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2023.1.5公開

前時代の「得意科目で苦手科目をカバーする」自分本位の方法はもう通用しない

共通テストの1点の価値は「センター試験」時代よりも高くなっています。6割程度の平均点を推移していた時代へのノスタルジーは捨て置きましょう。

大学入学共通テストの平均点をどう考えるか

いよいよ2023年度の「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」がはじまります。前身の「大学入試センター試験(以下、センター試験)」は1990年にスタートして以来、長らく受験の世界では大きな役割を果たしてきましたが、2021年より新たに「共通テスト」が役割を引き継ぎ、ようやく3年めを迎えようとしています。この2つの試験は、英語以外の大問構成がほぼ引き継がれていますし、試験時間も大きくは変わっていません。また「共通テスト」は導入された初年の平均点が比較的高かったことにより、単純に「名前が変わった」程度に受け取っている人もおられる様子で、未だにセンター試験の過去問で対応しようなどと「新時代の入試」を直視しない人がいることを、私はいささか心配もしています。
「センター試験」が終盤にさしかかる2020年までの数年間、同試験の総合平均点は大体62%程度のところを推移しており(河合塾推定)、世間のイメージとしては「センター試験は6割強の平均点になる」ということが、何となく浸透していました。これは特に約束されたことではないのですが、「社会通念上の常識的な感覚」といったところです。その後、2021年に「共通テスト」初年を迎えましたが、ほぼ同等の平均点となっていましたから、受験生は「大学入学共通テストも同じようなもの」とたかを括った感覚を持ち続けてしまったように私は思います。

しかし、私から見れば、この「共通テスト」初年の2021年の平均点が高かったことが不幸だったように思います。本来、「共通テスト」の問題は「解くための考察を十分に求められる」はずでしたから、そう容易く得点が取れない構造のはずでした。本番前の試作問題の段階でも「平均点が5割になるように作成する」といっておられたのですが、いざ本番になってみると平均点は63%を超え、予想以上に高い平均点になってしまったのです。よくあることですが、初年は手探りからスタートしたので、問題作成に多少の手加減があったのでしょう…。
ところが、多くの方がご承知の通り「共通テスト」は2年目の2022年にいきなり平均点が56%程度にダウンして2年めの受験生たちを驚かせることになりましたが、これは問題構造上当然のことだったといえます。「共通テスト」の目指したものを考えれば当然そうなる…といえるはずです(多少数学は難しすぎましたが…)。大切なのはここから後の考え方です。講演などに私が赴くとき、「2023年の共通テストは平均点が上がるでしょうか」というご質問をよく受けます。これは、少し前の時代の平均点62%程度を推移していた時代へのノスタルジーを持ち続けている人が、自分の受ける年に「点が取りやすくなるように難度調整があるといいのに」という願望から尋ねておられる様子です。下がれば次は上がる、上がれば次は下がるというような感覚は、平均点を6割強に調整して作成していると考えられていた「センター試験」時代のイメージからのご質問でしょうね。

河合塾が自前で模試を作成していることはご存知ですね。「全統共通テスト模試」や「全統プレ共通テスト模試」が「共通テスト」対応の模試にあたります。当然ながら、問題作成している先生方は「共通テスト」の傾向に合わせて作成されます。それらの「共通テスト」を前提に作成した模試を見る限り、以前にセンター試験を前提として作成していた「全統マーク模試」よりも、平均点は何度やっても大幅に低く出るようになりました。つまり、何回作成していただいても、「共通テスト」を真似る限りは平均点が高いテストにはもう戻れないということです。このあたりのことは、先月の記事中にも少し触れています。

それだけ「共通テスト」は得点が取りにくくなっていますから、1点の価値は「センター試験」時代よりも高くなっています。「センター試験」の過去問を自分でやっていれば大丈夫だろうという人たちは、「共通テスト」が「センター試験」と傾向が違うものだという体感が足らないのでしょう。何せ本物の過去問はたった2回分しかありませんから、予備校の講習を受講したり、予備校が作成した教材を学習したりしない限り、「共通テスト」の本来的な構造に対応しようという真剣さが足りなくなるのは無理もありません。

共通テストのボーダーラインと合格者の平均像

共通テストの平均点が下がってきますと、当然ながら大学のボーダーラインも全体的に下がらざるを得ません。医学科といえどもそれは例外ではなく、次第に下げて設定されることになってきています。しかし、このあたりの感覚が非常に繊細で、指導する方は特にご苦労されているようです。ちなみに、「ボーダーライン」とは「共通テスト」において「この得点で受験すれば合格可能性が50%の得点率」のことです。「合格確実」ラインではありませんので、ご注意いただきたいところです。

2023年のボーダーライン予想は、先月掲載の記事「2023年の医学科入試予想ー河合塾の最大母集団模試から見た医学科入試の予想ー」をご覧いただくと一覧表があります。
今回は、医学科に2022年入試で「合格した人」に焦点を当てて、「共通テスト」の平均得点率がどれくらいだったのか、大学ごと、科目ごとの状況をみてみましょう。下に3つに分けて全国国公立大学のグラフを示し、解説してみます。

<グラフ1>

2022年医学科入試合格者の共通テスト平均得点率グラフ 2022年医学科入試合格者の共通テスト平均得点率グラフ

<グラフ2>

2022年医学科入試合格者の共通テスト平均得点率グラフ 2022年医学科入試合格者の共通テスト平均得点率グラフ

<グラフ3>

2022年医学科入試合格者の共通テスト平均得点率グラフ 2022年医学科入試合格者の共通テスト平均得点率グラフ

このグラフは国公立大前期の大学の「合格者の共通テスト平均得点率」を比較する目的で作成しました。まずはグラフの説明をしましょう。このグラフは、各大学合格者の「科目ごとの得点率」を横につなげて描いたものです。単位はすべて「得点率」です。以下、グラフの要素をご説明します。

  • 英語はリーディングとリスニングの合計得点です。
  • 国語は全問の合計得点です。
  • 理科②は共通テストの要項にある時間割の「②の理科」で、「基礎理科」ではない方という意味です。後ろに「高」と「低」がついていますのは、科目に関わらず得点が高かった側と低かった側に分類しています。
  • 数学の①と②は基本的にⅠAとⅡBです。
  • 地歴公民はいずれか1科目の選択科目です。

大学名の下には2022年本試験でのボーダー得点率が示されています。ご覧いただいた通り、グラフ内では左ほど得点率が高い大学になるように並べており、レベルをグラフ1→グラフ2→グラフ3の順番で大学を3つのグループに分けています。

さて、皆さんはこのグラフをどのように「読む」でしょうか。実は、この分析を私は「センター試験」の時代からずっとやってきたのですが、「共通テスト」時代になって劇的に変化したことがあります。それは、「高得点科目の減少」です。かつての「センター試験」時代、医学科合格者は全科目で満遍なく得点していたわけではなく、本当は「英語・数学①・数学②・理科②高」で圧倒的に高得点を出して、「理科②低・国語・地歴公民」をカバーする方法をとっていました。「苦手の文系科目」や「失敗した方の理科」を、高得点科目でカバーするという方法です。ところが、「共通テスト」になって以降、それができなくなりました。理由は簡単で、どの科目も「圧倒的な高得点」にならないからです。

グラフを見る限り、「英語・理科②高」のみが何となく高めとはいえますが、その他の科目の不出来をカバーするにはさすがに力不足でしょう。合格者でさえそういう状況ですから、医学科のボーダーラインが下がってくるのも無理ありません。しかし、これが単純に「難度が下がる」こととはいえませんので、油断は禁物です。グラフをよく見ると、理系生が苦手とする地歴公民や国語の得点は、この合格者グラフでは高めの位置にあります。つまり「合格者は地歴公民や国語ができる」といえるのですが、逆な言い方の方がピッタリきます。むしろ「地歴公民や国語が得点できた」からこそ、数学②があんなにできていないけれども全体の得点をキープすることができた…だから医学科に出願できて合格もできた…ということです。
「共通テスト」時代に医学科のボーダーラインに到達するには、「センター試験」時代の「苦手科目を得意科目でカバーする」…という発想は命取りになりかねません。また、どうみても英語の得点を出せないと合格者の平均的な像にマッチしませんから、十分な対策が望まれるところです。

共通テスト時代の勝ち方

入試本番では傾向が約束されている訳ではありませんから、何が起こるかわかりませんし、予想を覆すことが起こる可能性はあります。しかし、改めて今の「共通テスト」の状況から予想すれば、共通テストの平均点が極端に上がることは考えにくいと判断し、せめて昨年程度のやや低めの平均点になっても医学科に出願できるような得点が取れるように、シビアな学習の心構えを持ちたいところです。この先、2025年には新課程対応で「共通テスト」はさらに変化します。時間割が一部変更され、新科目として「情報Ⅰ」が課されます。また、国語では現代文の大問が1題増加する予定です。大きな改革を目前にして、共通テストが昨年から難度を調整してくれるかもしれないという、甘い発想は持たない方が良いでしょう。

2022年は数学の難度が非常に高かったゆえに、苦手な文系科目で得点できた人たちだけが、辛うじて医学科ボーダーに到達したと見ることができます。前時代の「得意科目で苦手科目をカバーする」自分本位の方法はもう通用しないのです。2023年を迎えた「新時代入試の勝ち方」は、予想ボーダーラインが低くなっていることに油断することなく、苦手科目を作らないように文系科目に注目した対策をすることです。全科目の得点力アップを目指し「全方位対策を強化」することが皆さんに良い結果をもたらすでしょう。

そのためには自分で問題集をやる…程度の学習をするのではなく、1回でもアウトプットの練習を積み、ほんの少しの得点のために解説を聞き、質問をする努力が必要な時代です。あと少し…ほんの少しの積み重ねが、合格への道標です。