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2024.8.7公開

「変化に対応」するために、まず「発想の転換」からはじめましょう。

「学力資源」を身につけ、「時間制限の壁」を乗り越え、最大のアウトプットを実現することは、それぞれの人が自分自身で乗り越えるしかない課題です。

「学力資源」と「制限時間の壁」

医学部に合格するためには大学の試験に合格しなければなりません。そのための前提として「学力をつけること」が必須であることは明白ですね。そこで、次の質問です…。

「学力をつければ医学部に合格するでしょうか」

受験生にはよく考えてほしいところですが、忙しい彼らにとってそんなことを考える時間さえないでしょうね。では、私がどう考えているのか…勘の良い読者ならすでにお気づきになったでしょう。答えは「半分イエス」で「半分ノー」です。…では、なぜそうなのか。

入試で受験生が学力を答案用紙にアウトプットするには、「学力資源」が自分の中にあることが前提です。答案に採点者が納得いくアウトプットがなされていれば得点化され、結果的に合格に結びつくでしょう。したがって先ほどのご質問への回答は単純には「イエス」です。
ところが、どんなに「学力資源」が自分の中にあっても、制限時間内にアウトプットできなければ、それは学力がないのと同じです。先ほどの質問は、「制限時間内に回答できる」という条件をクリアできない場合で考えれば、回答は「ノー」になってしまうのです。

つまり、「学力資源」が大きくなっても、制限時間内に合格答案を作成するという条件をクリアできるかどうかで、先ほどの質問への回答は「半分イエス」で「半分ノー」にならざるを得ない…ということです。ただ、なぜ条件をつけてまで、私が回答を中途半端なものにするのかご説明しなければなりませんね。

ここ数年、私の元にやってくる高卒コースの受験生たちを見て気づくことがあります。高卒コースですからいったん受験を終了した生徒のはずですが、普通の「記述模試」の出来は例年とさほど変わらないのに「共通テスト型模試」の得点が圧倒的に取れない…そんな特徴が顕著に出ています。アンバランスに「共通テスト型模試」の方だけが非常に低くなっているのです。
そもそも「共通テスト」は「センター試験」時代と時間割の枠組みはさほど大きく変化させていないにも関わらず、「思考力・判断力・表現力」を問う設計に変化しています。つまり「問題の読みこなし(インプット)」に非常に時間がかかる設計に変化してきているのです。
「学力資源」があっても時間内にアウトプットする力が不足しているから得点できない…近年の「センター試験」から「共通テスト」への変化が、彼らのもっとも苦手とする「時間制限の壁」を浮き上がらせているといえます。課題は「制限時間内のアウトプット」なのです。彼らがこれを突破しなければ、医学部合格は難しいでしょう。昔ながらに「学力資源」アップばかりにこだわっていては、新しい時代になって「時間制限の壁」がクローズアップされているという本質を見失うのではないでしょうか…。

発想を転換すれば「変化に対応」できる

入試は刻々と変化しているのですが、多くの方はそのことに気づいていないようです。「センター試験」の時代でさえ時間制限は大きな課題でした。しかし、「共通テスト」ではその時代以上にそれが深刻な課題として受験生にのしかかっているのです。結果的に多くの受験生が、日常で「制限時間内にアウトプットする」訓練が不足したまま本番に臨んでいます。すでに「センター試験」の時代は終わっているのに、「共通テスト」の過去問がないからといって「センター試験時代のものをやっておこう」などと、「時間制限」を昔の感覚から切り替えていない受験生があまりにも多いのです。

受験生は「学力」=「知識」をつけることだけに専念すれば医学部合格が手に入るのであれば楽なものです。ところが実際には「時間制限」が厳しくなってきているのですから、「学力」をできるだけ短時間でアウトプットする訓練を、日常学習を通じてしておく必要があります。最大スピードで計算したり、できるだけ早く英文を読んだりする行動は、日常の学習中にすることで身につけることができるからです。試験当日だけ本気出してやります…とはいきませんよね。
ただ、これを「やらなくちゃいけない」とか「できなくちゃいけない」と捉えると、気持ちが塞ぎ込みますし、苦しくなってしまいます。だったら、「これができれば合格答案につながる」「これができさえすれば一つ前に進める」などと「前向きに言い換え」てみるのはどうでしょうか。たったこれだけでも気持ちが切り替わり、次の行動に生かせるはずです。
「あと5分あったらできた」は「あと5分縮めればできた」…だから「5分をどうやったら稼げるか」に発想を転換しましょう。「計算ミスしたから間違った」は「計算ミスをしないような余力を身につけよう」…そのためには「何か得意分野を作ろう」と考えれば、失敗でさえも次の成功のための行動に結びつけられるでしょう。「変化に対応」するために、まず「発想の転換」からはじめましょう。

「発想の転換」が「行動力」に影響するのは、何も「学習方法」だけではありません。目の前のことを「何か改善の方法があるはずだ」とあきらめないで発想を転換し、自分の「行動力」に結びつける癖がつけば、それがその人の人生に直結する結果を生み出してくれるかもしれません。ここで、ちょっぴり面白い、そんな実例をご紹介します。

「発想の転換」を「行動力」に結びつける

ある年のこと、私立大医学部を受験している女子生徒がいました。なんとか医学部を受験できる学力がつき、いくつか私立大に出願して順次受験のスケジュールをこなしていた時のことです。
この生徒は近畿地区在住でしたので金沢医科大学の一次試験を大阪の地方会場で受験し、その後無事一次試験に合格しました。そこで、二次試験の面接に臨むために本学の石川県金沢市郊外の大学に向かうことにしたときのことです。私立大の入試はちょうど季節が1月下旬か2月の上旬になっていますので、雪の季節です。その時も運悪く、大阪から金沢に向かう列車が豪雪に阻まれて減便、運休、遅延が大量に発生していました。
彼女は午後の面接予定でしたが、列車は時間通りに到着することは望むべくもない状況でした。面接の予定時間に間に合わなければたいていの人は受験をやめてしまいたくなるでしょう。それに、最低でも大学の開学している時間以内に間に合わなければ門の中にも入れないのですから、あきらめて「試合放棄」しそうなものです。天候は回復の見込みなく、列車はゆるゆると進む一方で夕刻が近づいてきます。それでも彼女は「あきらめたら、そこで試合終了」と考え、閉門時間までに間に合うかどうかは運に任せ、とりあえず大学まで行ってみることにしたのです。
すると、あきらめなかった彼女に天が味方したのでしょう、夕刻ギリギリになってようやく大学に到着したのです。大学のスタッフは「よく来てくれましたね」と快く彼女を迎えてくれ、ちゃんと面接試験を受けさせていただくことができたのでした。

さて、ここまででしたら普通の「頑張ったエピソード」ですが、これにはさらに続きがあります。実は彼女、翌日に久留米大の一次試験の予定がありました。久留米大の試験会場は本学の福岡か地方会場としては東京しかなく、彼女は東京の会場で受験予定にしていたのです。本来なら金沢医科大の二次試験を受験したその足で、列車を使って富山・岐阜経由で名古屋に入り、名古屋から新幹線でその日の夜に東京に到達する予定でした。
ところがこの雪で北陸から富山・岐阜経由の列車が動く可能性はなく、しかも行動予定が大幅に狂ってしまって、東京会場で久留米大を受験する前日の夕刻にまだ石川県の金沢市にいるという、彼女にとっては大ピンチの状況になっていました。ふつうに考えてここから東京まで当日中の移動は不可能ですから、もうあきらめてしまうところでしょう。
しかし、彼女はこの場面で、「どうしたら到着できるだろうか」と考え始めたのです。「そうか、空だ!」。…彼女は金沢から小松まで引き返せば空港があることを思い立ち、小松から東京まで飛行機を使えば到達できるはずだ…という計画で行動を起こし始めます。

小松まで列車は動かないので、ここは地元の雪道対策をした熟練のタクシーで行けばよいだろうということでタクシー乗り場へ…。ところが同じようなことを考える人がいるもので、タクシー乗り場には長蛇の列ができはじめており、これではタクシーに乗るだけでも相当の時間ロスが出てしまいます。たいていの人はこの時点であきらめるに違いありません。
ところが彼女は、今度は「どうしたら長蛇の列を避けられるだろう」と考えはじめたのです。「そうだ、知り合いの人を探し出せば、タクシーに相乗りできるから列の前方に入れる」ということで、列の前から順に知り合いの人がいないかチェックしはじめたのです。ただ、結論からいうと知り合いの人はさすがにそんな時間にそこにはいませんでした。ここまでくればたいていの人はもうあきらめるに違いありませんね。
ここでまだあきらめないのが彼女の強みです。今度は「知り合いの人がいないのなら、知り合いの人を作ればいいじゃない」ということで、タクシーに相乗りできそうな単独行動していそうな受験生身形の人を探し始めます。そして、列の前方にいたある男子に狙いを定め、なんと

「ちょっとそこのあなた、一緒に空港まで行こうよ、タクシー代、私が出してあげるよ」

と声をかけたのです。男子はちょっと戸惑って、

「えーっと、どこかでお会いしましたっけ。」

と怪訝な反応を示したので、彼女はたたみかけるように、

「うん、会ったよ。今ね。」

と返し、結局彼女は彼と共にタクシーに乗ってそそくさと金沢から小松に向けて出発したのでした。

さて、ようやく小松空港まで到着したものの、ここでも搭乗券の購入に整理券が配られ、すぐに購入できない状態でした。彼女はここまでくれば整理券番号が来るまで空港のロビーで待ってやろうと覚悟を決めたのです。
刻一刻と時間が過ぎていったのですが、さすがに空港にいた人たちもあきらめる人が続出し、ホテルをどこかとって去っていく姿が目立つようになりました。彼女が「順番回って来い」と祈り続けたところ、ついに彼女の順番が来て搭乗券を無事購入し、その日の遅くには飛行機を使用して東京の宿泊先に到着する離れ業をやってのけました。彼女は合格通知よりも先に、飛行機搭乗券購入の「補欠合格」がもらえたと笑っていました。

さて、翌日に彼女は無事久留米大の一次試験を東京の会場で受験し、その後その大学も二次試験に進みます。肝心の結果は…金沢医科大と久留米大、なんと彼女は両方の大学とも「補欠待ち」になってしまいました。しかし、強運の彼女ですから、「この補欠は上がってくる」と強く信じて、久留米大進学に備えようということで福岡に住居を探しにいったのです。「補欠合格が上がってくる頃には良い物件はきっと押さえられているに違いないから、先に取っちゃおうということで…」と彼女はいっていましたが、なんとも行動派の彼女らしいところですね。
その後の結果は…彼女には金沢医科大、久留米大の両方から「補欠合格」の繰り上げ通知があり、彼女は予定通り久留米大に進学しました。

あれから随分と月日が経ちました。すでにドクターとなり、お母さんにもなったたくましい彼女ですが、あの時の「発想の転換」と「行動力」がなければ、人生の設計図は今と違っていたかもしれません。できないからといって言い訳したりあきらめたりすることは簡単でしょう。しかしこれまでの考え方に捉われず、「どうしたら、できるように、なるか」と前向きに「発想を転換」して解決に導く「行動力」が、皆さんの未来を切り開くことにつながります。

彼女のように「何をなすべきか」「何が自分にできるのか」を考え、解決する「行動力」を発揮しませんか。「学力資源」を身につけ、「時間制限の壁」を乗り越え、最大のアウトプットを実現することは、それぞれの人が自分自身で乗り越えるしかない課題です。成績が上手く出ていない自分を見つめたら、今度は未来の自分に向け、今日から気分一新で再スタートしましょう。

どうか決してあきらめないでください。「あきらめたら、そこで試合終了」ですよ。