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2024.10.1公開

知らないことは「知らない」、思いつかなかったことは「思いつかない」とはっきり自分に言い聞かせて前進しましょう。

1日1日の気持ちが前向きになって考え、行動できるようになってはじめて、目標も達成できるというものです。

前回、「新学期スタート編」をお送りしました。受験生のみなさんの学習は順調に進んでいるでしょうか。今回は引き続き「冬期学習を迎える前に」をお送りします。新課程で初の共通テストを迎えるにあたり、今年の冬はどんな心得で学習すればよいか、過去記事からまとめて最終チェックのポイントをお送りします。

「できない」という場合の二つの側面を落ち着いて考えよう

もともと多くの人がはじめからいい「アウトプット」ができるわけではありません。むしろ、「できない」人の方が多いといってもいいでしょう。それを「訓練」することで「いいアウトプット」ができるようにするわけですが、そのための第一歩は、どのように「できない」か自己分析することです。「アウトプットできない」状況には内容的な違いがあるからです。
一つめは「知識として知らない」ために「アウトプットできない」状況です。知らないからできない…これには「ティーチング」が必要です。「ティーチング」とは、知識を修得するために、知らないことを教えることを指します。まず「知らなかった」知識を修得することに力を注ぎ、「アウトプットの素」をつくる必要があります。
二つめは、「知識の資源はあるがうまく引き出せない」状況です。これは「アウトプットすべき方法」と「知識資源の対応」が上手くとれない状況です。例えば「聞いたらできた」とか、「言われたらそうだった」などの状況です。これは、自分の中にある「知識の資源」がアドバイスさえあれば反応できている状況です。これには「コーチング」が必要です。「コーチング」とは、知識の資源を上手く出す方法を学ぶことです。「アウトプットすべき方法」と「知識資源の対応」が一致する場面が増えれば、行き着く先は「言われなくてもできる」状態が完成します。自分が上手く「アウトプットできない」場合、この二つのパターンのどちらになっているのか自分を落ち着いて分析することで、対処の方法が見えるといえるでしょう。
受験生はこの切り分けを甘くしないようにすることです。失敗する人にありがちなことは、周りの友人がわかっているから「自分も知っているような気分になる」とか、「聞けば理解できたからはじめから本当はできることだった」と思いたくなる…という、妙なプライドを持ってしまうことです。この種のことは特に多浪生に多いように思います。知らないことは「知らない」、思いつかなかったことは「思いつかない」とはっきり自分に言い聞かせて前進しましょう。

セルフコーチング(正しい反省の仕方)を身に着ける

「反省」にはできなかったことや至らなかったことを見つめると同時に、自分の良かったことを見つめる意味も含んでいます。ここはなかなかできたじゃないか、そう思えるポイントを自分で自覚することは、とても大切です。そのうえで自分に問いかけましょう。
「どうしたら」・「できるように」・「なるだろうか」…と。「どうしたら」…と多くの可能性を自分に問いましょう。そして「できるように」…と肯定的に考え、「なるだろうか」…と未来形で自分に問いかけましょう。
これまで多くの人は、反省といえば「できなかった」ことを自分に問うことが普通だと考えています。しかも「過去形」で問うてきました。例えば「どうしてこの問題の解法を思いつかなかったのか?」…これは、自分に対する詰問です。自分を責めるばかり…だから、自分が自分に言い訳をするようになってしまいます。
では、肯定形・未来形で問うとどうでしょう。「できるように」・「なるだろうか」…と問えば、前向きにできる方法を考える自分になれます。「できなかった過去」は認めていったん受けとめ、それよりも、それを解決する方法を考えることに時間の資源を使うわけです。そして、大切なことはそれを行動にうつすことです。
正しい「反省」をすることで、日々を前向きに、次に向かってスタートするワクワクする気持ちになれるようにしたいものです。セルフコーチングとは、日々の自分をコントロールしつつ、大目標から逆算して、それを達成していく課程ともいえます。1日1日の気持ちが前向きになって考え、行動できるようになってはじめて、目標も達成できるというものです。

「ミスしない」は目標にできない

予備校でも高校でも、先生方は模試を受験する前の生徒に「どういうことを目標にするか」とよく尋ねます。すると、「ミスをしない」と答える人は結構多いように思いますがどうでしょう。一見、正しそうに見える物言いですが、果たして本当にそれでよいのでしょうか。「◯◯しない」というように、後ろに「ない」のついた行動は現実世界では取れません。しかし、そこで思考が停止しているのは、彼らが「現実世界で自分を向上させる行動」から、無意識に逃げてしまっているからだと思えるのです。
「ミスしない」は、本来は「集中力を高める」と表現すべきことを、裏側から見て表現しているだけなのです。ミスをするかしないかが問題なのではなく、「正確な答案を記述すること」が「ミスしない」に結果としてなっているだけです。ならば、そのために何を心がけるかということが「行動目標」にならなくてはいけないでしょう。
演習をできるだけ増やす…とか、集中して答案記述する…などの行動や、そのための手段として「音楽を聞きながらの学習排除」などの途中行動目標もありえるでしょう。「ミスしない軍団」は、そこまで考えて自分の行動を改革していってもらいたいものです。

「運」は自分の手の中にある

予備校にいると二種類の考え方の人と出会います。一つ目の考え方の人は一生懸命自分に合うものを探している「理想主義の人」です。いわば「アレさえあれば自分は無敵になれる」というアイテムを求める人です。ところが、なかなか理想のものは見つからないものです。そのうちに時間だけが経過しますから、自分が伸びないことは「理想的なアイテム」に自分が出会っていないからだといいかねません。
もう一つの考え方の人は手元のもので勝負する「現実主義」の人です。手元にあるもので常に最大パフォーマンスを引き出そうとするタイプの人で、色々な教材や様々な人のアドバイスを自分の成果に結びつけられる人だといえるでしょう。
「よい教材」に出会っていても、「理想主義の人」は自分のセンスに合わなければそれを「理想」とは思いません。ですから、せっかくよい教材に巡り合えた「強運」を、その人はこともなげに手放してしまいます。一方、「現実主義」の人はつかんだものが多少自分の理想とは違っていても、それを活用することでしょう。基本的に多くの人は周りの人が手を差し伸べてくれることが多いので、それなりに「運がいい」といえるはずです。しかし、それを生かせないのは自分の生き方の問題です。
何のことはない、運はすべての人に訪れているけれども、それぞれの人が自分の都合で、勝手に手から放したり活用したりしているだけなのです。

「過去問演習」と「講習の大学別講座」の違い

少しでもアドバンテージを保ちたい受験生にとって、過去問への取り組みはかなりの誘惑です。大学の過去問はかなり早くに本屋の店頭に並びますし、情報ステーションを覗くとどうしても受験生の目に入ります。正確にいうと、過去問に取り組むことそのものが悪というわけではありません。問題なのは「大学の過去問にばかり取り組み、自分の何ができていないかを振り返らず、ひたすらに過去問に取り組むことが自分の学力アップにつながっていると勘違いする」ことです。
大切なことは、「過去問への取り組み」を、「自分の本来の学習」に結びつけることです。ところが、残念ながら、無計画に大量の過去問演習を自分だけでする受験生は、単純に丸ごとの過去問に繰り返し取り組んでしまうだけで、結果的に「時間を喪失」してしまう人が多いのです。あえていうなら、過去問を自分で演習するにしてもやり方があるということです。
大学の過去問は当然、ある程度のレベルです。夏期や冬期の講習で特定大の過去問を使用した教材を使いますが、これは作成者が目的をもって取捨選択して設計をしているからこそ過去問が有意義な教材として生かされているのです。
ところが、自分で過去問をやっても同じだろうと、講習の受講料を惜しんで自分で演習する受験生は毎年何人もいます。結論からいえば、解説がないまま自分で過去問演習をしたところで、成果はたかだか知れています。ビジョンがないままで丸ごとの過去問を演習したのに、「自分は人よりも大学の本格的な問題に取り組んだのだから、他の受験生よりも学力が上になったはずだ」という曲がった「思い込み」に結びついてしまうことさえあるでしょう。講習受講・過去問演習・講師への質問は密接な連携が必要なのです。

たかが5点、されど5点

全統記述模試の得点と偏差値の対応をみると、100点あたり「5点」の差が「偏差値2.5」に相当することはあまり意識されていません。河合塾は大学の難度に「ランク」をつけて発表していますが、「偏差値2.5」は「1ランク分」に相当します。つまり「5点の間違い」は「1ランク分の間違い」ということで、「判定1つ分」合格から遠のく…ということです。
この5点を取るには、かなりの学習と演習がバックヤードで必要になり、「たった」という表現ができるほど小さなことではありません。「その5点」を間違わないで解答できる人が自分以外にたくさんいる…ということを肝に銘じておきましょう。受験生は「たった5点の間違い」ではなく、「5点もの間違い」という謙虚さをもって学習に取り組むことが求められています。その「5点」が医学科入試の合格には必要なのです。

添削のススメ(過去問への取り組み方)

「質問すること」や「添削してもらうこと」は「自分の状況」を相手(先生)に貯金しておくこととです。質問や添削を通じて先生は皆さんのことをよく知ってくれるはずですから、「自分が◯◯大学の問題が解けるかどうか」と受験直前に尋ねれば、きっと良いアドバイスをくれるでしょう。「貯金は引き出せる」のです。日頃の質問が頻繁な人ほど、アドバイスの肌理も細かくなるというもの…。「質問する」ことは、自分と先生との真剣勝負のやりとりのようなものです。
ところが、日頃まったく質問に行ったことも添削を受けたこともない人が、受験期間近になって「◯◯大学の問題って難しいけど、どうしたらいいでしょう」と、あまりにもざっくりとしたことを尋ねに行き、「君のことはあまり知らないからなぁ」と先生にあきれられる場面をたまに見かけます。貯金していない人が引き出せるものはありません。その時に悔やんだところで、手遅れというものです。

入試本番までに一冊は本を読もう

受験生が「1週間の学習計画」を立てると、ほとんどの時間資源を学習に費やしていることは間違いないでしょう。ですから、「その他のこと」に時間の資源を割り当てることはできないと考える人は多いようです。
しかし、人は「必要と感じていること」には「時間を作る」ものです。趣味を楽しむ時間の多くはそうでしょう。音楽を楽しむ人ならその時間をどこかで見つけてくるのではありませんか。受験生は「学習計画をすべて学習に使わないといけない」ように思うようですが、そんなことはありません。必要なら「その他の時間」を作ればいいわけです。
何かの計画を立てる場合、まず「何に時間を割り当てるか」を誰しも考えるものです。ということは、はじめに「本を読む時間」を「割り当て項目」に入れてしまえば、本を読む時間は作れます。受験勉強に忙しくて本を読む時間がない…と主張する人の多くは、「本を読むことが必要なこと」だと思っていないから、はじめから時間を割り当てていないだけです。
医師となっても日々の生活は今以上に忙しいままです。そんな中でも学力以外の力、教養や探求力を深めるには「書物に接する生活」を持ち続ける必要があるでしょう。医学科入試の面接試験では本のことを尋ねる質問がよくされます。それは、面接官はそのことをよく分かっておられるからこそ…ではないでしょうか。
おそらく「本を読む時間」は、何年経っても自動的には生まれません。だったら学習計画を立てる時、それも織り込んだ計画を立てて豊かな教養を磨きたいものです。

以上、2カ月にわたって『医学部受験生に求められる「心得」』をお送りしました…いかがでしたか。入試本番まであと3カ月足らずです。ぜひ日常の学習習慣を見直し、ロスのない学習を進めてください。
次回は次年度の医学科入試の最新動向について、夏期の「第2回全統共通テスト模試」のデータを元にお伝えします。