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2021.3.5公開

自分の心のコントロールが必要なのは「本番直前」なのです。

受験日当日までに完成させるのは決して学力だけではなく、自分自身の気持ちの持ち方も同時でなければなりません。

●心の持ち方が背中に出る

予備校の校舎スタッフは試験の日には、よく大学の正門前まで応援に行きます。応援といっても最後の激励をしに行くだけなのですが、受験会場に向かう自分のクラスの生徒に最後に直接激励できることは、非常に嬉しいことです。
残念ながら今年はCOVID19の影響で応援は自粛しますが、例年の場面を思い出すと校門のところで受験会場に向かう生徒を見ていると、ここが最もピュアに「その人」のタイプが出るように思います。

ある大学の受験日に、Aくんはとても気軽な登場の仕方で現れました。まるで、今日が自分にとって特別に重要な日ではないようです。
「おや、山口さん来ておられましたか! じゃあ、ちょっと行ってきます。」
彼はまるで、コンビニに買い物に行くような感じです。別に気負うこともなく、颯爽と登場し会場に入っていくのです。校門に入る前に彼の携帯に電話がかかって来ました。別の大学に受験に行っている友人からです。
「山口さん、Nくんから電話がかかってきましたよ…おう、お前も頑張れよ、俺もちょっといってくるわ。じゃあな。」
彼はもともと日常の場面でも「口に出して自分を鼓舞する」タイプでしたから、この日もそれの延長に見えます。しかし、日常の行動は決して完成した彼の姿ではなく、今日のための演習といったところでしょう。受験日当日までに完成させるのは決して学力だけではなく、自分自身の気持ちの持ち方も同時でなければなりません。ようやくこの日になって、彼はきっと本気で間に合ったのでしょう。もちろん、彼の答案はきっといつも通りの出来に違いありません。
あぁそうだ、一つだけ彼に言っておかなければなりませんね。
「試験中は携帯の電源、切りなさいよ。」

生徒によっては彼のように明るく会場に向かう人は多いのですが、医学部志望の生徒は比較的物静かな人が多いようです。正門のところで待っているとBさんが来ました。いつもならちょっと小憎たらしい一言でも言いそうなのに、今日はやけに小さく見えます。応援しようと声をかけますと、少し躊躇しながら私のところにやってきました。
おやっ?何だか様子が変です。私に向かって話をしているのに、顔をあげようとしません。まっすぐ目を見ようとしないのです。明らかに雰囲気に飲まれてしまっている様子です。少し時間をとって話をしようとしましたが、彼女は私を振り切って会場に向かってしまいました。会場に吸い込まれていく彼女の背中が、何だかとても小さく見えます…。
とうとう今日が来た…そんなところでしょう。そういう日に限って、何となく朝に問題集なんかを開くと、やけに解けないように見える問題が当たってしまうことがあります。心情で言えば「大変だ、自分にコントロールできないことがまだある」…そんなところでしょう。自分にコントロールできないことがあるなど、いつまでたっても当たり前のことですよね。しかし、いつもなら気にしないようなそんなちょっとしたことが、不安が大きくなる受験日には、やけに拡大されて「いつもの自分」を見失いがちです。
結局、彼女は自分の実力を試験で発揮することができず、第一志望の大学には不合格になってしまったのです。後から尋ねると、あの時は「どうしてこんな問題で引っかかるんだろうというくらい緊張してしまっていて、自分が自分じゃないようだった」といっています。

●ダメな時ほど胸を張れ

みなさんが緊張するのはどんなタイミングですか?高校の部活で試合に出た経験のある人なんかは分かるでしょうが、最も緊張するのは試合の本番よりも、試合の「本番直前」のことの方が多いのではないですか?
つまり、自分の心のコントロールが必要なのは「本番直前」なのです。試合の直前に、日頃の練習不足を嘆いて腕立て伏せをいきなりやっても体を鍛えることはできませんが、メンタルな調整は5分もあればベストに持っていけるはずです。入試では、自分が「できた時の記憶」をイメージして気持ちを冷静に保つことの方が、試験直前に英単語を一語詰め込むことより、むしろ効果は高いはずです。
「いつもの自分」を保つために、自分にコントロールできるものを心の中でできるだけ大きくするイメージをもってみましょう。自分を落ち着かせる「いつものこと」を「儀式」としてやってみることなどは効果的です。ちょっと前にラグビーでこういうのを「ルーティン」と紹介されて有名になりましたね。常に安定した「儀式」で自分のメンタルを整えることができれば、「いつもの自分」を保てるはずです。そうやって一つひとつ、本番前に「儀式」をしていくと、心の中に「一つのひっかかり」ができても、「十個のコントロールできること」が、小さな不安を帳消しにしてくれるものです。
もちろん「儀式」は、常にポジティブな気持ちを心がけましょう。「本番ではできなくなる」というネガティブな自分のイメージを呼び出してきて、今日は本番だ…だからできるはずない日だ、きっと頭が真っ白になってろくにできなくなるはずだ…などやってしまえば、「いつもの自分」を保つのではなく、「いつもではない自分」を呼び出す儀式をわざわざやっているようなものです。
自分への自信を100%にできなくても6割なり7割でよしとして、「最後の仕上げ」に進みます。「最後の仕上げ」に「自分にできることは全てやった」と胸を張れば、その心意気が残りの隙間を埋めてくれるでしょう。人間はいつも「何かが足りない気持ち」を何処かにもっていますから、この「最後の仕上げ」が大切なのです。先程のAくんとBさんの試験当日の違いは、まさにその「最後の仕上げ」にあったといえるのです。
心の円グラフが「できること」で満たされた状態を思い描く…でも少しもの足りないなと思ったら、一つ大きな深呼吸で「最後の仕上げ」を加えて胸を張れば、「できること」のボリュームをさらに追加できるはず…さぁ、始めましょう。すでに「いつもの自分」がそこにいます。

●日常の自分からネガティブなものを遠ざける

「いつもの自分」を呼び出すことで心を安定させるためには、呼び出す「いつもの自分」が「一番よい自分イメージ」でなくてはならないでしょう。そのためにも「いつもの自分」からは自分の邪魔をするネガティブなイメージを遠ざけておきたいものです。
「私」のまわりには、決して悪気はないのでしょうが、「私」にネガティブなイメージを与える人がいます。自己都合なタイミングで話しかけてきて「私」の集中力を削ぐ人、失敗談ばかりして常にネガティブに「私」を引きずる人、他人の批判ばかりして自己反省から「私」を遠ざける人、言い訳ばかりして前向きな反省から「私」を遠ざける人、不必要に自分と行動を共にして「私」のタイミングを狂わせる人…。人も「環境」のうちですから、「私」の側からそういう「環境」は避けて、呼び出すのにふさわしい「いつもの自分」をつくるように心がけたいものです。
さらに、人以外にも自分の生活に影響のあるものは多少の制限があると、より効果的です。スマホの着信をすぐに見るクセ、ゲームやYouTube、テレビなど時間を削ぐコンテンツへの熱中など、集中力や時間資源の無駄使いに影響するものを制限していけば、より「日常の自分」は呼び出すにふさわしい「一番よい自分イメージ」に近づくでしょう。
とはいえ、自分を遮る人たちの一人ひとりに断るのも面倒ですし、様々なコンテンツの誘惑から自分を遠ざけることにも気力が要ります。そこで、多くの受験生はそういうものから自分を遠ざけるために自習室にいくものです。

最近、COVID19の影響で「オンライン自習室」なるものが登場しました。空間を共有すると感染の危険があるので、雰囲気だけを演出する新しい手法です。「オンライン自習室」は画面中に学習中の他の人が映っているだけで、それぞれの人は自宅で学習しているだけです。しかし、それを「自習室」と呼んでいるのです。普通の自習室は物理的に囲った場所で学習することに意義を持っているのですが、「オンライン自習室」の登場で、私たちが「自習室」で確保しようとしていることが本当な何だったのかに気づかされます。受験生が自習室に求めているのは、実は集中して学習できる「物理的な箱」だけなのではなく、本番で呼び出せる「一番よい自分イメージ」の確立なのではないでしょうか。
そこでの日常はイメージトレーニングにもなっているはずです。集中して学習している「一番よい自分イメージ」→「いつもの自分」…これを貯金しておくのが「自習室」ということです。本番前の「儀式」でそんな自分の姿を瞬時に呼び出せれば、試験の時にはきっと常に自信が持てるでしょう。受験生が本番に臨む時、心の中で「何かが足りない気持ち」があっても、ラストに胸を張れば「いつもの自分」→「一番よい自分イメージ」が沸き起こり、その自分が常に最大限に力を発揮させてくれるに違いありません。