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2023.6.5更新

入試本番で「自分の実力をうまく出す自信」があるでしょうか。

受験生は学力を向上させることばかりに目を奪われますが、実際に学力を伸ばすのに必要なこととは何か、考えてみましょう。

受験生には様々なタイプがいる

少し想像してみてください…。受験生のみなさんは、入試本番で「自分の実力をうまく出す自信」があるでしょうか。…もう少し問い方を変えるなら、自分が学習したことを入試本番で「うまく答案にアウトプットする自信」があるでしょうか。
そんな問いをわざわざしなくても、「模試の成績」をみれば「本番もできるに違いない」という客観的な判断は可能に思えます。ところが、成績=合格大学…というなら受験指導は簡単ですが、現実にはそううまくいきません。受験生は必ずしも成績の良い科目が得意ということはなく、成績の偏差値がよいから自分に自信があるわけでもありません。自分の中で何か納得がいかなくて自信を持てないことがあるものです。
一方、どこからそんな自信が出てくるのか理解できないほど、楽観的な受験生もいます。圧倒的に成績差がある大学を「第一志望だから絶対譲らない」ということは珍しくないですし、中には成績がなくとも「いよいよ本当のオレを登場させましょう」と壮大な学習計画を立てて、「まぁ、見ていてください」と胸を張る、途方もなく大きな自信の持ち主さえおられるのです。

とはいえ受験生には様々なタイプがおられますから、私は別に彼らが悪いとは思いません。あくまで和やかに、どうしてあげれば良いかを彼らのタイプに応じて考えるだけです。私みたいに予備校で30年も受験指導していますと、15分も会話を交わせば彼らがどんなタイプの人なのかはわかりますし、この後どう指導していくか判断するためのたくさんの経験による裏付けがあります。ベテランの経験として言わせてもらうなら、模試の成績通り入試が運ばないからこそ、敢えて面談指導をしているのです。しかし、若い経験の少ない担任の方は、何か手掛かりがないとなかなかそういうご指導は大変でしょう。
そこで生み出されたものが「学びみらいPASS」というテストです。河合塾が作ったこのテストは、学力偏差値を測る従来の模試とは違い、生徒の思考様式や行動の型のようなものを見極めるためのテストだといえるでしょう。つまり「生きる力=ジェネリックスキル」を測るテストです。説明の仕方が難しくならないように敢えて簡単に説明しますと、要は従来ならばベテランの指導者だけが反応していた「生徒のシグナル」に、どのような面談担当者であっても同様に反応するために、「思考や行動様式」を一定の仕組みで「見える化」する画期的なツールが「学びみらいPASS」なのです。

では、このツールを説明しながら、これまでベテランの指導者がどのようなことに反応していたかみていきましょう。そうすれば、受験生に必要なことが見えてきます。どんなタイプが入試に向いているのか、理想の回答が導き出されるに違いありません。

「学びみらいPASS」とは

そもそも「学びみらいPASS」…と、このテスト名称を1つの呼称で呼んでいますが、本当は4つの区分のテストをひととおりまとめた名称です。すべてをご紹介することはここではやめておきますが、そのうちで特に重視しているのは「PROGーh(プログエイチ)」と「LEADS(リーズ)」です。

「PROGーh」はもともと大学生用に作成された「PROG」を高校生用に作成したもので、情報分析力や構想力など知識を使用して解決する力(リテラシー)と、対人基礎力、対自己基礎力などの行動特性(コンピテンシー)を測定するものです。知識は知っているだけでは社会で活用できませんから、それをどう使ってどう行動する人なのか…を知るための手がかりになるテストです。
一方、「LEADS」は学習生活パターンを知るためのセルフチェックです。日頃の学習習慣や生活のことなどをアンケート形式で解答するもので、友人関係や進学への意識なども含まれます。志向性のタイプなどがこのアンケートの結果として示されます。進路実現の意識向上には、非常に大切な指標といえるでしょう。

河合塾では、現役生のみならず高卒生には全員この「学びみらいPASS]を導入しており、年度当初の面談ではこのテストの結果を活用しつつ学習計画などの指導を行っています。

「学びみらいPASS」の指導で見えてくること

「学びみらいPASS」を受験指導に使う際には、生徒の「弱点」がどこにあるか客観的な結果を使って面談でお互いに共有し合い、それを矯正するためにどうするかを考えることに主眼が置かれます。
例えば「計画立案力」に課題があるようなら、学習時間の長短には好きな科目を中心に偏りがあることは容易に想像がつきます。これまで、学習を「行き当たりばったりで行ってきた」ためにそうなってしまっていないか反省を促し、「長期の視点に立って学習を進める」ことからはじめていこう…という話になるでしょう。
「課題発見力」に問題があれば、授業で習った同じ問題なら解けるけれども、少し形をかえただけで「違う問題」に見えてしまい、授業で習った手法を活用すれば解けることを見抜けない…という生徒かもしれません。授業の予習準備の際の「ポイントの掴み方」に予習方法を集中させたり、授業中でも汎用性のある学力を構築させたりするために、特に「定理」を掴むことに集中させる指導をすることになるでしょう。
このように、「学びみらいPASS」は学力偏差値ではなく、行動に生かせる指標を生徒と担任に提示することで、受験生自身が「未来の自分」に向けて生活基盤を改善していくことを目的としたテストなのです。

さて、私が調査したあるエリアの生徒たちの「学びみらいPASS」のデータでは、「自尊感情」の低い「生徒」には「医学科入試」においてはやや結果に影響する…というデータが出ました(グラフ参照)。合格者不合格者それぞれの構成比に注目すると、「★3つの生徒」の割合は両者ともほとんど同じですが、「★1つ」の生徒は不合格者の方が多いことがわかります。

あるエリアの生徒の「自尊感情」と医学科合否の関係 あるエリアの生徒の「自尊感情」と医学科合否の関係

このデータは「国公立大の前期試験の受験者」で「今年の共通テストで700点/900点満点以上」かつ「二次学力偏差値65.0以上」の生徒のみを抽出して調査したものです。成績的にはこのデータにある「合格者」も「不合格者」も、ともに条件としてはどちらが合格していてもおかしくないような生徒です。差があるとすれば、行動や志向性のような成績とは別の要素なのではないかと思うのです。

医学部に合格するなら学力が高いことが前提ですから、日々の学習は欠かせません。問題はその学習を継続するための意欲の有無です。自分の学習経験に基づいてもっとも意欲的に学習する「星3つ」の人に比べて、「星1つ」の人はおそらく成功体験が少なく自分に自信を持って学習できない可能性があります。そうなると、長い期間学習継続しているうちにモチベーションが次第に下降することになってしまうでしょう。
生徒に自信を持って学習を継続してもらうためにも、河合塾では「学びみらいPASS」でこういう傾向の生徒を見つけ、面談を早い時期に実施して意欲を強化するように努めています。

「学びみらいPASS」は受験生の「強み」を見ながら、それを活用して志望理由書作成に転用するなど、前向きな活用をすることができますし、「弱み」が見えればそれを前向きに捉えて生活基盤を「強化」することができるツールです。受験生は学力を向上させることばかりに目を奪われますが、実際に学力を伸ばすのは生活基盤の改善によるところが大きいといえるのです。

「夜の1時まで学習しています」

…と「計画立案力」が低めの生徒が面談で「自分は努力している」ということを、自信ありげにいうことはよくあります。しかし、私は少しそれには思うところがあって、こんな返しをしてみるのです。

「では、もう少し頑張って0時には終えるようにしてみませんか。あなたならきっとできますよ。」

本当は、学習が夜中を回るのは「努力している」のではなく、「ゆっくりやっているだけ」なのではないかという問いかけをしたいところです。また、「他の人は同じ学習を0時までに終えているのに、あなただけ時間がかかっているのではないのか」と考えられなくもないのですが、せっかく彼が「自分は頑張っている」というのですから、それをいってしまえば身もふたもありません。気持ちを抑えて、できるだけ彼の主張に沿って「肯定的」に質問してあげるようにしているわけです。

「えーっ…でも、やることはいっぱいありますし、難しいです。」

「では、0時に終えるにはどうすればいいでしょうね。何かいい手はないでしょうか。」

「うーん、計算をもっと早くするとか、英文を早く読めるようになったらそのうちにはできるかも…。でも今はなぁ…。」

「これから『スーパー⚫︎⚫︎くん』になれば、少しずつ改善するんじゃないですか。今すぐには無理でも、毎日意識して繰り返せばきっと早く終えられるようになりますよ。毎日が訓練ですね。できるようになれば、その分、早く寝ることができるというものです。」

「じゃあ、少しずつやってみます。」

わずかこれだけの会話ですが、彼はこのコーチングを通じて「自分本位の学習ペース」を「入試本番に必要なペース」に、無意識に改善することができるようになっていくでしょう。こんなふうに、受験生が授業で得た知識や学力を「入試本番の答案に着実にアウトプットする」ために、日常の生活を訓練して最適な方法を生み出す機会を「学びみらいPASS」が補助してくれるのです。
しかし、どんなにシステムが進んでも、どれほどAIが発達しても、それを使いこなすコーチがいてこその受験指導です。また、受験は人がコーチし、受験生自身がそのアドバイスを受け入れるかどうか決めるものですから、最後は受験生のみなさんの意思と行動が鍵です。

受験生の皆さんのことは河合塾のチューターが見ています。それを補助し、単に受験にとどまらず生徒が自分の人生を向上させるためにどう行動すべきかを、「学びみらいPASS」は客観的なデータで示します。ベテランの指導者だけではなく、ツールを使うことで多くの「若い指導者」が、同じように生徒にエビデンスを持った受験指導をする時代がいよいよ到来した…そんなふうにいえるのかもしれません。