新年度をスタートする医学科入試の基礎知識 ~国公立大前期~ 知っ得!医学部合格の処方箋 知っていますか?~知識編~ | 知っ得!医学部合格の処方箋 | 医の知の森<近畿地区医学科進学情報センター>
科目を絞ると痛い目に・・・!?
国公立大前期入試の基本事項と心構えについて、整理しながらお伝えします。
国公立大の「前期試験」の科目指定
いよいよ新年度がスタートしました。ここでは国公立大前期入試の基本事項と心構えについて、整理しておきましょう。
全国の国公立大は合計50大学あり、そのうち前期試験を実施する大学は山梨大を除く49大学あります。国公立大医学科への出願を考える場合、よく「センター試験の得点状況に応じて、出願大学を変更する」と言われますが、実は「受験選択科目」によってはそれが限定されていることはあまり取り上げられることがないようです。
ここでは、「受験選択科目」による出願の制限について見ていきましょう。
<センター試験の「地歴/公民」の科目指定>
医学科受験に際しては、まずはセンター試験の「地歴/公民」でどの受験科目にしているかに注意が必要です。「地歴B」(日本史B・世界史B・地理B)の場合と「倫理・政経」、いわゆる4単位科目の場合、全国のどの大学でも出願が可能です。
しかし、いわゆる2単位の科目を選択した場合は要注意です。「現代社会」の選択なら出願先は全国で23大学、「倫理」や「政経」を選択してしまうと21大学に出願が限定されてしまいます。
また、もしも「地歴A」(日本史A・世界史A・地理A)を受験科目にした場合、出願先は全国で6大学しかありません(<表1>参照)。
<表1>2017年度 国公立大医学科前期 センター試験の地歴公民選択パターン
■2単位の公民科目を選択している場合は、志望変更に注意が必要。
<センター試験・二次試験の理科の科目指定>
理科もいくつかの大学では、受験に際して科目が指定されることがあります。具体的には以下のとおりです。
・北海道大
→二次試験の理科で1科目は「物理」が指定
・群馬大・金沢大・愛媛大
→二次試験の理科は「物理・化学」の2科目が指定
・佐賀大
→センター試験、二次試験とも「物理・化学」の2科目が指定
・九州大
→センター試験で理科の1科目は「生物」が指定、二次試験は「物理・化学」の2科目が指定
上記の状態を見ると、「生物・化学選択」の受験生は、北海道大・群馬大・金沢大・愛媛大・佐賀大への出願が実質的にできません。また、九州大学受験には、実質的に理科は3科目必要なことになります。一方、昨年までセンター試験で生物が必須だった熊本大は、2018年度入試から「生物必須」をはずしています。
これから受験科目を選択していく高1・2生の皆さんは、上記のことも考慮して科目選択に臨んでいただきたいところです(<表2>参照:赤字は2018年度に科目変更予定の大学)。
<表2>2018年度 国公立大(前期) 2次試験科目(2017.4.1現在)
★1:二次試験の1科目は「物理」指定
★2:二次試験は「物理・化学」指定
★3:センターで1科目は「生物」、二次試験は「物理・化学」指定
★4:センター・二次試験とも「物理・化学」指定
★5:2017までは二次「英・数・理2つ・小」(2018:小論文減)
★6:2017までは二次「英・数」のみ(2018:理科2科目増)
★7:2017までは英・数・理1つ(2018:理科1科目増)
★8:2017までは面接を課さず(2018:面接増)
- 後期試験では指定科目が異なる場合があるので注意
二次試験に理科を課さない大学
国公立大前期試験の医学科入試といえば、二次試験で「英語・数学・理科2科目+面接」を課すことが普通です。しかし中には、二次試験科目が「英語・数学+面接」のみで理科を課さない大学があります。具体的には以下の6大学です。
・旭川医大、弘前大、秋田大、島根大、徳島大、宮崎大
2017年度入試までは鳥取大も「英語・数学+面接」でしたが、2018年度入試から理科2科目を追加することが決定しています。また、「英語・数学・理科1科目+面接」入試だった山口大も、2018年度入試からは理科は2科目に変更されました。
ただし、いずれの大学も「センター試験では理科2科目が必須」ですから、いずれもまったく理科を学習しなくてもいいということにはなりません。
受験生の中には上記のことを知っている人がいて、「理科はセンターレベルまでにして、二次試験科目から省こう」という方が、早い段階から上記6大学に目標を絞ることがあるようです。しかし、個人的な経験からはあまりおすすめできません。医学科入試は難関ですから、現役で合格するとは限らないこともあり、学習はその場合の「再スタートをしやすい状況をつくり出すこと」も計算におかなければならないからです。
つまり、今年の学習は「来年浪人してしまった場合のことも想定」すべきなのです。あと1年時間が与えられた時、その人はまたしても「英語・数学+面接」の大学だけを志望先にして、大学選択の幅を狭くするとは思えません。
少し考えるとわかることですが、あまりにも長期に理科学習の基本から離れると、浪人された時に学習勘と基礎力が非常に戻りにくくなります。また、上手く合格できたとしても、大学の学習に必要な基礎知識が不足した状態で入学することにつながりますので、結果的には後に苦労を先延ばしするだけではないでしょうか。
では、これらの大学を選択する基準はどうなるでしょうか。大まかな言い方で示せば、受験生としてはあくまで「英語・数学・理科2科目+面接」で学習し、センター試験を受験した結果として、最終的に出願選択した大学が「英語・数学」のみを二次試験で課す大学だった・・・というのがもっともよい選択基準であるべきではないでしょうか。また、もともとそれらの大学を第一志望にしている人であっても、二次試験レベルまで想定した理科の学習は自分に課すことをおすすめします。
医学科を受験する人は「楽」はできませんし、近道もありません。あくまでフルセットの科目を学習し、受験に備えることが基本といえるでしょう。