご自身の将来のヴィジョンを示すような何かを説明できるように努めましょう。

履歴は注目している

現在、医学科入試ではすべての大学で面接試験が実施されることはご承知のとおりです。大学によっては志望理由書を提出しなければならないケースがありますから、そういう場合には面接官は志望理由書に目をとおして面接に臨んでいるはずです。
中には、所属の経歴を出願時に書かせる大学もあります。そうなりますと、「何年の何月に○○高校卒…」などと書きこんでいくことになります。履歴に空白があれば、「この間はどうされていましたか」と尋ねられるでしょうし、中には「予備校の在籍も一緒に記入」するように指示のある経歴書の場合もあります。大学に入学したままで受験することにしている人は、席を持っている訳ですから、現在の在籍大学を記入しなくてはなりません。こういったところでは、虚偽の記入はできないのです。

気になることとは

では、どういうことが面接官は気になるのでしょうか。例えば、欠席日数が非常に多い場合、ほぼ間違いなく「なぜ欠席日数が多いのか」という質問が出ることは間違いありません。しかしこれは、あくまでこの先の就学に差し支えないかどうかを基本としていることを知っておいてほしいのです。。
欠席日数に関する質問は、本来、就学が困難かどうかを気にしている問いです。しかし、勘違いしないでほしいのは、健康上の問題がある人は入試で不利になって、不合格にされるのではないということです。一般的にそういうことが気になる人はおられるでしょう。例えば病気や手術などで長期の入院加療が必要になり、欠席日数が多い方の場合や、その後も通院治療を継続的にしている方、定期的にそのために授業を欠席しなければならない方もおられるかもしれませんね。それが面接で不利にならないか、不安に違いありません。
しかし、面接官がこの種の質問をする本意は、「不合格にしようかどうか」を考えているのではなく、「就学に支援が必要かどうか」を判断しようとしているという、いわば親切心から尋ねているはずです。

あまり知られていないようですが、ここで文部科学省高等教育局長から出されている「令和2年度大学入学者選抜実施要項」を見てみましょう。

その中の「第13 その他注意事項」の「1 健康状況の把握及び障害のある者等への配慮」には、明確に「入学志願者の健康状況については,原則として,入学者選抜の判定資料としない」と方針がはっきり出されています。もしも大学がそれを把握してどうこうしようとすれば、「募集要項に具体的に記述」しなければならないのです。ですから、要項に「健康状態を合否に使う」と書かれていないかぎり、それはありません。
また、健康状態を合否判定に使おうと仮に要項に書いたとしても、「疾病などにより志望学部等の教育の目的に即した履修に耐えないことが,入学後の保健指導等を考慮してもなお明白な場合に限定し,真に教育上やむを得ない場合のほかは,これらの制限を行わないものとする」となっており、健康状態で合否を左右することは、大学にとってはとてつもなくハードルが高いことといえるのです。

面接でご自身が病気などで欠席日数が多い場合、きっちりご説明して理解していただきましょう。場合によっては、「すでに問題なくなっている」とか、「一定の期間で通院しているが、その指導さえあれば問題ないこと」などをお伝えできればかまいません。相手は医学科の専門医の方たちです。どんな面接官よりも明確にご理解いただけることは間違いないでしょう。

在籍大学がある場合

現在の在籍大学がある場合、経歴書があれば明確にそのことが分かります。それらの大学について尋ねられることは当然あるでしょう。その場合は、再受験であることをお伝えし、場合によってはご自身の人生の進路を変更するキャリアプランの立て直しによって、学部を変えて受験しようとしていることをお伝えするべきです。
そういう方は、将来何をしたいのかをセットで問われることが多いようです。「何となく医学部」というようなニュアンスのお答えは、そういう方にはおすすめできません。できるだけご自身の将来のヴィジョンを示すような何かをご説明されるように努めましょう。

さて、以上のように「気になること」の多くは健康問題や履歴などが大多数です。私立大学の場合、好ましいこととはいえませんが、学費が払えるかどうかを気にする質問はあります。すぐに退学してしまうような人を入学させると、その方で穴が空いた分の学費収入がなくなってしまうからやむを得ないでしょう。特に再受験生の場合、学習意欲があるかどうかを非常に気にします。再受験生は入学後に留年する確率が高く、そのまま退学に至ってしまうことが多いように思われており、そのような質問が出るようです。私の元に来た再受験生の中には、パチンコ屋で2年ほどアルバイト店員をしていた人がいましたし、自衛隊で戦車の操縦をしていた人までいます。中には半年近く駅で寝泊まりしていた人までいました。
当然彼らの受験履歴は空白が多いでしょうし、職務経歴が入る方もおられますから非常に特殊です。それでも、自分の将来のキャリアプランに向けて明確なヴィジョンを示すことができれば、それは「気になること」へのしっかりとした回答に違いありません。あくまでご自身を明確に輪郭づけすること、それが「気になること」を「気にならないこと」へと切り替えることに繋がるはずです。