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2024.6.13公開

2024年度共通テストでの国公立大医学部合格者の得点を検証してみましょう。

日常の生活習慣の積み重ねで、スピードと学力を1点でもそれに近づける…これが医学部入試に臨む人の「夏の心構え」でなくてはならないのです。

大学入学共通テストの平均点推移

毎年5月はその年の入試結果検証の月になっており、ようやく様々なデータが揃います。果たして2024年度の医学科入試はどうだったのでしょうか。今回は特に、国公立大医学部受験に必須の「大学入学共通テスト」の得点に注目してみましょう。まずはセンター試験時代の後半から今年度の共通テストまでの平均点(総合点)推移を検証しながら、今年の状況を検証してみることにします。

センター試験~共通テスト:総合での平均得点率 ~2020年:センター試験、2021~:共通テスト センター試験~共通テスト:総合での平均得点率 ~2020年:センター試験、2021~:共通テスト

上の<グラフ1>は近年の「センター試験(2004〜2020年まで)」時代から「共通テスト(2021〜2024年)」時代まで、全科目を合計した平均得点率(河合塾推定)を並べたものです。年度によって平均点が上下していますが、センター試験の終盤(2020年)あたりは大体「得点率62%程度」でした。
2021年から切り替わった「大学入学共通テスト」は今年でまだ4年めです。2022年に平均点が大きく下降して不安定さを露呈しましたが、それ以外の年の共通テスト平均得点率はセンター試験時代とほぼ同様の62%程度に収まっています。

大学入学共通テストは不安定なもの

そもそも「共通テスト」は「英語の外部試験」導入や、数学と国語の「記述題」を導入する計画でしたが、最終的にすべて断念した経緯があります。結果的に新しい試みを全て取り去り、「センター試験」の本流である「マークシート方式」のみが引き継がれた形です。しかも試験時間の枠組みはほとんど変えないままでしたから、「改革の新味」は「思考力・判断力・表現力」を問うような出題になっているかどうかのみだったといえるでしょう。
実施前は平均点を50%程度にするとさえ宣言していましたが、初実施以来の平均点状況から見ると、むしろ世間の混乱を避けるためにセンター試験時代の平均点を意識しているように思えます。さらに、実施された4回中2回で理社の平均点格差修正の「科目間得点調整」がなされており、問題難度の安定に欠けるイメージが払拭されません。次年度は「新課程入試」の初実施になりますから、またも問題難度を不安定にする要素を抱え込むことになるといえるでしょう。
次年度の新課程入試での共通テストの変更点は、大きくは次のようなものです。

(1)数学の出題範囲の変更と数学②の解答時間延長
(2)国語の現代文の大問新設と解答時間延長
(3)地歴公民科目の範囲と組み合わせ変更
(4)新科目である「情報」の実施

なお、2025年は新課程入試元年です。入試科目に変更があるだけではなく、新科目の「情報」が加わることで、満点値もこれまでの900点から1,000点に変わります。また、高卒生の「経過措置」が複雑に絡み合い、どんなに単純に考えても次年度平均点は不安定な結末を予感させます。

受験生は全国の平均点状況によって自分の取った得点の相対価値が変わります。特に医学部受験生なら自分の得点の相対的な位置によって出願先大学を変更する可能性があります。全国にある医学部への出願変更が連鎖的におこれば、それぞれの大学の難度が微妙に影響を受けることになってしまいますから、医学部受験生は気が気でないでしょう。

現場で生徒たちを指導する立場から言わせてもらえば、共通テストが「難度が安定したいい問題」になると期待することは、未来永劫やめた方がいいと思います。むしろ「毎年何かが変」くらいが普通だ、と割り切った方がいいでしょう。受験生が受験年度の巡り合わせによる「運/不運」を嘆きたくなる気持ちはわからなくもありませんが、私としてはもはやそんなものは捨て去った「悟りの境地」です。
敢えていわせてもらえば、共通テストの出題難度は自分の力でコントロールできないのですから、その年々に少しでも得点を獲得できるように、受験生が「自分の学力を構築する」という現実に一歩踏み出ることのみが「受験を安定化させる唯一の方法」なのです。そう思って腹を括りましょう。そこから少しでも早く一歩踏み出すことができれば、アドバンテージを得られるというものです。

2024年度共通テストでの国公立大医学部合格者の得点を検証する

共通テストは2025年度から総得点の満点値が変わるとはいえ、前年の合格者の状況はある程度参考になるものです。では実際にどれくらいの成績で2024年度は医学部に合格できたのか…。今回は2024年の合格者と不合格者の「得点率」を対比させて検証してみましょう。

2024医学科合格者/不合格者と共通テスト得点率 2024医学科合格者/不合格者と共通テスト得点率

上記の<グラフ2>は2024年度の「全国の国公立大医学部(医学科)」の前期試験の「合格者」と「不合格者」を「積み重ねグラフ」にしたものです。グラフは得点率1%ごと、ピンクが合格者、ブルーが不合格者です。グラフの色の割合に注目すると…。ちょうど81%のところでグラフの色がほぼ半々になっていますので、全国の医学科を合計して大雑把に合格可能性を見ると、概ね得点率81%がボーダーラインになっていた…ということができるでしょう。
ちなみに、河合塾では「合格可能性50%」に「ボーダーライン」を設定します。そこはちょうど合格者数と不合格者数が半分ずつになるところですね。ということは、国公立大医学部に前期試験で「五分の勝負」を挑むには、共通テストで81%の得点率が必要だったことがわかる….ということになります。
もちろん、これが平均値であることを考えれば、これより下の得点率で五分になる大学は数校あるのですが、せいぜい2%程度下がる大学が数校あるかどうか…というところです。次年度もほぼこれと同様のボーダーが想定されますから、ここはやはり次年度の共通テストでも81%を目指して成果を出すように学習に臨んでほしいところです。

夏の訓練で本番通用する自分づくりを

さて、季節はいよいよ夏に差し掛かります。共通テストで高得点を目指すなら、夏休みには1日10時間学習して基本事項を身につけると同時に、それを60分なり70分なりの規定時間内で処理するスピードの訓練が必要です。どんなに知識を持っていても、時間内に解答を作成できないなら価値がないことは誰もが理解できるはずです。

共通テストの本番では1日8時間以上会場に「缶詰」で試験に臨むのですから、1日の流れは夏の丸1日の学習に似ています。その中でいかに最大パフォーマンスをマークシートに流し込むか…。そして、その得点率が81%に到達するかどうかが受験生の運命を分けるでしょう。日常の生活習慣の積み重ねで、スピードと学力を1点でもそれに近づける…これが医学部入試に臨む人の「夏の心構え」でなくてはならないのです。