2023年大学入学共通テストの概況ー2023年共通テスト速報と国公立大予想ボーダーラインー 知っ得!医学部合格の処方箋 知っていますか?~知識編~ | 知っ得!医学部合格の処方箋 | 医の知の森<近畿地区医学科進学情報センター>
いよいよ国公立大出願。「どうしたら・できるだろうか」と考え、最大限の集中力を発揮しよう!
C判定は「勝負のポイント」、今から一ヶ月後に自分の学力を完成させることを想定できればD判定でも「勝負していい」・・・出願を左右する情報は細やかに多数存在します。
2023年度大学入学共通テストの概況
2023年1月14日・15日の両日、今年の「大学入学共通テスト」が実施されました。1990年にスタートした「大学入試センター試験」を引き継いだ「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」は、今回が3年めの実施でした。今年の受験に臨まれた皆様、まずはお疲れ様でした。
2023年度の「共通テスト」の平均点を、前年までと見比べてみましょう。これまでの「センター試験」の時代を含めて並べてみたものが、下の<表1>です。
<表1>
共通テストがスタートした2021年度は平均点がやや高めに出ましたが、2年めの2022年度は数学ⅠA・ⅡBの難度が高く、総合得点がセンター試験〜共通テストの全史上で最低の平均点となったことは多くの方が記憶されていることでしょう。さて、3年めの今年実施された「2023年度共通テスト」では、逆に数学は2科目とも平均点が非常に高くなり、総合平均点も高めになりました。ただし、理科は2021年度と同様科目間格差が大きくなり、またもや「得点調整」が実施されています。
共通テストがはじまって3年、「センター試験」時代に比べて「共通テスト」の「問題の考察」を求める問題作成方針は、試験時間とのバランスによって平均点に大きな揺らぎが出る…ということができるでしょう。今後継続する試験としては、難度にはやや「不安定さ」を感じる結果です。
この種の問題では「超高得点」を取ることは難しいといえます。実際、高得点の受験生は減少しており、中間レベルの得点に人が集まる傾向が見て取れます。さて、ここからはいよいよ出願大学の検討です。受験生の皆さんは落ち着いた出願判断が求められるでしょう。
医学科の出願予定動向は昨年から今年にかけてどうなったか
河合塾が共通テスト翌日に実施した「共通テストリサーチ」の状況を見てみましょう。今年度の国公立大前期試験の「学部系統別」出願予定者前年比の詳細は下記の<グラフ1>をご覧ください。
<グラフ1>
学部系統別出願予定者は、前年模試の段階では現役生の「医学科」と「薬学部」への出願予定者が増加する傾向が顕著でした。今回、共通テストの平均点が高めになったため、リサーチ後の動向はその傾向がそのまま継続しています。今回のリサーチでの国公立大前期日程の志望者は全体で対前年比99%にも関わらず、医学科志望者の対前年比は111%、薬学部出願予定者は107%まで増加しています。医学科出願熱の高さは模試の段階から変化なく、本番でも維持されているといえるでしょう。
医学科志望者に関してみると、今回の共通テストの得点が高めになったことで、多くの大学では出願予定者が増加しています。医学科志願者全体の共通テスト平均点が昨年より上昇すれば、当然ながら、それぞれの大学のボーダーラインはそれを加味してやや上昇する想定で設定しています。中には突出した出願予定者増を示した大学もありますが、今後出願予定者が他大学に流出していく可能性がありますから、以下の概況をよくお読みいただき、出願について熟考されることをお勧めします。
また、今年度は昨年に引き続き医学科志望の高卒生は減少しており、比較的現役生の割合が高くなっていることは出願大学検討時に考慮しておきたいところです。高卒生が減少すれば、二次試験の高学力保持者の減少につながり、地方国公立大を中心とした出願では二次試験での逆転合格につながることがあるでしょう。様々な状況を分析し、受験生はどの大学に出願するかの見極めが非常に重要です。受験生の皆さんは、河合塾のチューターや高校の先生方によくご相談の上、慎重に出願大学を決定してください。
2023年の医学科ボーダーラインについて
今回の「共通テストリサーチ」のボーダーライン設定は、1年の中で最も気を使います。模試と違って今回の設定は受験生の出願に直結するため、非常に繊細な感覚が必要です。また、医学科は第一段階選抜を実施する大学が多く、しかもここ数年はこれを引き上げる動きがあるため、この得点予想には特に気を使います。第一段階選抜の倍率に変更があれば、単純に前年と同じ設定にはできませんので、周辺大学の状況を見比べながら一つひとつ再検討する必要があるからです。今年の平均点の上昇により、ほとんどの大学で第一段階選抜を実施すると思われますので、出願には細心の注意が必要です。
ボーダーラインの設定でいえば、「共通テスト」の時代になり、医学科といえどもすべてを「難しい」の一言で片付けることはではなくなりました。大学によってはボーダーラインの上下差がかなり出ています。また、大学独自試験(二次試験)の傾向は大学によってかなり違いますから、多くの方のアドバイスを得て、これまで想定していなかった大学も視野に入れ、現実に即した出願に切り替えていくことが、合格への決め手になるでしょう。
以下の「河合塾 KeiーNet」のホームページに、今回の共通テストリサーチでの、全国の国公立大医学科の予想ボーダーと二次ランクが掲載されていますので、参考にしてください。
なお、河合塾のボーダーラインなどの判定基準は、以下のようになっています。
①「濃厚ライン」・・・・・・合格可能性80%の得点率ライン
②「ボーダーライン」・・・・合格可能性50%の得点率
③「注意ライン」・・・・・・合格可能性20%の得点率ライン
ちなみに、WEBの評価システムである「バンザイシステム」を使用しますと、判定のアルファベットは以下のようになります。
①「濃厚ライン」以上 ・・・・「A」
①と②の間 ・・・・「B」
②「ボーダーライン前後」・・・・「C」
②と③の間 ・・・・「D」
③「注意ライン」未満 ・・・・「E」
昨年は共通テスト平均点が下降したことにより、医学科志願者といえども全体的に得点状況は下降しました。昨年はそれを反映して各大学のボーダー得点率は低めに設定されましたが、2023年度共通テストでは全体の平均点が上昇したため、ボーダーラインも見直しています。例えば、東京大学は全国で最も高いボーダー得点率設定で92%、次点の京都大学でも89%、多くの地方拠点大学がそれに続きます。
80%以下をボーダーと設定した大学もいくらかあり、全国の最下限は78%としました。詳細は上記のホームページを参照してください。
河合塾のホームページ上で表示される、上記のWEBのシステムに表示される判定の基準について、基本的な考え方に触れておきましょう。Cの判定になった方はボーダー得点率の上下にいるわけですから、基本的に「勝負のポイント」です。また、Dの位置にいる方は「注意ラインの上」にいるわけですから、「逆転狙いの勝負」となります。今から一ヶ月後に受験する時、それなりに自分の学力を完成させることを想定できれば、Dの人でも「勝負していい」でしょう。
共通テストが終了して1週間以上経てば、多くの受験生は周りの人たちの得点状況を知って落ち着きが出て、出願に意欲的になってくるはずです。医学科出願は全国の大学を対象に検討し、落ち着いて着実に出願先を決定することが大切です。その際、大学独自試験がどのようなレベルの問題なのかは、高校の先生方や指導される方によくご相談ください。単科医科大学は数理の問題難度が高いことが多いですし、総合大学の医学科であっても、問題の一部を医学科のみ別の問題に変更して出題しているような大学は多数あります。必ず過去問を確認して出願先大学を決定することが大切です。
また、 大学によっては志望理由書が必要なことがあります。志望理由書は必ず先生方に添削を受けてから出願するようにしてください。参考までに志望理由書が必要な大学の一覧を以下に示します。 これらの大学に出願する予定の方は、できるだけ早い日程で志望理由書を作成し、添削を受けられるようにスケジューリングすることをおすすめします。
<表2>
いよいよ国公立大出願です。皆さんの得点を、より有効に活かすための「出願大学選び」はもちろん大切ですが、大学独自試験を突破するための「地道な学習」はより大切な基本中の基本です。「共通テストでもっと得点できていたら…」と後知恵で考える方は多いでしょう。しかし、ここは気持ちを切り替えて次へ進むための行動が必要な時です。
ここからは同じ時間を過ごしても、集中力が勝負です。国公立大医学科の大学独自試験(二次試験)では、全科目を合計すると答案に6時間以上向かうことになります。日頃カフェで学習したり、人のいるリビングで学習したり、学習中にペンを手元で回したりする癖のある人は、集中力の欠けるその一つひとつの無意識な慣習や行動が、自分を合格から遠ざけていることを真剣に考えて欲しいところです。医学部受験では、たった1点に15人〜20人くらいがひしめいています。口癖で「うっかり5点間違った」などという人は、そのミスで自分の前に100人の人が挟まってしまうとは想像していないに違いありません。
まだまだ勝負は続きます。受験生はご自身の力をより伸ばし、合格に向けての一歩を着実にするため、次に向けて「どうしたら・できるだろうか」と考え、最大限の集中力を発揮してほしいものです。