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2024.3.1公開

ー医学部合格を期して出願できるためにー

医学部合格を期して出願できるために、必要な事とは? データから読み解いてみましょう

国公立大選抜試験と二段階選抜

国公立大の出願が2月2日までに終了し、2月25・26日には前期試験が実施されました。あとは合否発表です。もし前期試験が不合格なら、受験生は後期試験に臨む…というのが今後のスケジュールです。さて、すでにご承知の方が多いことではありますが、念のために基本的な国公立大入試の仕組みを確認しておきましょう。
国公立大の医学科は全国に50大学あり、2月25・26日の前期試験実施大学は49大学ありますが、3月12日の後期試験実施大学は16大学しかありません。基本的に後期試験に定員を設けている大学は前期試験にも定員があることが普通です。ただし、山梨大のように例外的に後期試験にしか定員を設けていない特殊な大学もあります。また、国公立大の試験日程には「中期試験」という日程が別にありますが、この日程には医学科の試験はありません。したがって、国公立大で医学科志望の方が出願できるのは、前期試験と後期試験にそれぞれ1大学ずつ、つまり実質的に出願できるのは最大2大学まで…ということになります。
蛇足的に確認しておきますが、前期試験に合格すると手続き締め切り日が後期試験の合格発表より早いため、両方の合格を手元に持って「どちらかを選択」する…ことはできません。つまり、前期試験で合格すれば手続きをすることになり、実質的に前期試験を第一志望、後期試験を予備日程にせざるを得ない…ということですね。

ところで、国公立大の医学科志望者にまず必要なのは、「二段階選抜」の「第一段階選抜」クリアです。「二段階選抜」とは、大学独自試験のみで合否を出すのではなく、その前の一段めで「受験票を発行する対象者」を絞り込み(第一段階選抜)、二段めで「受験票を発行して受験させた人を合否判定」する選抜方式のことです。いわば「受験者の人数を限定してから大学の試験をする」方法です。
大学を受験するところまでいけなければ本当の合否に辿り着けませんから、まずは受験票を手元に持てるかどうかが受験生として最低限の課題です。他の学部ではあまり目立ちませんが、医学科は倍率が高いため、どうしても「第一段階選抜不合格」の人が目立ちます。因みに、国公立大医学科の前期・後期それぞれの試験で二段階選抜を実施することを予告していない大学はありません。

第一段階選抜の方法

二段階選抜の「第一段階選抜」の実施方法にはいくつかのパターンがあります。最も一般的なものは、募集人員(定員)の何倍かまでで受験票発行人数を限定する方法です。例えば、岡山大学は「定員の3.0倍」、筑波大は「定員の2.5倍」、弘前大は「定員の8.0倍」などです。国公立大といえどもここには統一感がなく、大学の目論見が反映されています。
第一段階選抜ラインを得点で明確に示すケースもあります。例えば、鳥取大や名古屋大前期は「600点/900点満点」、大阪公立大は「650点/900点満点」などです。また、この2つを併用するケースもあり、例えば京都大は「定員の3.0倍かつ630点以上/900点満点」などの方法をとっています。
第一段階選抜にかかってしまえば受験票が来ないわけですから、受験そのものに至らない段階で「不合格」になります。もちろん、別の大学に出願しなおすわけにいきませんから、その日程の試験はそれで終了になってしまいます。では、今年(2024年度)の出願状況がどうなっているか見ていきましょう。

<表1>

2022~2024国公立大 出願者数一覧 2022~2024国公立大 出願者数一覧

2022~2024国公立大 出願者数一覧 2022~2024国公立大 出願者数一覧

上記の表は今年までの3年間の医学科出願者数の推移です。一番右端に今年度の第一段階選抜の実施目安となる大学発表を掲載しています。すると、今年の医学科入試では、非常に多くの大学がこれを実施する目安ラインに出願者数が到達してしまっていることがわかります。
前期試験を実施する国公立大が49大学あるとお伝えしました。この表を見ると、29大学が「定員への指定倍率」をこえていますので、すでに第一段階選抜ラインに達しています。また、得点指定で第一段階選抜を実施する大学が7大学ありますから、合計すれば36大学/49大学(約73%)が第一段階選抜の実施規定ラインに達していることになります。後期試験に至っては、16大学/16大学(100%)でなんと全ての大学が第一段階選抜実施ラインに達しています。
定員に対して非常に厳しく第一段階選抜を実施する大学では、例えば旭川医科大は「予告倍率」5.0倍のところ実際の出願者が5.6倍となりましたので、24名を不合格にしています。また、出願者が特定の大学に集中すると不合格者が思いの外発生することがあります。今年で見ると香川大は94名が第一段階選抜不合格、愛媛大に至っては同じく239名、長崎大も207名が「受験票を手に持つこともできずに不合格」になっています。
中には不思議な現象があります。徳島大は倍率(定員の5.0倍)の他に得点(600点/900点満点)で第一段階選抜を実施することが要項の「予告」に書かれているのですが、倍率が5.0倍を超えたことはここ数年ないにも関わらず、毎年「第一段階選抜」が実施されています。つまり、600/900点満点を切っているのに出願している人が必ずいるということになります。彼らは要項を読んでいないのか、はたまた自己採点をミスして自分では「得点が600点以上ある」と思い込んで出願した上で不合格になったかのどちらかでしょうね。

一方、大学によっては第一段階選抜を多少緩和することがあります。例えば滋賀医科大は第一段階選抜の「予告倍率」は定員の4.0倍ですが、実際の倍率は4.5倍になりました。ただし、大学は「実施しない」と発表しました。弘前大も「予告倍率」が8.0倍のところ、実際の倍率は8.1倍ですが実施を見送りました。岡山大も「予告倍率」3.0倍に対して実際の倍率は3.1倍となりましたが、実施していません。
医学部のような選抜では同点の人がある程度おられますから、数人なら実施は緩和するのが慣例のように思いますが、それを見越して出願予測することは不可能です。

共通テスト…「出願できる得点」と「合格できる得点」

国公立大受験のための受験票を手に持つためには、第一段階選抜を突破するための「共通テストの得点」がなければなりません。毎年ボーダー会議で医学科のボーダー設定している身から見れば、第一段階選抜をクリアするには、ギリギリ最低でも得点率66%(600点/900点満点)ないと医学部への出願は諦めた方が良いです。できればせめて得点率70%(630点/900点満点)というところが最低得点の目安でしょう。ただし、これは受験票が手元に来る大学を探すことができるかどうか…というレベルのお話ですから、この得点で良いと推奨しているわけではありません。第一段階選抜にかかるかどうかを気にしている程度の得点では、もしも受験票を持つことができても合格することはほぼ不可能なことはいうまでもありませんね。

では、どれくらいの得点なら医学部合格を期して出願できるでしょうか…目安は概ね得点率78%(大体700点/900点満点)というところでしょう。ただ、これは最低線ですから、できれば80%(720点/900点満点)は必要だと考えてほしいところです。
2025年度は「新課程ではじめての共通テスト」です。どうしても新設される「情報」科目や、「国語」のフレーム変更、「数学」の範囲や時間変更など「特別なこと」に目が行きがちですが、目安となる目標得点が大きく変わることはないでしょう。これまでも、そしてこれからも大切なことは、限りある試験時間の中で「時間の資源をいかに得点に結びつけるか」ということです。

「取れた得点で出願できる大学を探す」という発想をやめ、自分の出願したい大学に向けて「どれくらいの得点を取ればいいのか」と計画し、学習を進めてください。日常の学習習慣をいかにつけていくかで医学科受験生の運命は決まります。
目指すは「合格できる得点」です。皆さんの「学力」と「集中力」を日常で訓練し、真正面から国公立大合格を目指しましょう。