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2022.6.1公開

入学時最低納入学費として620万円!?知らないでは済まされない医学部受験費用

ファイナンス管理、意思のやり取り、保健医療計画書への関心・・・。保護者がサポートすべきことと、一方でやらない方がいいことをご提示します。

「スケジュール管理」と「学費準備」のリアリティ

大学受験のためのファイナンス管理は、保護者にとって重要なマネジメントです。受験料、交通費、宿泊費、入学金や学費、奨学金の手続きなど、多岐にわたる管理は保護者でなければできないことです。国公立大が第一志望でも、併願私立大の合格を確保しておきたい場合もあるでしょうから、そのための「入学時最低納入学費」も必要です。「どこまで何をサポートするべきなのか」の一つめに、まずは「医学部受験の費用」を保護者目線で見ていきましょう。

ご家庭の計画によって、国公立大受験のみにされるか、私立大併願で合格を確保するかは違いますが、下の<表1>のサンプルは、国公立大とは別に「2021年度入試」で5つの私立大を併願するシミュレーションです。この表では、「一次試験→一次発表→二次試験→二次発表→手続〆切」の順で入試は進みます。あくまで私立大を併願される場合のサンプルとしてみてください。

<表1>

2021年度私立大入試カレンダー 2021年度私立大入試カレンダー

受験した私立大に合格できた場合、その合格確保には<表1>の「手続〆切」期日までに学費納入が必要です。多くの大学は当初の「入学時最低納入学費」は「初年全額の6〜8割程度」として二段階納入を導入していますが、いくつかの大学は「年間学費一括納入」としていますので、出願時に要項をよく読んでおくことが大切です。
いったん学費を納入した後でも、所定の期日までに入学辞退手続きすると、大学は「入学金を除く納入学費を返金」しなくてはなりません。この時、一定期間、入学許可の状態を大学に保持させたことになりますので、「在籍確保料」として入学金は返金されないことは承知しておいてください。
私立大医学部の入学金は他の学部に比べてかなり高額です。この表にある大学の場合、愛知医科大が150万円、兵庫医科大が200万円、関西医科大・近畿大・大阪医科薬科大が100万円ですが、私立大医学部の入学金は、大学によってこの3つのいずれかの額で、それより下はありません。これらの入学金は私立大の入学確保をするためには「必要経費」と考えなくてはなりませんので、この辺りの計画は保護者の大切なマネジメントです。
重要なことは、「入学時最低納入学費」は入学金だけではなく、「前期授業料等を含む所定の費用」がいったんは必要になるということです。つまり、私立大学の合格を確保するためには、いったん400〜600万円程度の納入が必要になります。また、学費納入後でも入学辞退によって「入学金を除く納入学費」を返還してもらえるとはいえ、すぐに返金されるわけではありませんから、他大学に入学先を変更する可能性がある人は、滞りなく手続きするために、もう一大学分の「入学時最低納入学費」を準備しておく必要が出てきます。

上記のスケジュールをみてみましょう。愛知医科大学に正規合格して手続きを考えた場合、入学手続き締切が2月10日ですから、兵庫医科大の2月11日の発表を見てからでは間に合いません。この時、愛知医科大に手続きすれば、「入学時最低納入学費」として620万円ほど必要です。翌日に兵庫医科大に合格したからといって、わずか1日後にそちらに手続き変更しよう…とはなりにくいかもしれませんね。
しかし、関西医科大の合格発表が2月17日にあり、少し後には大阪医科薬科大の2月22日の発表もあります。その結果によって入学先を変更するなら、大阪医科薬科大なら400万円強を「入学時最低納入学費」として3月3日の手続き締切までに納入する必要があります。先に手続きした大学の返金を待っていると間に合わない可能性がありますので、私立大の乗り換えに伴う「ダブル手続き」まで考えると、当座の手元資金としてかなりの準備が必要なことがお分かりでしょう。
国公立大志望の方でも、初年度納入費用として81万7千8百円、公立大なら90万円程度が必要です。仮に併願した私立大の合格を確保しようとすれば、国公立大の合格発表は一番早いものでも3月6日ですから、国公立大の合格発表が判明する前に私立大の手続きをするかどうか決めなければならない点には、注意が必要です。

学費の他にも、受験料のご準備も必要です。受験料は大学入学共通テストが1万8千円(3教科以上)、国公立大二次試験が1万7千円、私立大医学部の一般入試が6万円、共通テスト利用なら2万5千円〜4万円程度です。先ほどの<表1>の人が、共通テストと国公立大前期・後期をさらに出願したなら、受験料は…

6万円 × 5大学(私立) + 1万8千円(共通テスト) + 1万7千円 × 2大学(前期と後期)= 34万2千円

となります。人によっては移動のための交通費や宿泊費が別に必要なこともあるでしょう。これらの準備はどの大学を受験するかのスケジュール管理と密接に関わっていますから、受験大学の選定の段階から、保護者は積極的に関わっていく必要があるのです。
奨学金などの確保も保護者でないとできないことは多いはずです。日本学生支援機構(JASSO)の申請や予約に関すること、日本政策金融公庫や各種金融機関からの借り入れのことなど、ファイナンスに関することは保護者にしかできないといえます。

意思決定までのプロセスを補助する

「どこまで何をサポートするべきなのか」の二つめに、「お子さんとの十分な話し合い」をご提案します。ファイナンスの大きな計画は保護者主体とはいえ、それを盾にして本人に「通達」するような決め方はあまり賛成できません。受験大学の決定は、あくまで本人が主体的に決定するプロセスが大切だからです。誰しも、「自分が決めた」ことにはモチベーションが上がりますが、「決められた」ことへの対応は若干気落ちするものです。
そこで、「とにかく話をさせてあげる」ことと、「どうしたいのかに耳を傾けてあげる」ようにしたいところです。お子さんの伝え方に言葉が足りなければ、真意を聞き出すために「言葉を補ってみる」などの「大人の対応」も必要です。その上で保護者の側の事情もご説明し、お互いに納得した結論を出したいものです。その際に、基本的な受験の知識がなければ、保護者が思い込みでエビデンスのない話を押し付けることに繋がりますので、必ず入試の知識は持った上で話さなくてはなりません。
最近は予備校の保護者会に出席されない方が増えており、いささか心配です。これまでの経験では、保護者が熱心なクラスは、保護者会の出席率と合格率が比例して高く、出席率の低いクラスは往々にして合格率も低いという相関関係があるように思います。保護者会の後で列になって質問に来られる方が多い年には、「今年の合格率は高いな」と感じます。とにかく、最新のニュースに接してから保護者の方は子供と向き合うくらいの準備が必要でしょう。
また、お子さんと話すときには、「感情的になりそうな自分を抑えて」成績を客観的に把握し、落ち着いて本人と話すことに努めたいところです。「どうしたら、出来るように、なるか」を客観的に見つめ、決して「どうして、できなかった、のか」と詰問してはなりません。本人が自分のなすべきことを見つめ、それに合わせて受験大学を選定するように時間をかけてお話ししたいところです。そのためには、保護者の方が自分の「手の空いたタイミングで話す」のをやめ、「お子さんの都合」と「保護者の都合」を合わせ、お話し合いになることをおすすめします。

保護者にできる受験の補助

保護者が知識的なことで、直接受験にアドバイスできることはほとんどありません。しかし、一点だけお願いするなら、「どこまで何をサポートするべきなのか」の三つめに、「保健医療計画書をお子さんと一緒に読む」ことを推奨します。「保健医療計画書」は都道府県のホームページに掲載されています。トップページの検索窓に上記のワードを入力して検索をかければ、必ずヒットするもので、大体はpdfファイルにしたものがアップされています。
そこには各都道府県の医療に関する分析が掲載されていますので、とても参考になるものです。私立大の場合にはほとんど質問されることはありませんが、国公立大受験の場合には面接試験で「この県の医療に関することで何かご存じのことはありますか」と言う質問が頻繁にされています。それに答えるためには「保健医療計画書」を読んでいないと無理だといえます。ただし、この文書は大人が読むようにできているため、グラフなどを含めて若干難度が高めです。できれば大人の感性で読み、何が大切なことなのかをお子さんと話し合う材料にされてはどうでしょう。
それから、「どこまで何をサポートするべきなのか」の四つめに、お話し合いの際には「特殊な3大学に関して、受験をどうするのか決定する」ことをおすすめします。その3大学とは、防衛医科大学校、自治医科大学、産業医科大学です。多くの受験生はこれらの大学校と大学の知識がなく、候補から外しています。しかし、特殊な大学であり、自治医科大学と産業医科大学は私立大学ながら学費補助がある特殊な大学です。ここではあえて内容には触れませんので、興味のある方はご自身でお調べになることをおすすめします。

保護者の方におすすめしないこと

「おすすめしない」というより、やらない方がいいことが二つあります。あくまで私が個人的に考えていることなのですが、まず一つめに「出願の手続き」は保護者の方がせず、面倒でもご本人がすべきだと私は考えています。
かつては「願書を書く」という作業がありましたが、最近では「WEB入力」だけで出願は済むようになってきました。そうなりますと、かなり気軽に出願できなくもありません。近頃は出願大学が聞いていたものと違っていたり、急に増えていたりする生徒が何人かいます。尋ねてみますと、母親が出願をしたので、本人が自分がどの大学を受験する予定だったか把握していなかったという、笑い話のようなことさえあるのです。
受験は本人の志望とエネルギーの向きが一致しなくてはなりません。それがこんな状態では過去問への取り組み姿勢も危ういといえるでしょう。1点が合否を分ける医学部入試において、この程度の集中力では合格への意気込みが感じられません。自分で出願の手続きをしたという「手触り感」があってこそ、合格への執着に結びつくということができるでしょう。
やらない方がいいことの二つめは「志望理由書の代筆」です。まさかと思われる方もおられるでしょうが、意外とおられるのです。ただ、私はこの種の添削は一切しないことに決めています。本人が自分で書いたもの以外に添削する価値は全くありません。どんなに素晴らしい志望理由書を書いてこられたとしても、これを手元に持った面接官が質問するわけですから、一体その受験生はなんと答えるのだろうと思ってしまいます。
稚拙なものを少しずつでも育てることに意味があるのですが、そういう保護者の方は「勉強に専念させるために私が書く」と言う理屈をお持ちのようです。

保護者は、あくまでマネージャーであって、黒子の役割でなくてはなりません。どんなに役者が「大根」でも、自分が舞台に出てきて代わりに演じたり、小道具を振り回したりしてはいけないのです。ましてや「大根だ」などといってしまっては、マネージャーの力が問われてしまいます。「大根」だと思っていた役者もいずれ少しずつ成長し、一端の役がつくようになるものです。金銭的援助もスケジュール管理も、全て保護者がやっていたとしても、それに気づかないようにさせて、まるで「自分がやった」と本人に勘違いさせてこそ、プロの黒子と言うものです。
いずれ彼らも親になるでしょう。その時、はじめて親の苦労を知るはずです。その時まで「言わぬが華」として、そっとしておいてあげる器量の大きさが、保護者には求められているのではないでしょうか。