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2023.8.1更新

「総合型/学校推薦型選抜」に求められるもの

いよいよ入試本番のスタート

夏期休暇を迎え、今年度もいよいよ後半に向けてスタートします。受験生のみなさんの心構えはいかがでしょうか。夏の学習計画は予定どおりお進みでしょうか。
9月は「総合型選抜」の出願がスタートする月です。さらに11月に「学校推薦型選抜」の出願が開始されますから、入試本番がまさに始まろうとしています。これら二つの選抜方式は、2月下旬に行われる一般選抜よりも早い入試ですね。

「総合型選抜」はかつて「AO(アドミッション・オフィス)入試」、「学校推薦型選抜」は単に「推薦入試」と呼ばれていました。昔の呼び名の方が何やら軽く感じるのは気のせいでしょうか…。実際、私の経験では、確かに「AO入試」や「推薦入試」のご相談をされる受験生や保護者は、「学力」を軽く考えておられる傾向がありました。入試の呼び名のせいで、どこか「人物重視」的なイメージがあって、「学力」は多少低くても何とかならないか、一般選抜と併用することでワンチャンス増やすことができるのではないか…という感覚をお持ちだったようです。

ところが、「両選抜方式」は出願条件に、私立大なら5段階評定で低くても3.5以上、国公立大なら4.0以上…多くは4.3以上を課しています。ということは、本当に学力が低い生徒は出願の条件そのものに届かなくなってしまいますから、やはり真面目な方向けの入試ということができるでしょう。
さて、名称が変わったことによって、その傾向はどのようになっているのでしょうか。詳細を見ていきましょう。

「総合型/学校推薦型選抜」と学力試験

名称が「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」(長いので、以下「両選抜方式」と呼びます)では、国公立大・私立大とも「提出物の審査」「面接試験」「小論文」などのややアナログな能力を審査されることが普通です。単純な学科試験ではわからない人物的評価をすることに重きをおいていることは間違いありません。何しろ、医学科における「両選抜方式」は、特定の目的を達成するための人材を募集していることが前提にありますから、卒後の勤務を理解しているかを確かめることが必要ですし、それに見合う覚悟を持って出願してきたかどうかは確認しなくてはならないことは、いうまでもありません。
しかし、医学部は入学後のハードな知識習得が控えていますから、アナログな判定だけで学力試験なしで入学させることは医学部入試に相応しくない…というのが大学の考えです。だからこそ、私立大の場合には「大学が実施する学力テスト」が前述のアナログな能力審査の上に課されますし、国公立大の場合には「大学入学共通テスト」をそれに代替させて、学力を計っているのです。
出願時に評定平均値を条件とし、それに加えて学力試験も審査対象になることで、日常の継続的な真面目さ、アナログな人物評価、一定以上の学力…を総合的に審査して合否を決定しているといえます。

国公立大入試の「総合型選抜」と「学校推薦型選抜」

「両選抜方式」は大学によって日程がずれています。一見、複数大学の受験ができるのではないかと思われがちですですが、出願はそれらの中から1大学のみであることは承知しておいてください。医学部の「両選抜方式」では「合格=入学必須」が原則です。私立大学の一部では併願を認め、一定の条件で「併願大学への進学」を認めていますが、少なくとも、昨年の全大学の入試要項を私が読んだ限り、国公立大学ではすべて不可能なようです。「合格した場合、入学することを確約できること」…は出願資格(条件)となっており、合格した場合は辞退(して他大学に入学)するわけにはいきません。
つまり、たとえ共通テストで想定以上の高得点が取れて「一般選抜」で別の大学の合格見込みがあっても、「両選抜方式」の「合格をキープ」したまま他の大学を受験したり、他大学に進みたいからといって、「両選抜方式」の「入学を辞退」したりすることはできないのです。両選抜方式では、もともと出願時に「入学を確約」する「承諾書」提出を義務付けていることが大半です。受験生が考えがちな「合格キープ」的な使い方は、両選抜方式では出願の段階で未然に防ぐ手立てが講じられているのです。

「一般選抜」と「総合型選抜/学校推薦型型選抜」の合格者の成績

学力の測定では、特に国公立大の場合はほとんどの大学が試験を独自に作成することなく、共通テストをそれに代替して活用しているところは注目したいところです。そうなってきますと、共通テストの得点がどれくらいなら合格が出るか、それは一般選抜で受験するよりも難しいのか、やさしいのかに関心が集まることになるでしょう。

では、下の<表1>をご覧ください。これは2022年の共通テストでの入試結果データです。

「一般選抜」と「総合型選抜/学校推薦型型選抜」の合格者の成績 「一般選抜」と「総合型選抜/学校推薦型型選抜」の合格者の成績

表をご説明しましょう。まず「合」の縦列の数値が合格者を表し、左側に表示されている「得点率」に対応しています。また、「否」の縦列は不合格者を表し、同じように左側にある「得点率」に対応しています。
また、表が2つ並んでいますね。これは、左側の表が「一般選抜」での入試結果、右側の表が「学校推薦型選抜」での入試結果を表しています。もしかすると、この二つの表の対比を掲載するのは、全国的に初めてのことかもしれません。
さて、「合」「否」の左右の人数を見比べて、ほぼ同数になる場所が「ボーダーライン」に相当します。つまり、五分五分勝負をかけることができるポイントがボーダーラインだということです。それ以下でも合格者がいる場合がありますが、得点率が低ければやはり合格に到達する人は大きく減少します。
こうやってみると、山形大の場合には「一般選抜」「学校推薦型選抜」とも共通テストが74%がボーダーラインになっており、どちらの方がやさしいとはいえないことがわかります(青の網掛け)。また、「学校推薦型選抜」では、これより下には合格者がおらず、かなりシビアに合否が分かれています。
一方、福井大、三重大、徳島大も並べてみますと、「一般選抜」よりも「学校推薦型選抜」の方がややボーダーラインは低くなっています(青の網掛け)。つまり、そちらの方が多少は合格に必要な得点が低くなっているということができるでしょう。

しかし、これをもって「学校推薦型選抜」は「一般選抜」よりもやさしい…ということは早計です。先ほどご紹介したとおり、「両選抜方式」ではアナログな能力審査が行われるからです。提出した「志望理由書」などの書類審査に加えて、面接試験は重要な比重を占めています。しかも、面接試験も多種多様で、徳島大をみると集団討論で自分の力をアウトプットする力が問われます。また、三重大の場合には加えて小論文を作成する力が必要です。
もちろん、出願者のレベルは毎年変わりますから、年によっては他の大学も山形大のように、どちらで出願してもボーダーラインに変化がないようなことはありえます。そこまでを総合的に考えると、「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」は「一般選抜」に比べて簡単…とは言い切れませんね。
ちなみに、このデータは共通テストが過去最低の平均点を記録した年のボーダーラインなので、かなり低くなっていることには注意してください。参考までに、一般選抜の2024年度の予想ボーダーラインはもっと上に黄色網掛けで示しました。

さて、この後に「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」で医学科に出願を考えている方は、大学が求めていることをよく理解して試験に臨んでください。大学が求めている人物像に、自分が合致することが必要なのです。共通テストでは、「間違わない」ではなく、「集中して正解する」が正解。「学力」を磨いて勝負をかけます。面接試験では「よく見せよう」とするのではなく、「自分の中の資源をうまく引き出す」が正解。自分の中にある「人間力」を磨いて勝負をかけましょう。

あとしばらく…。勝負の季節がいよいよ近づきます。