2025年度 医学部志望動向(第2回全統共通テスト模試/記述模試より) 知っ得!医学部合格の処方箋 知っていますか?~知識編~ | 知っ得!医学部合格の処方箋 | 医の知の森<近畿地区医学科進学情報センター>
日々を焦らず、1日1日の大切な積み重ねを通じて、目標大の合格に向けて自らの学力を構築してください。
検証すると、大きな特徴がありました。それは、国公立大志望者が減少し、私立大志望者が増加しているという傾向です。
模試から医学部/医学科の志望動向を見る
いよいよ2024年度も秋を迎え、そろそろ2025年の医学部/医学科の入試動向が気になる頃になりました。これは予備校スタッフの我々だけでなく、多くの受験生にとっても最大の関心事に違いありません。今回は現役・高卒生トータル30万人以上が受験し、質・量ともに河合塾最大である「第2回全統共通テスト模試」と、そのドッキング判定を行う「第2回全統記述模試」の2つの集計結果を分析しつつ、次年度の医学部/医学科の入試動向を予想します。
2025年度医学部入試のアウトライン
この十数年、18歳の現役生人口が減少の一途にあることから、一般的には「大学受験の倍率は緩和されつつある」…と思われています。ところが2020年の「新型コロナ」発生以来、医師の働きが注目され、医学部以外の多くの学部志望者が前年比を割り込んでいる一方、医学部志望者のみが「増加の一途」を辿ってきました。
しかし、2025年度は入試そのものに大きな「変化」があり、医学科受験生の出願傾向にも影響している様子です。その「変化」とは「新課程での入試」です。特に「大学入学共通テスト」の変化は受験生にとって大きいといえるでしょう。
「センター試験」が2021年度に「大学入学共通テスト」に変わって以降、問題傾向は「解答するために十分な考察を必要とする」傾向に変化しています。受験生は「センター試験」の時代でさえ「制限時間」いっぱいで解いていたにも関わらず、「共通テスト」になってさらに「考察時間」のハードルが加わったことで、高得点獲得がかなり難しくなっているのが現状です。
2025年度入試では、前年までのこの状態に「新課程入試」の「変化」が加わり、いわば「リニューアル版共通テスト」になります。「共通テスト」は国公立大受験生には必須ですから、「共通テスト」が「リニューアル」されれば国公立大の志望動向に影響を与えることは明らかです。
2025年度の「共通テスト」が「新課程」化される際、「数学」「地歴・公民」の範囲変更が行われる上、「国語」では新しく現代文の大問が加わり、新科目の「情報」が増加します。これまでの5教科7科目の900点満点は6教科8科目の1,000点満点となりますから、受験生は以前にも増して、より広範な学力構築が求められるようになりました。
2025年度「共通テスト」の時間割を見ると、数学②と国語は試験時間が10分延長されています。特に新科目「情報」が導入される2日目は科目が新設された分だけ拘束時間が一段と長くなり、試験会場で8時間30分も過ごさなければなりません。
「共通テスト」は要項や時間割こそ「センター試験」に似た実施方法を踏襲しているとはいえ、内容的にはかなり変更されており、過去の指導経験や先輩の学習経験をなぞるだけでは通用しない時代になりつつあるのです。
そんな変化があっても、国公立大医学部/医学科の受験では「共通テスト」の高得点獲得は必須です。多くの国公立大医学部/医学科は二段階選抜を実施していますから、「共通テスト」の得点が一定以上なければ、受験そのものができない…という特徴があります。例えば神戸大を受験するためには、出願者のうち定員の3倍(定員の3倍=276人)以内に入る…という条件をクリアしなくてはならず、大阪大を受験するなら定員の3倍(定員の3倍=270人)以内、かつ700点以上(1,000点満点)…という二つの条件をクリアする必要があります。これをクリアしなければ、出願しても第一段階選抜で不合格になり、受験票が手元に来ません。そうなれば丸一年かけて受験準備した志望大学なのに、「受験することさえできない」ことになってしまうのです。
国公立大の医学部/医学科出願の絶対条件が「共通テストの高得点獲得」であることを考えると、受験生の試験当日の忍耐力はもちろんのこと、彼らが同テストに向けて準備する日々の緊張度や心理的負担感は、以前にも増して大きくなっているといわざるをえません。
2025年度入試では私立大の動向に注意
先日集計された河合塾の「第2回全統共通テスト模試」と「第2回全統記述模試」を検証すると、大きな特徴がありました。それは、国公立大志望者が減少し、私立大志望者が増加しているという傾向です。
国公立大医学科志望者を「全統共通テスト模試」で見ると、前期試験の前年比は99%(国公立大前期全体では101%)ですから医学科志望者はやや減少傾向です。「全統記述模試」でも同じく98%(国公立大前期全体では100%)となっていましたから、国公立大全体の志望者は前年並みの100%を維持しているにも関わらず、医学科志望者が減少傾向であることがわかります。
一方、私立大の志望者を「記述模試」で見ると、一般選抜の前年比は105%(私立大一般選抜全体では104%)ですから、私立大の志望者そのものが増加している上に、医学科志望者はそれよりも増加傾向を示していることがわかります。これは、共通テストの高得点が取りにくくなったことや、次年度の新課程入試への先行き不安などがあって、昨年まで国公立大志望だったレベルの受験生が早い段階で「私立大専願」にシフトしているためだと思われます。
次に、実際にどのあたりの成績の受験生が国公立大志望では減少し、逆にどの成績帯の受験生が私立大志望者で増加しているかを以下のグラフ1とグラフ2で確認してみましょう。
<グラフ1>
<グラフ1>は「第2回全統記述模試」で「国公立大医学科(前期)志望者」の学力分布を、昨年の志望者と比較したものです。一見してわかるとおり、頂点の左右…具体的には「偏差値57.5」と「偏差値62.5」の2箇所で減少しています。特に「偏差値62.5」は国公立大の地方医学科のランクに相当する成績ですから、このあたりの層がいなくなっていることがわかります。誤解を恐れずにいうなら、「不安定な共通テスト頼みの国公立大入試より安定した私立大入試」「地方の国公立大より都会の私立大」を選択している…ということなのでしょう。
<グラフ2>
<グラフ2>は同じ模試で「私立大医学科(一般選抜)志望者」の学力分布を、昨年の志望者と比較したものです。成績下位の分布も増加していますが、分布頂点よりも右側の高成績側のボリュームもある程度上昇していることがわかります。こう見ると、世間一般では「18歳人口の減少=私立大入試が緩和される」と捉える傾向は医学科では必ずしも正解ではなく、2025年度入試において、こと医学科入試に関しては油断することができない…といえるでしょう。
以下の<グラフ3>は私立大医学科志望者の「出身地区別志望者構成」を調査したものです。これを見れば、どの地域で私立大医学科(一般選抜)を志望しているかがわかります。中部地区を含み、概ね首都圏から東側の地域で昨年よりもグラフが伸びている様子です。中部地区の私立大は愛知医科大と藤田医科大の2大学のみですが、多くの私立大が首都圏の近くに立地していることから東日本地区を中心に私立大志望者が増加するのは自然なことだといえます。
<グラフ3>
次年度の志望動向に影響が出そうな「入試変更点」
毎年、医学部/医学科は入試に変更点が相当あります。ただ、受験生の志望動向に影響を与えそうなものは数点に過ぎません。では、2025年度でみた場合、果たしてどのようなものがあるでしょうか。ここでは、指導者側の目線からみて、受験生の流れに影響を与えそうなものをピックアップしておきます。
<定員減で注意が必要な大学>
1.秋田大 前期の定員減:55名→45名
2.佐賀大 後期の定員減:10名→ 4名
3.東北医科薬科大A方式 定員減:30名→10名
4.帝京大一般枠 定員減:86名→76名
5.日本大N方式全学Ⅰ期 定員減:90名→80名
国公立大では、秋田大は二次試験が「英数2科目のみ」で理科を課さず、比較的ボーダーが低めなので志望者が多い大学でしたが、大幅に定員が減少することで倍率の上昇を警戒され、出願に影響すると思われます。また、後期試験の出願先としてよく候補に挙がる佐賀大ですが、こちらも定員が減少していますので、倍率を気にする受験生にとっては出願を躊躇する可能性が高くなりました。佐賀大の後期は、毎年出願者に課していた「課題作文」がなくなることで、出願の負担が軽くなるとはいえ、定員減の影響はそれより大きいと思われます。
私立大では東北医科薬科大のA方式の定員が、今年新設された「総合型選抜」に20名移行されました。結果的に一般選抜の側の定員が減少することになりましたので、私立大の併願パターンに影響が出そうです。また、帝京大や日本大の定員減少も大きく、同様に併願パターンに一定の影響が出る可能性があります。その他にも定員が減少する大学はありますが、1名から数名減少する程度なので志望動向への影響はさほどないと思われます。
<第一段階選抜について>
今年度はいくつかの大学で見直しがありましたが、満点が900点から1,000点になることによって比率が見直されている大学が大半なので、志望動向に影響しそうな大きな変更はあまりありません。ただし、旭川医科大は前期・後期とも第一段階選抜を5倍から4倍に引き上げましたので、受験生の心理としては出願しにくくなるでしょう。
<科目・その他の変更>
1.弘前大 入試科目変更:総合問題・面接→英語・数学・面接
2.弘前大 配点変更:共通テスト1,000点・二次500点→共通テスト1,050・二次900点
3.名古屋大 二次試験科目変更:英語・数学・理科2科目(昨年課していた国語を廃止)
4.和歌山県立医科大:出願時の「自己推薦書」を廃止
5.佐賀大後期 :出願者に課していた課題論文を廃止
「入試科目」と「配点」の変更は最も志望動向に影響を与える変化です。特に弘前大は入試科目と配点の両方を同時に変更しましたので、受験生には「キャラクター変更」のように映るでしょうし、過去問対策もままならない状況では、医学科志望者からは敬遠される可能性が高いといえます。また、名古屋大、和歌山県立医科大、佐賀大(後期)の変更は受験生の負担を軽減するものですから、単純には出願しやすくなるでしょう。ただし、佐賀大の後期は定員が減少していますので、そちらへの反応も同時に受けることになります。
模試での志望者数の増減
では最後に模試での志望者数の増減を見ておきましょう。先ほどご紹介した通り、国公立大は個々に見ても志望者が減少している大学が多くなっています。前年に志望者に増減があった大学が今年度に反対の傾向になっても隔年の志望者数の上下程度といえますから、さほど注視しなくてもよいでしょう。ただし、昨年から2カ年連続で志望者増となった大学や反対に2カ年連続で志望者減となった大学は注目する必要があります。
国公立大前期の全49大学の中で志望者が2カ年連続で増加しているのは、旭川医科大、信州大、浜松医科大、滋賀医科大、和歌山県立医科大、琉球大です。いずれも地区内でやや低めのボーダーを狙って安全志向で集中しているように思われます。
一方、2カ年連続で減少しているのは、弘前大、神戸大、山口大です。弘前大は科目変更・配点変更による流出、神戸大は難度が高い割に第一段階選抜が3倍と高めで安全志向による流出、山口大は九州方面からの志望者の減少による縮小と思われます。その他残りの大学はせいぜい前年並み、もしくは昨年以下の志望者数という状況です。
なお、国公立大は「共通テスト」の得点に縛られますので、平均点が上下すれば、今の志望動向が変化する可能性があります。大学によっては出願者が異様に減少したり、増加したりする可能性がありますので、本番実施後の河合塾の動向分析を注視しておいてください。
対して私立大では、増加した大学をカウントするより減少している大学をカウントした方が早いといえます。志望者が減少しているのは慶應大、国際医療福祉大、日本医科大、日本大、順天堂大など、比較的志望者の学力レベルが高い大学ほど、敬遠されてやや志望者減となっている様子が伺えます。その他、残りの全大学の志望者は増加傾向で、志望者の学力を見る限り前年なみのレベルを維持している様子です。
次年度の予想ボーダー得点率と二次ランク偏差値
以下に国公立大に関しては次年度の予想ボーダーラインと二次ランクのマトリクスをご提示しておきます。これは、それぞれの大学に五分五分で勝負(合格可能性50%)する場合の学力を示したものです。
<表1>
同様、私立大の二次ランク偏差値の一覧を以下にお示しします。これも国公立大と同様、五分五分で勝負をかけるために必要な学力を示しています。
<表2>
終わりに
2025年は新課程入試の初年です。この原稿を書いている時点で私の目の前に「共通テストまであと83日」という掲示があります。私立大の受験もこれとほぼ似た日程でスタートしますから、自然と受験生の緊張感が高まってくることでしょう。皆さんがこれをお読みになっている時点では「何日前」になっているでしょうか。
日々を焦らず、1日1日の大切な積み重ねを通じて、目標大の合格に向けて自らの学力を構築してください。諦めたらそこで試合終了です。医学科受験生なら、上記の表の学力に見合わない自分であっても自分の全力を尽くす姿勢で受験と向きあってほしいものです。