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2022.7.11公開

2022年入試の「医学科合格者」を分析

自分の何かを変えることで訪れる新しいビジョンは、必ず新年度の合格に皆さんを導くはずです。

はじめに

毎年6月末~7月はじめの時期は、前年入試結果をようやくまとまったデータとして予備校が集計/研究する時期でもあります。高校向けの研究会、チューター(担任)への研修、保護者会などがこの時期に頻繁に開催されるのは、そういう理由があります。
ですから6月末~7月はじめの時期に実施される予備校の保護者会は、リアリティのある今年の入試の話がメインになっており、次年度入試を予想するためにはかなり重要です。コロナ禍で外出しにくくなり、保護者会参加者が減少しているようですから、「医の知の森」版の親子で共有できる保護者会と参りましょう。その上で、夏休み期間を有効活用する行動にぜひ結びつけてください。

「2023年以降の共通テスト」はどうなっていくのか

はじめに今年で2年目を迎えた「大学入学共通テスト」を「医学部入試」の視点から検証してみましょう。ご承知のとおり、国公立大医学科入試の大半は、この共通テストの結果で運命が決まりますから、受験生には最大の関心事ではないでしょうか。ここでは出題の詳細解説は他のサイトに譲り、共通テストの年度ごとの特徴を中心に見ていきます。
入試は単年度より複数年度で見る方がわかることがあります。ここで、年度別に大学入試センターが実施する試験(センター試験~共通テスト)を眺めてみましょう。

・2020年 共通テスト前年 「センター試験」としての最終実施
・2021年 共通テスト初実施 難度は想定ほどではなく平均点は予想より高かった
・2022年 共通テスト2年め 複数科目で難度が上昇し総合平均点は歴代最低を記録(今年)
・2023年 共通テスト3年め 前年の問題への外部評価が反映されるか?

先頃、2022年共通テストの外部評価がまとまりました。一部のニュースでは難度が高かったことに意見が出されていることをやや過大に捉えていますが、実際には数学が「時間に対する問題分量や計算量が多い」ことに意見が出された以外は評価が高いものが多くなっています。それを受けて、大学入試センターの自己評価でも、数学の問題量への配慮に言及した内容が発表されています。2023年実施の共通テストは、平均点が大きく下がった前年への配慮がどれくらい反映されるかで難度は決定するでしょう。
出題難度が気になるとはいえ、受験生ならどのような問題が出題されても最大のパフォーマンスを発揮し、高得点を取ることに専念しなくてはならないでしょう。年度による偶然性に左右されず、現実的な対応を考えることが受験生にとっては大切なことです。
ついでに、高2生が受験する2024年と高1生が受験する2025年の共通テストについて触れると、2025年から導入される「新課程」対応が以下のように大きく影響すると思われます。

・2024年 共通テスト4年め 「新課程」としての実施前年という位置づけが影響する可能性あり
・2025年 共通テスト5年め 共通テストの新課程実施(新科目「情報」、地歴・数学の範囲変更)

これらは極めて大きなことですが、別の機会に譲ることとして今は触れないことにします。高1・高2学年の方は、そういうことが控えているのだということを知っておいていただければいいでしょう。

2022年入試の医学部の志望者の増減はどうだったか

受験生の学部系統の人気/不人気は社会的な背景を反映しやすいものです。2021年入試は新型コロナの影響で、地元志向が増加したり、インバウンドの減少に伴う外国語や国際関係の学部の志望者が減少したりする影響がありました。そこで、18歳人口の減少とコロナ禍が重複する時代にあって、医学科入試がここ2年でどのような志望になっているかをみていきましょう。まずは国公立大の志望者数に下のグラフ1に示しました。

2020を基点とした国公立大前期 系統別志願者数増加率 (グラフ1) 2020を基点とした国公立大前期 系統別志願者数増加率 (グラフ1)

このグラフは2020年入試に対して、2021年(昨年)と2022年(今年)が何%の出願者になっているのかを見たものです。一番右端の国公立大「前期全体」のグラフを見ると、志望者数は2020年に対して2021年(昨年)が97%、2022年(今年)は96%となっていますので、国公立大前期の志望者はここ2年微減しています。しかし、医学科志望者は2021年に前年比100%、2022年は102%ですから、他の学系に比べてやや増加傾向にあります。医学科よりボーダーが低めの「薬」など、2022年は2020年に対して119%ですから、経済停滞のコロナ禍の最中、資格志向学部への志望者が増加していることが見て取れます。これらの動きは、理系の学部系統の中で最も人数が多い「工学部」が95%と志望者を減少させていることとは対照的です。
続いて私立大の志望動向も同様にこの2カ年で下にグラフ化してみます。

2020を基点とした私立大一般入試 系統別志願者数増加率 (グラフ2) 2020を基点とした私立大一般入試 系統別志願者数増加率 (グラフ2)

私立大の「一般入試全体」の志望者は、2020年に対して2021年が83%、2022年が84%と減少幅が大きくなっていますが、「医学科」では2021年が97%、2022年が96%の減少にとどまっており、志望者は私立大全体の減少幅ほど大きくありません。
ということは、国公立大/私立大の双方とも、18歳人口の減少にも関わらず、医学科志望者はそれに比例した減少をみせていないということです。医学科入試では高卒生が減少しています。しかし、それでも大きな志望者減少は見られないのは、現役生の医学科志望者が増加しているためです。ただし、受験生の成績がどうなっているかは人数の増減とは別に考える必要があります。特に高卒生の減少が決定的になっている状況では、成績全体が大きな影響を受けることになるからです。

2022年入試での医学科受験生の成績状況を考える

まずは国公立大受験に必要な共通テストの得点が、どれくらいだったのかみてみましょう。下のグラフ3は国公立大医学科合格者の2021年と2022年の得点率分布を重ねたものです。

2022 VS 2021 国公立大医学科 共通テスト合格者分布 (グラフ3) 2022 VS 2021 国公立大医学科 共通テスト合格者分布 (グラフ3)

2022年は共通テストの平均点が非常に低くなった結果、全国の医学科合格者の共通テスト得点分布は、2022年全体が相当下がっていることがわかります。古い時代、「医学部に合格するには9割は得点できないと無理」などと言われていましたが、2022年入試を見る限り、そこまでの得点は必要ではなくなっています。
しかし、問題難度と時間のバランスによって共通テストの平均点が影響を受けやすい一方、大学の二次試験では、ある程度の安定した学力が必要です。下のグラフ4では2022年と2021年の医学科合格者の二次偏差値を重ねたものです。偏差値はよほどの格差がないと動かないものですから、グラフはわずかに低い側にスライドして膨れているとはいえ、「合格者の人数の最も多い頂点」はどちらも同じ偏差値帯にあります。つまり、二次試験で必要な学力は偏差値で測っているため、素点を使う共通テストほど極端に下降する変化は見られません。

国公立大 二次学力調査 (グラフ4) 国公立大 二次学力調査 (グラフ4)

グラフ3とグラフ4を読み取れば、「国公立大医学科前期に合格する標準的な成績」が明らかになります。「共通テスト得点率76%、二次学力は偏差値65.0」の人とはっきり言えます。ですから、受験学年の方は「この成績以上を確保すること」を秋の模擬試験の目標に設定し、学習を進めましょう。

2023年に目指すべき大学を設定する

医学科は国公立大前期だけでも49大学、私立大が31大学ありますから、様々な難度の中から大学を選択することができます。志望者のレベルが高い大学、問題の難度が高い大学など、難度の考え方にも色々あるといえるでしょう。以下に、「国公立大前期」と「私立大一般選抜」の次年度入試の予想ランク一覧表を掲載します。ご自身の目標とする大学のレベルがどれくらいなのかを知ると同時に、いずれかの大学を自分の学習の目標に設定してみましょう。

2023 前期予想二次ランク(偏差値) 2023 前期予想二次ランク(偏差値)

私立大学 予想ランク 私立大学 予想ランク

1学期の模試でE判定になることはありがちです。そこで、ここから合格に持っていくためのアドバイスを受験生の皆さんにお送りします。ただし、私のアドバイスは具体的な手法ではなく、物事の考え方と発想方法です。

まず大切なのは、何が必要なことなのか「自分で考える」ことです。

学力がなかなか伸びない方がされる「典型的な質問」があります。「自分に合う教材は何ですか?」「自分に合う推薦入試はどこですか?」「自分に合う問題を出題する大学はどこですか?」「志望理由書はどんなことをみんな書いていますか?」という類の質問です。

皆さんニコニコしながらそういうことを普通のことのように質問されるのですが、その前提として「私は学習に専念したい」のだから「私に合うもの」を出してくれ…私はそれをやるから、というスタンスなのだと思われます。中学生の頃までは、「与えられたことをこなすことが学習」でした。ですから、こういう方に面接試験の解説をすると、それをもとに自分で考えようとせず、散々解説を聞いた後で「解答をください」と平気で言われて驚くことがあります。
自分の弱点や得意なことを見極め、優先順位を決めて何をすべきか「自分で考える」スタンスを持てないために人任せの学習を続け、無駄な周回軌道を周り続けていることが成績が伸びないことにつながっているといえるのです。

次に、「自分を変える決断をする」ことです。

「自分は何も問題があると思っていない。だから、1ミリも動かない」…そんなことでは困ります。「理想の受験生に自分が合わせる」ために変わろう…という発想を持ってほしいのです。

例えば、京大や阪大の医学部を受験しようとしている人が全統記述模試を私に見せにきたら、私から「どうして数学が満点じゃないんですか」と大概は尋ねられます。200点満点中180点くらい得点があったら、生徒はてっきり褒めてもらえるつもりで来るようですが、一瞬「えっ」という反応を見せます。しかし、次の瞬間には「そう言われれば、うっかりやってしまったことがあったなぁ」という顔になり、こんなことでミスがあるような学習ではいけない…となります。
発想として、生徒は「数学が180点で京大に合格できるかどうか」を尋ねに来たのでしょうが、私から「数学を200点取れる受験生になればいいだけじゃないのですか」と言われて、「そうか、そういう自分に変わればいいだけだな…」となるわけです。学習時間にしても、60分かかることは、40分でできるようにするには自分の何を変えればよいかなど、できないことを「できない」と宣言するのではなく「できるようにするために何を変えるか」という発想を持ちたいところです。

2022年入試は前年から国公立大・私立大ともやや緩和されたように見えます。しかし、それは「あと1点」のレベルに最大の努力を傾注した受験生にとっての緩和でしょう。合格するためのコツは、自分の中で当たり前になってしまっている「生活習慣病」を治すことです。自分の何かを変えることで訪れる新しいビジョンは、必ず新年度の合格に皆さんを導くはずです。