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2021.11.4公開

面接試験で自分の「よさ」を伝える技術とは?

自分のことを信じて、熱意を持って、もっとロックに伝えよう。面接試験での大切な心構えは、「話す」準備ではなく「伝える」準備です。

「よさ」を引き出す質問の難しさ

「自分のよさ」といわれると、どうしても「自分の長所」という捉え方をします。医学部の面接試験では「あなたの長所は何」的な質問がありますから、どうしてもそういう視点で物事を考えてしまうのは仕方ありません。
これまでいろんな方の面接試験の補助をしてきましたが、日本人はもともと、「自分の長所」をあからさまに訴えることが苦手な人が多いように思います。多くの方が受けてきた「日本人的な美徳教育」として、控えめなことや目立ちすぎないことが古くから求められてきたからでしょうか。
面接練習で「自分のよさ」を尋ねられると、なぜか大概の人は答えを準備をしていないのです。その場で皆さんは答えに窮するようで、たとえ何とか答えても、非常に抽象的なところで話が途切れることが多いようです。「明るいことです」とか、「活動的です」などの言葉に続いて、さらにその中身を具体的に示す説明をスムーズに出すことができません。

ある受験生との面接練習でのやりとりをご紹介しましょう。

「あなたの長所は何ですか?」
「私の長所は明るいことです。」

出だしはこれでも構いませんが、この言葉に何が続いて語られるか、面接官としては待ってあげなくてはなりません。ところが、彼はニコニコして「どうだ」という顔をして黙っています。…どうも話し終えたようですね。彼自身はこれでよいと思っているに違いありませんが、これではまるで伝わりません。
実際、私たちが面接練習をしてもこれとよく似たことが頻繁にあります。しかし、頻繁にこういうことがあるなら、それはある意味「尋ね方」が悪いということも言えるのです。そこで、後追いの質問を投げてみました。

「なるほど。で…、それはどういうことに繋がりますか。」

「えっと…私がより明るく振る舞うことで、周りのみんなをより明るくすることができます。」

これでは謎が謎を呼ぶばかりです。「私が明るいとみんなは明るくなれる」、だから「私がより明るければ、みんなはより明るくなる」…、「私がさらにより一層明るくなれば、みんなは…」。一体、どこまで行くのやら。こちらとしては、新しい展開が見えるような回答を期待したつもりだったのに、これでは同じ返事の繰り返しです。答えの規模が大きくなっても、永遠に何の展開も起こらないじゃないの…というのが面接官の心境でしょう。

こうなってきますと、やはり質問の仕方をもう少し工夫してあげないと、受験生の「よさ」を聞き出すことはできないように思います。面接の時間を無駄にしないようにするために、面接官も色々と工夫が必要です。面接試験の本当の現場でそういう「質問の仕方の反省」があったかどうかはわかりませんが、実際、「あなたの長所は何ですか」的な質問方法は、ここ数年で非常に減りました。

最近では、こんな質問形式に「長所」や「よさ」の尋ね方が変化しています。

「あなたのどんなところが、医療で生かされると思いますか?」
「あなたが医師として向いている資質は、どんなことですか?」

これらの質問は、すでに明確に方向づけられた中で受験生の「よさ」を尋ねようとしていることがわかります。これなら見当違いに抽象的な回答を出して、「どうだ」という顔をされなくても済みそうです。自分の「よさ」が、どんな場面やどんな人との間で発揮されるかを聞くことができるに違いありません。

「よさ」とは長所だけとは限らない

私が個人的にどう考えているかということよりも、大学がどのようなことを尋ねたいのか少し手がかりを探ってみましょう。
さて、ここでは試しに、過去に富山大学が出願者に提出させた「自己紹介書」のコンテンツを参照してみます。この書類は、出願した人が学科試験を受ける1日目に提出し、二日目の面接試験の際に参考にすることになっているものです。しかも、その書類の上側5分の1ほどのスペースに書類記述の前提条件がかなり詳しく書かれており、大学が求めている方向から記述内容がずれないように周到に誘導されています。これが大変よくできているのです。
具体的な前提条件の内容は省略しますが、要は長い説明文の中で「学生時代に自主学習にしっかり取り組む」ことができる人かどうかを面接で見るので、そのために以下の項目を書けといっておられるのです。
大きく4項目の記述が求められていますが、そのうち「よさ」と関わりそうなものを2つほど見てみましょう。まず一つ目は、「これまでに自分で計画して実行できたこと」を述べさせる項目です。なるほど「計画と実行」ということなら、必ずしも人と比べて上だとか下だとかいう必要がありませんから、ある程度は誰にでも書けそうですね。それに、大小いろいろあるでしょうが、どんな人にでも何かしら達成できたことはあるに違いありません。「よさ」をこういう方向から書くこともできるのです。
次に2つ目として、「自分の特徴や自分をほめたいこと」を述べさせる項目にも注目したいところです。大切なことは「特長」とは書かれていないことです。「特徴」なのです。つまり、ここで述べさせたいことは、自分を際立たせる「他人と違う何か」ということです。優れているかどうかではなく「ユニーク」かどうかを述べてもよいといっているのです。それと共に「自分をほめたいこと」、つまり「自分なりには評価したい」的な何かを述べてもよいと言っています。
ある生徒は、高校時代に廃部寸前だったクラブを、友人達と立て直したことを書きました。試合に出る費用もないし技術も足りない、指導者も自分たちで探さなければならない…当然、誇れる戦績は出せませんでした。しかし、彼女のその経験は「自分の特徴」であり、「自分をほめたいこと」だったに違いありません。潰れかけたクラブを再生させた功績は世間には見えないけれど、まさにインターハイ優勝に匹敵する、素晴らしい内容だと私は思います。

自分以外が知っている自分の「よさ」

その人の「よさ」を尋ねる質問として、こんなものもあります。

「友人はあなたのことを、どんな人だといっていますか?」

この質問は、一見ただの「ひととなりを尋ねる質問」のように見えます。しかし、私が見るところでは、この質問はその人の「よさ」を尋ねている質問と同義です。私はこの質問をアレンジして、面接練習の際にこんな質問をよくしています。その流れを見てください。

「友人は多い方ですか?」
「はい、それなりにはいると思います。」
「では、その中であなたと最も親しい方を、具体的にお一人思い浮かべてください。」
「はい。」
「その方があなたの隣に立っていると仮定しましょう…。その方があなたの紹介を私にしようとしています。さて、その方はあなたのことをどんな人だと私に紹介すると思いますか?」

これまでこの質問をした受験生たちは、すべての質問の中で、最も真剣に考えているように私には見えました。彼らに共通していることは、友人は自分の「よさ」を全力で説明してくれると初めから考えていることです。本当の友人なら、こういう場面で初対面の人には「いいこと」を伝えようとしてくれるはずですから。
今、目の前の空間に立っていると思われる「仮想友人」は、一生懸命に考えてくれているようです。不思議なもので、こう尋ねられると多くの人は意外と躊躇なく、自分を客観視することが可能になるようなのです。その時だけ、自分で自分のことを話しているという現実を、まるで忘れているようです。友人とは、本人がいなくても大変な勇気をくれる存在なのだと、こういう時に考えさせられますね。
考え方によっては、この質問方法は自分の「よさ」を考える最も良い方法だといえそうです。自分の友人の目線を借りれば自分を客観的に見ることができ、冷静になれるように思います。

適切な言葉で「よさ」を「伝える」

どんな人でも、急に尋ねられると表現が上手くいかないものです。自分のことだからわかっている…という思い込みで油断しないように、伝えるための準備をしましょう。大切な心構えは、「話す」準備ではなく「伝える」準備だということです。経験上受験生の皆さんに自分の「よさ」を「伝える」方法のアドバイスするとしたら、以下の3点です。

1.自分の「よさ」は「これ」という結論を手短かつ明確に述べる
2.「これ」を述べた後で、少し補足を加えてビジュアル化する
3.説明は20秒で終えるつもりで準備する

上記の1〜3で述べられるものを3つ準備しておきましょう。

これだけ?と思われる方が多いのではないでしょうか。色々なご意見はあるのでしょうが、私はこれだけで十分だと思います。

ある大学が面接試験の質問で次のように尋ねています。

「あなたの自己PRをどうぞ。1分差し上げますので、お願いします。」

自分の優れている点やユニークな点、それとセットして実績や表彰、周りの人への効果など、「よさ」をビジュアル化した成果を、できるだけ簡略なセリフで20秒にまとめれば、わずか1分で効果的に3つのポイントを伝えられます。自己PRには十分でしょう。
「3分で」と言われれば、20秒だったものを1分かけて3つお伝えすることができます。これなら、もっと情報量を増すことができるでしょう。準備したものを長くすることはさほど難しくありませんが、逆に短くすることは非常に困難です。ですから、準備の基準は1つあたり20秒というところです。

「私のPRポイントは3つあります。」
「一つめは…です。…ということができるようになりました。」
「二つめは…」
「三つめは…」
「以上3つが自分のPRポイントです。」

というように、3点述べてみましょう。これで相手にちゃんと「伝わる」かどうか、気になるところですね。では、検証してみましょう。スマートフォンの録音機能をオンにして、自分の「話し方」がしっかりした「伝え方」になっているかどうか、自分の声を判定してみます。

「セリフの棒読みじゃん」

これなら、アウトです。話してはいるけれと、ソウルがないから伝わらないのです。自分のことを信じて、伝える熱意を持ち、もっとロックに何度もトライしてみましょう。がんばれ!

「ねぇ、聞いてもらえますか? 私ね、こんなPRポイントがあるんですよ。」

そんな雰囲気に聞こえるようになったら、本物です。内容だけではなく、自分の持っている熱意のようなものが感じられればよしとしましょう。相手に自分の「よさ」をわかってほしいというエネルギーが溢れている状態…。これが「話す」を「伝える」に変えるはずです。