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2019.5.10公開

面接で求められる話の地平線の高さを勘違いすると、スベる!

どのような表現で自分を相手に投げかけるのか、主体的に問答する術は?

「時系列」で志望理由を考えよう

多くの方がすでにご存じのように、医学科入試では全83大学のうち、82大学で面接試験が課されています。「志望理由」を面接試験で尋ねられることは基本ですから、多くの方がその準備をしてくるに違いありません。面接試験で問われる志望理由には大きく二つあり、一つは「医学部(医師)」を志望する理由、もう一つは「この大学」を志望する理由です。
予備校では、面接試験前に志願者に向けた「練習」をするのが普通で、そこでの気づきが多くの方の参考になるはずですから、いくつか述べてみることにしましょう。
まず前者の「医学科志望理由」について見ていきます。多くの方は「医学部」を志望する理由を問うと、「祖父を診ていただいた医師の献身に触れて・・・」とか、「幼い頃にお世話になった医師の影響で・・・」という言い方に終始します。確かにもっとも原初的な経験はこれだったに違いありません。しかし、これは志望の「きっかけ」にしかすぎません。志望理由を述べる時に多くの方がこの類のものいいに終始するのは、志望動機とは「きっかけ」を述べればよいという思いこみがあるからでしょう。
もっと単純な理由を述べる人も少なくありません。「祖母が亡くなった時に人を助けたいと思った」や「人体に興味があったから」などで志望理由を終える人がいますが、これでは世界中の誰にでも当てはまる理由を述べているにすぎませんから、そこに「自分」がいません。
一つのご提案として、志望理由は「時系列」で述べられるように自分を整理しておくようにするといいでしょう。実は、「きっかけ」しか述べていない人でも本当の志望理由がないのではなく、準備できていないだけのことが多いだけです。それなら、整理して準備しておけばしっかりと相手に届けられるに違いありません。
具体的にいえば、「過去」=「きっかけ」、「現在」=「今関心があること」、「未来」=「将来やってみたいこと」もしくは「社会に貢献する形」などで整理してみることをお勧めします。
将来のことは自信がないし、責任ももてないということをよく受験生から聞きます。しかし、そんなに心配しなくとも、今の段階で将来の方向性を述べるに留めればいいことですし、将来は変わるかもしれないことは、面接を実施する側も理解していることでしょう。
その上で面接官は「将来は研究か臨床か」や「将来の専門は」などの質問をしてくるのでしょう。その質問の前提として、「今考えているという前提で・・・」ということは当然なのではないでしょうか。
ただし、推薦入試などで卒後の進路の限定があるケースでは事情が異なります。その「縛り」をよく理解しているかを再三尋ねられますから、それに応えることは必須の条件です。

「立場」的な語り方

受験生は年齢的にはすでに大人です。自分の発言が社会でどう見えるのかは意識しなくてはなりません。これは単に言葉遣いだけではなく、考え方にも関わることです。
話の地平線には高さがあり、「公の立場」で述べる若干高めで公式なものと、「私の立場」で述べる日常生活に近い低めのものが混在しているものです。面接試験でのやりとりでは、これを意識しておく必要があり、何でも日常生活レベルで正直に伝えれば、相手に分かってもらえると早合点しないようにしたいものです。
例えば「最近どんなことに感動したか」と問われることがあります。これに対して「今朝のホテルの朝食がおいしかった」ことを持ち出して話す訳にはいきませんね。これでは話としてスベった上、入試にもスベりそうです。こんな場面で人生の勝負をかけてもしかたありません。
「他人に笑われるよ」という言い方がありますが、これは話の地平線がずれていることを矯正する反応です。いわば「ズレ」を表すシグナルだといえます。面接官に受ける・・・これはズレているということです。
社会的に大人の立場から「なるほど」といってもらえる言葉を自分で考え、相手に投げるように心がけましょう。面接では論理的な話のやりとりができれば、大きな損失にはならないといえます。

面接準備は自分が主体

予備校で「面接試験ガイダンス」を実施してアンケートをとると、自由記述欄に決まって「模範解答が欲しかった」と記入する人がいます。私はこの種のアンケートを見ると、いつも少しガッカリします。なぜなら、一言でいうと、アンケートの記入者さんは「人の話をちゃんと聞いていない」からです。
多くの面接試験での質問は個人に関することが主体です。それをどのような手順で述べるかは個人によって違いますから、「面接ガイダンス」ではそれを考えるための方向性を与えるわけです。にも関わらず「模範解答」を欲しがる人は自分で考えることを放棄して、そんなことに時間を使うのは面倒だ、適当でよいと思っておられるのでしょう。
こういう適当さは言葉の端々に出るものです。面接試験はある意味、こういう社会的に適当な人をチェックする試験でもありますから、それもいいのかもしれませんね。
私は紋切り型の答えはガイダンスで示さないようにしています。あくまで「どのような質問が面接試験で投げかけられるか」を紹介し、「どんなことを訊こうとしているのか」を示すに留めています。もしも何らかの回答方法の型を示せば、多くの人がその方向性でしか回答しなくなるに違いありません。そうなれば、個人によって違うユニークな表現が失われてしまいかねないことが問題です。

どのような表現で自分を相手に投げかけるのか・・・社会的に通用する言語の地平線を自分の日常の表現方法と比較して調整し、もっともうまくいく方法を考え出す過程・・・面接試験に求められることは、こういう試行錯誤をする気概のある人物であり、それを実行する能力のある人に違いないのです。