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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第45回 工学部 イベントレポート | 体験授業・イベント

「化学でマテリアルイノベーション」

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2021年10月10日(日)14:00~16:00

会場

名駅校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

名古屋大学と河合塾のタッグで授業

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第45回 工学部を、2021年10月10日(日)河合塾名駅校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学工学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

私のオリジナリティ、そこからできること ~今までにない材料の創製~

第1部:化学でマテリアルイノベーション
野呂 篤史(のろ あつし)講師(工学研究科)

野呂先生が所属されている工学部化学生命工学科では、「化学から未来につながる力」が標語として掲げられており、工学的見地から確かな基礎化学に基づく俯瞰的応用力を身につけることができます。卒業研究では世界最先端の化学に取り組む中で自ら問題を発見し解決でき、より深化した展開力を身につけることでたくましく道を切り拓いていけるようになります。学部卒業生のほとんどが大学院修士課程に進学し、卒業後は多くの民間企業や国・地方公共団体・大学等の研究職へ就職しており、卒業生には化学の力で未来社会を構築していく一員になってもらいたいと期待されていました。そして工学を学びたい女子に対しても工学部の中では比較的女子学生が多い化学生命工学科をお勧めされていました。
研究対象の「高分子(ポリマー)材料」については、身近にあるDVDケースやタイヤなどを取り上げ、ポリマーがプラスチックになったりゴムになったりすることや、ポリマーの重要な特徴である混ざりにくさ、異種ポリマーをつないだ複合ポリマー(ブロックポリマー)について、わかりやすくイラストで解説していただけました。そして全米トップクラスのミネソタ大学の化学科・化学工学科へ留学をされた話を挟まれ、研究留学で多様な経験をされ、研究を通じて世の中に貢献していきたいと強く思われたご経験談も話されました。
次に研究対象のプラスチック、ゴムの両性質を持つ熱可塑性エラストマー(TPE)について、より強靭なエラストマーとするためには非共有結合を導入すれば良いのではないかと考えられ、トリブロックポリマーベースでかつ熱可塑性の水素結合性エラストマーを合成され、特許も取得されています。しかし初期検討では材料として不十分で、十分な機械強度を有する商用ポリマーから合成していけばさらに高付加価値になるのでは、と考えられました。そして、商用ブロックポリマーに対して非共有結合性官能基を導入したエラストマー材料に関する共同開発を日本ゼオン株式会社と開始され、イオン性官能基を導入することで、世界トップクラスの高靱性を示す強靭な非共有結合性エラストマーを開発されたそうです。研究開発を進められる中で多くの特許も出願されています。
後半の燃料電池、燃料電池自動車の話に入れられる前には、マサチューセッツ工科大学の材料科学・工学科に留学をされ、ご自身の化学を活かした研究を通じてマテリアル創製につなげていきたいと強く考えられるようになられたことを話されました。そして、世界でも日本でも大きく期待されている燃料電池の開発においてご自身の化学の研究を活かすキッカケとして、固体高分子形燃料電池(PEFC)のプロトン伝導性高分子電解質膜に関して、「トヨタ先端技術共同研究公募」に応募され、トヨタ自動車株式会社とともに無加湿で高伝導率を発現する高分子電解質膜を開発されたそうです。現在も実用材料として利用できるように、さらなる研究を継続中だそうです。マテリアルイノベーションを通じて、経済発展と社会課題解決を両立させた持続可能な社会の実現に向け、地球規模での最先端研究課題に取り組むことで、世界に貢献されたいということでした。
難しい化学の研究内容を詳細にわかりやすく解説していただきました。さらに「名古屋大学工学部に入学してぜひマテリアルイノベーションに係る研究に携わり、世の中に貢献する研究をしましょう、待っています!」と熱く語られ、名古屋大学に対する興味が高まった講演となりました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
工学研究科 物質科学専攻・物性物理学 加藤 大雅(かとう ひろまさ)氏
工学研究科 物質プロセス工学専攻・結晶工学 永冶 仁 (ながや まさし)氏

第2部では、名古屋大学大学院工学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

物質科学専攻・物性物理学 加藤 大雅 氏

加藤さんは現在、名古屋大学大学院工学研究科・物質科学専攻に在籍し、超伝導の研究をされています。加藤さんは高校生のころ、自動車などの身の回りにあるものが題材に出てくるところにおもしろさを感じ、物理が好きだったそうです。一番好きで興味を持ち続けられそうな物理を大学でも学びたいと思い、名古屋大学工学部物理工学科に進学されました。学部を選択する際、理学部物理学科と工学部の物理系を検討し、工業製品の役に立つ研究ができ、基礎科学から応用まで幅広く学べそうだというお考えのもと工学部に進学されました。
加藤さんには、学部時代の大学生活や学んだ内容を1学年ごとにご紹介いただきました。1年生のころには研究室ツアーがあり、「材料コース」「応用物理コース」「量子エネルギーコース」でどのような研究を行っているのかを知り、どのコースにも魅力を感じたそうです。2年生では工学部の専門科目の授業が増え、実験も始まり手を動かすことで、大変ながらも成功したときの達成感を味わったとお話しいただきました。3年生になった加藤さんは、材料の機械特性や電磁気特性について学ばれたり、鉄鋼精錬など、実際に産業化されているものについての知識を深められたりしました。
このような専門性が高い学びの中で、物性の講義を受けた加藤さんは、「超伝導」に興味を持たれました。マイスナー効果とピン止め効果による磁気浮上現象など、不思議な現象が目に見える形で表れることをおもしろいと感じられ、超伝導の研究をしたいと思ったそうです。加藤さんは現在大学院生としてより専門的な研究を行っており、実験は1日がかりで行うなど、充実した研究室生活を送られているそうです。
講演の中では、大学での研究につながる高校の学習についてもお話しいただきました。材料の解析のためには数学の勉強も必要で、高校時代に基礎の力をつけた微分方程式を、学部時代にひたすら解いていたというエピソードもお話しいただきました。また、理系のイメージが強い工学の領域ですが、学術論文はほとんどが英語で書かれているため、英語力を高校生のころから高めた方がよいとご教示いただきました。
高校生までの学習内容が大学での研究にもいきることや、名古屋大学での充実した研究生活などをお話しいただき、参加者の学習へのやる気を引き出す素敵な講演となりました。

物質プロセス工学専攻・結晶工学 永冶 仁 氏

永冶さんは2015年3月に名古屋大学大学院工学研究科博士前期課程を修了され、その後は材料メーカーに就職され、材料設計のお仕事をされていました。2021年4月からは名古屋大学発のベンチャー企業である株式会社U-MAPへ就職すると同時に、名古屋大学大学院工学研究科物質プロセス工学専攻博士後期課程に入学されました。
最初に、永冶さんに大学院生活で行っていることをご紹介いただきました。1つめは図書館での情報収集です。とある現象を数式で予測することがあるそうなのですが、予測で必要となる材料の特性が数値データとしてまとめられた本が図書館にあるので、図書館にこもって情報を集めているそうです。名古屋大学には図書館が20棟以上あり、理系学部・研究科関係の図書館だけでも7棟もあり、非常に多くの情報がそろっていることも教えてくださいました。
2つめは論文の調査です。世界各国の研究成果の報告書を調査し、調査から得られた情報をもとに仮説を立てて試験を行い、試験結果を教授たちと議論をし、その後は改めて仮説を立てて試験をしたり、情報収集をしたりしていることを説明してくださいました。また、名古屋大学には本の著者であったり、新聞記事に掲載されたりする教授が多くいらっしゃり、時にはノーベル賞を受賞した教授とも議論する機会もあるそうです。入学後はノーベル賞など遠くに感じられていた世界も非常に身近に感じられるようになり、最先端技術の先駆者である教授たちと議論したり、研究したりできるのは魅力であるとお話ししてくださいました。
続けて、研究内容についてお話しいただきました。現在、永冶さんは「電子機器の熱問題」を解決するための研究をされています。電子機器の発熱は近年では非常に問題視されており、電子機器の動作速度や電池の寿命を著しく低下させる原因となっていますが、永冶さんはEV(電気自動車)のバッテリーが適正温度以上になると性能や寿命が短くなるという記事と、サーバー機器の温度上昇によりシステムがシャットダウンしたという記事を例に挙げてわかりやすく説明してくださいました。発熱問題に対応するためには冷却設備を導入するのが良いのですが、冷却設備の導入にもエネルギーやスペースが必要となり、自由度の低下やコストの増加の点で課題もあるそうです。こういった課題を解決するために、電子機器内部で使われているセラミクスや樹脂・ゴムの高性能化が重要になってくるのですが、その高性能化のために必要となってくるのがフィラー(充填剤)です。永冶さんの研究室ではフィラー材料として「Thermalnite(サーマルナイト)」という材料を研究開発していますが、このThermalniteは髪の毛よりも細い0.001mm程度の繊維上の形式であるにもかかわらず、高い絶縁性と熱伝導率を持っていることが特徴です。この材料をセラミクスや樹脂などに混ぜ込むと、発生した熱を効率よく逃がすことができ、絶縁性も維持でき、セラミクスと混ぜ込めば衝撃で割れにくくなるので、さらなる特性の向上を狙えるそうです。
また、Thermalniteの発見後は永冶さんが在職されている株式会社U-MAPが起業されましたが、そのチームメンバーは名古屋大学での研究生活の中でつながった方が非常に多く、研究室の教授、同じ研究室の出身者や隣の研究室に所属されていた先輩、実験装置を設計している会社の方などがいらっしゃるそうで、現在はThermalniteを世の中に広めていく活動を行っていますとご説明してくださいました。
最後に今後の大学での研究について、「Thermalniteを混ぜ込んだ樹脂は、Thermalniteの分散状態が非常に複雑な構造となっているので、そういった分散状態を制御するための研究開発を続けます。また、分散状態はどのようにしたら熱伝導率が上がるのかの指針を作る必要もあるので、その評価技術に関しても研究を行っていきます。さらに、良い材料はどれだけ良い特性があっても、コストが高かったり、生産性が悪かったりしてビジネスとして成り立たないと世の中に出回っていかないので、より大量に生産できるような研究開発も行っていきます」と熱く語られて講演を締めくくられました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、参加者との懇談会が行われました。

Q.大学での学びと大学受験での学びの範囲の差を教えてください。
A.(野呂講師)高校で学んだことはもちろん大学で役に立ちます。特に数学はきちんと勉強しておかないと通用しませんので、受験勉強はがんばった方がいいです。また、大学で学ぶ工学は、将来実際に社会に出てから扱う内容を踏まえたものとなっています。

Q.達成感が大きかったことを教えてください。
A.(野呂講師)研究においては、仮説をたててはやってみて、という流れを繰り返し、ようやくうまくいくときがあります。そんなときは学生さんたちともみんなで一緒に喜びあえて、とても達成感があります。

Q.どのようにして研究対象を決めたかを教えてください。
A.(野呂講師)化学反応に関して勉強したい場合は化学生命工学科、材料に関して勉強したい場合はマテリアル工学科、材料の性質や現象を深く勉強したい場合は物理工学科など、自分の学びたいことにあわせて学科を選んで、研究対象を決めてもらうのが良いと思います。
(加藤さん)大学3年生の授業で超電導を習ったことで興味を持ちました。それまでの授業は高校の授業の延長のように感じてつながりが見えてこなかったのですが、リニアモーターカーにも超電導が関わっているなと感じてからはおもしろいと感じるようになりました。今は興味を持てる内容がまだないかもしれませんが、大学に入っていろいろと学ぶうちに見つけられると思います。
(永冶さん)今までの自分の経験や知識から来ているのではないかと思います。私も最初はぼんやりと材料について興味を持ったのですが、大学や社会でいろいろと学び、課題解決の方法を考えていくうちに、今の研究対象に興味が出ました。

Q.なぜ名古屋大学を選ばれたのですか?
A.(野呂講師)中高生の頃は偏差値ベースで大学の良し悪しを判断しがちで、受験期の私もそのような見方で大学を見ていて、最終的には東海地方の基幹大学とされる名古屋大学に入学することになりました。偏差値だけで見てみると名古屋大学は東京大学や京都大学に引けを取りますが、ただ大学には偏差値という視点だけでは測れない魅力や価値がたくさんあります。実際、名古屋大学は理系分野、工学分野において東京大学や京都大学にも負けないような日本、世界でトップレベルの研究をしています。名古屋大学にはノーベル賞受賞者がたくさんいたり、世界的に注目される研究成果も日々発表しています。偏差値だけでは測れない魅力がたくさんある名古屋大学なので、世界トップレベルの研究に関わってみたい人、工学をしっかり学びたいと思う人はぜひ名古屋大学、名古屋大学工学部を考えてみてほしいです。
(加藤さん)地元の大学に通いたかったというのも理由の一つです。名古屋大学はレベルも高く、旧帝国大学の一つでもあるので、行くのであれば名古屋大学だと決めていました。また、他の大学とは通っていないので比較ができないのですが、私の研究分野に関して言えば、名古屋大学は研究室の数が豊富なのは良いところだと感じています。さらに、大学への交通のアクセスも良いのも魅力で、地下鉄が大学のキャンパスを通っているのは全国的にも珍しいと思います。
(永冶さん)自分に学力に合っていたことと、有名な企業が愛知県内に多かったので選びました。また、名古屋大学の特長として挙げられるのは、名古屋大学は企業との共同研究を行っていることが多いこと、ベンチャー企業の立ち上げるための教育を行うプログラムがあるので、学習意欲をもって学べる環境が整っていることだと思います。

参加者の感想(一部抜粋)