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2023.7.7更新

いよいよ、それぞれの受験生にとっての「夏」がスタートします。

成績を見れば「足りないことだらけ」の自分であっても、その自分をしっかり見つめ、どんな行動を取ることが自分にとって必要なのかよく考え、学習計画を立ててからスタートしたいものです。

三者面談の季節に向けて

いよいよ7月を迎えました。7月は新学年の4月から5月に行われた模試結果が出てくる頃です。1学期のはじめの学力が明らかになるこの時期、多くの高校や予備校では「夏期三者面談」が行われます。ちょうど1学期の学習(授業)が一段落する頃でもありますから、学習の手応えや進路の方向を確認する意味でも、面談をするのに最適な時期だといえるでしょう。
さて、この時期に三者面談が行われるのには、もう一つの理由があります。それは、どの予備校も6月に「入試研究会」を実施しているため、「大学の入試動向」を担任の先生が入手して学習し、次年度に向けて生徒を指導する知識を蓄えるのに6月いっぱいかかるためです。特に医学科の入試難度や志望動向は毎年大きく変化します。ですから、面談の際に前年の経験だけを元に指導することは非常に危険ですから、少しでも最新情報を学んでおくことが、受験学年の担任には必要なのです。

そこで今回は7月の「三者面談」に備えて、保護者も受験生も2024年度入試を迎える前に前年の「2023年度最新医学科入試動向」を知っていただき、「面談される側」の知識を蓄えていただくことにいたしましょう。

志望者人数の増減

まずは単純に、入試全体での志願者人数の対前年比を見てみましょう。これによって、昨年に比較して志願者人数の増減傾向が見えてきます。まずは国公立大の志願者増減を学部系統別に、指数グラフでみてみましょう。

2023vs2022 2022vs2021国公立大前期 系統別志願者数前年比のグラフ 2023vs2022 2022vs2021国公立大前期 系統別志願者数前年比のグラフ

上記のグラフでは、一番右端に「国公立大前期全体」の2年分の「対前年比」グラフが水色で示されています。「2022 vs 2021」では対前年比100%、「2023 vs 2022」では対前年比99%ですから、2カ年で国公立大前期試験の出願者は2年連続でほぼ横ばい状態…18歳人口が減少したといわれているにも関わらず、志願者は減少しているようにはみえません。

その中で医学科志願者は「2022 vs 2021」が対前年比102%、「2023 vs 2022」では対前年比106%ですから、他の学部系統を差し置いて志願者が増加しているということになります。このグラフを見れば、医学科のみではなく、歯学科や薬学科など資格志向の医療系で志願者増加率が高いことがわかります。

次に私立大をみてみましょう。下に同じように志願者の学部系統別グラフを2カ年表示します。ただしこのグラフは共通テスト利用型は含まず、一般選抜型のみの集計をグラフにしました。

2023vs2022 2022vs2021 私立大一般入試 系統別志願者数前年比のグラフ 2023vs2022 2022vs2021 私立大一般入試 系統別志願者数前年比のグラフ

まずは私立大全体の状況はどうでしょうか。先ほどの国公立大のグラフと同じく右端の私立大の「一般型選抜全体」をみると、「2022 vs 2021」は対前年比99%、「2023 vs 2022」では対前年比95%です。私立大全体でみると「一般選抜の志願者」は昨年こそ微減程度で済みましたが、今年はさらに減少している…ということになります。
そのような全体状況の中で医学科を見ると、「2022 vs 2021」は対前年比99%で私立大の全体と同調して微減、「2023 vs 2022」では対前年比101%ですから、今年は私大出願者全体が減少している一方で、医学科は前年並みの志願者数が継続しています。私立大医学科は国公立大受験の方が「共通テスト利用方式」で出願することが多く、その人数を加算すれば医学科の「2023 vs 2022」の対前年比は105%で大きく増加したようにみえます。しかし、私立大受験者の本命は一般選抜ですから、それのみを2カ年比較すれば、私立大医学部を第一志望としている志願者数はここ2年で変化はないと考えてよさそうです。

国公立大学入試を左右する「大学入学共通テスト」

2020年まで実施されていた「大学入試センター試験」は、後半には平均点が安定しており、900点満点に対してほぼ62%程度の平均点になっていました。ところが、これが「大学入学共通テスト」になって以来、大きく乱高下する傾向があります。ここで河合塾が推定した「総合得点(900点満点での平均点)」で共通テストの平均点推移を見ていきましょう。

共通テストは実施初年の2021年こそ、平均点が571点/900点満点(得点率:63%)でしたから、総合点では前年までのレベルを保っていたように見えます。ところが、理科は科目別の平均点格差が大きくなりすぎたために「得点調整」を余儀なくされました。
次の実施2年目の2022年は数学が異様な難しさとなり、総合点では平均点が507点/900点満点(得点率:56%)となりました。これは1995年に始まったセンター試験~共通テストの全ての回を通じて、過去最低の平均点です。この年度は、医学科志願者を出願大学選定で苦しめた「黒歴史」として記憶されるでしょう。
さて、ようやく3年目を迎えた今年、2023年の共通テストの総合平均点は、530点/900点満点(得点率:60%)となり、やや上昇しました。ところが、またもや理科の科目別の平均点格差が大きくなり、「得点調整」が実施されています。共通テストは開始から3年のうち、2年で「得点調整」を実施しており、入試としては極めて安定感に欠けるイメージが避けられません。
2023年の数学難度は前年よりマシにはなりましたが、生徒たちはやはりそれほど得点できていません。特にセンター試験時代には「理系生は満点が当たり前」くらいに鍛えるように指導していた数学は、もはやそれが不可能ではないのかと私は思いはじめています。

そこで…、ややドラスティックな言い方に聞こえるかもしれませんが、今の医学部志望者には「理系生なら地歴と国語をしっかりやりなさい」と伝えています。
受験生は英語・数学・理科は国公立大二次試験や私立大試験に向けて必ず学習しますが、共通テストで数学が満点にしにくい現状では、文系科目でしっかり得点を稼ぐことで、トータルで同じ結果を目指すようにしたいところです。結果オーライに聞こえるでしょうが、医学科のボーダーラインまで到達させれば、「入試に負ける」ことは防げます。

つまり、勝とうとするのではなく、負けないようにする…。「英語・数学・理科」の「得点を伸ばす」ことは勝つために必要です。しかしその一方で「国語・地歴/公民」の「失点を防ぐ」ことが「共通テストで負けないための秘策」です。

医学科合格者の学力とライバルの数

最後に大学の「難度の高さ」と「志願者数」の「多い/少ない」の関係性を検証しておきましょう。ここでは国公立大の前期入試をサンプルに見ているのですが、概ね私立大の「ランクの高さ」と「志願者数の関係」でも同様の傾向がありますので、あくまで例として示します。下のグラフを参照してください。

2023国公立大医学科前期入試 募集人員と志願者数(ボーダー得点率別)のグラフ 2023国公立大医学科前期入試 募集人員と志願者数(ボーダー得点率別)のグラフ

これは「2023年度 国公立大医学科前期入試」での、「共通テストのボーダー得点率別」の「募集人員」と「志願者数」の関係を示したものです。

見てお分かりの通り、上位大学ほど「募集人員」に対して「志願者数」が少なくなっている現象が見られます。ところが、ほんの2%程度「ボーダー得点率」が下がるだけで、あっという間に「志願者数」が上昇し倍率の波に飲まれてしまうことが見て取れます。入試時の大学での混雑状況が想像できるでしょう。
とはいえ、受験生はそう簡単に上位大学に出願できるようにはなりません。そこには、共通テストの得点だけではない様々な要素が複雑に絡み合っているからです。「問題の難度」「受験科目の多い/少ない」「英作文のある/なし」「面接試験が複雑化どうか」「志望理由書の有無」、そして当然ながら「本人の大学へのこだわり」などが挙げられるでしょう。…ということは、多くの人はこの「多人数の波」に揉まれることを覚悟しなくてはならないでしょう。
それに、グラフを見る上で忘れてはならないのは、この人数はあくまで「志願者数」であって、「受験者数」ではないということです。出願すれば「志願者」になることはできますが、受験票が来なくて「受験者」になれなかった人はかなりおられます。つまり、大学が第一段階選抜を実施することで、受験票が手元に届かない人が「志願者数」には多数含まれています。
国公立大を目指す受験生に必要な得点は…大雑把にみて、第一段階選抜をクリアするだけでもせめて共通テストで「600点/900点満点」以上。しかし、これでは合格の見込みはありません。合格を期して出願するにはあと100点…せめて共通テストで「700点/900点満点」以上を目指してこの夏の学習を進めていただきたいところです。
成績を見れば「足りないことだらけ」の自分であっても、その自分をしっかり見つめ、どんな行動を取ることが自分にとって必要なのかよく考え、学習計画を立ててからスタートしたいものです。「出来る友人のマネをする自分」ではなく、「本当の自分」に合った計画を立てていきましょう。
「勝つため」に「英語・数学・理科」、「負けないため」に「国語・地歴/公民」です。学習計画は、自分にとって最適であることが重要です。ただし、1日の学習は10時間までと定めて計画は立てましょう。皆さんはどう時間を配分して計画を立てるでしょうか。自分にとって最適な計画を整えてから学習はスタートしてください。

今の段階の模試で医学部を書いても「E判定」だった人でも、基本の積み上げで本当に自分の理解していないことをチェックして夏の学習に臨めば、結果はついてきます。あとは結果を信じる忍耐力あるのみ、いよいよ、それぞれの受験生にとっての「夏」がスタートします。