河合塾グループ河合塾
学年と地域を選択
設定

学年と地域を選択すると、必要な情報がすぐに見つかる

塾生ですか?

はい
いいえ
  1. 河合塾
  2. イベント・説明会
  3. 名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第44回 情報学部

名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第44回 情報学部 イベントレポート | 体験授業・イベント

「情報通信技術がもたらす未来社会とは」

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2021年10月3日(日)14:00~16:00

会場

千種校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

名古屋大学と河合塾のタッグで授業

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第44回 情報学部を、2021年10月3日(日)河合塾千種校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学情報学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

情報通信技術(ICT)がもたらす 新しい社会の在り方について

第1部:情報通信技術がもたらす未来社会とは
浦田 真由(うらた まゆ)准教授(情報学研究科)

浦田先生は研究を始めたきっかけとして、子供の頃からコンピュータに興味があり、大学へと進学し、さまざまな経験をされたことで「この経験を生かした仕事・活動がしたい」と思うようになり、研究職をめざすようになられました。この頃に経験された「実社会で情報技術を活用する活動」が今の研究につながっているそうです。
様々な社会課題に対し情報通信技術(ICT)を適切に活用することで課題が解決できたり、利用者が喜んでくれたりと、実際にやってみなければ分からないことに研究の面白さがあり、研究活動として提案したことが実社会に役に立っていると実感できた時は嬉しい気持ちでいっぱいになると楽しそうにお話しされました。
研究について教員をしていて気づかれたことは、「良い研究成果を残す学生は、大学にどんな研究室があり、将来どんな研究がしたいのか、大学進学前に考えている」とのことでした。
次に研究内容について、誰もが「自由に使える」「再利用できる」「再配布できる」データである「オープンデータ」を市区町村で推進する活動をされているそうです。ですが、日々の業務で忙しい自治体ではなかなか進まず、効果やメリット、ニーズが不明確である事が課題だそうです。
そして、実際に行われている地域ICT利活用のための研究について、さまざまな地域や大学・企業と連携して活動されているそうですが、まず産官学連携プロジェクトとして「高齢者によるICT利活用」についてお話されました。自治体とICTを活用したまちづくりにおける連携協定を結び、高齢者を対象とした介護予防のための実証実験をされたそうです。スマートスピーカーを利用して使用アプリの利用割合や呼びかけ提案機能、雑談の使用数や使用会話ログといったデータを集め、介護予防・健康増進を図ります。ただ、データを集めるだけでなく、アプリの開発や教育プログラムの効果検証、地域におけるICT利活用を支える担い手の育成も必要と説明されました。また、地域観光振興のためのデータ利活用のプロジェクトについてもお話しされました。車両ナンバー認識システムによる観光客属性データの収集し、分析することで観光施策に役立てることをめざされているそうです。
最後に、誰の何のための研究なのか、実証実験にとどまらず継続できる体制や仕組みをどのように設計するかといった信頼関係が大切であること、また、地域DXへ向けた大学の役割として、超少子高齢化等の諸課題に対応するため、地域内外のさまざまな関係者の仲介役となり、地域独自の課題や魅力に気付き、その解決や活用に向けて研究成果に基づく知見を一つの手段として推進し、安心・安全・快適な社会デザインに寄与するよう努めることだと話されると、参加者はうなずきながら聞いていました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
知能システム学専攻(情報学、データベース) 野原 健汰(のはら けんた)氏
複雑系科学専攻(人工生命・生態音響) 炭谷 晋司(すみたに しんじ)氏

第2部では、名古屋大学大学院教育発達科学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

知能システム学専攻(情報学、データベース) 野原 健汰 氏

野原さんはまず初めに、高校時代の進路選択についてお話しされました。名古屋大学情報学部への進学は、高校時代に参加したオープンキャンパスや、当時話題になり始めていたAI技術に興味を持たれたことがきっかけだそうです。ちょうど同時期に名古屋大学に情報学部が設立されたこともあり、将来の就職にも生かせそうと感じ、進学先を決定しました。次に現在の大学生活についても触れられ、授業の一環で自ら作成したゲームのプログラミングや、前方センサーの距離判定で自動走行する「自動走行車」についてご紹介いただきました。さらに名古屋大学の1,2年次から4年次までのカリキュラムや、ご自身も参加されたオーストラリアのモナシュ大学への短期留学など、大学入学後の様々なご経験についてもご説明いただきました。
現在、野原さんは大学院でHTAPデータベース向け索引構造について研究されています。はじめにデータベースそのものについてわかりやすく例を挙げながらご説明され、データベースとは構造化した情報またはデータの組織的な集合であると述べられました。(例:ショッピングサイトが保有する顧客情報や商品情報、出品者や企業の情報などを管理しているものがデータベース。)そしてこれらのデータを処理するとき、OLTP(データの読み書き。デバイスからデータベースへの情報入力)と、OLAP(データの分析。データベースからデータを取り出して集計・分析する。)という基本的な処理がなされているものの、一方の高速性を高めようとするともう一方が遅くなってしまうなど、その両立はとても難しいとされています。野原さんはこの二つの処理を両立するHTAPデータベースを実現させるための索引構造を研究されています。他にも、機械学習による索引の構造や、地図データを対象とした処理など、多角的にデータベースについて研究されていることをお話しされました。
最後にご自身の進路選択のお話に戻られ、「自分のように、最初の動機は“面白そう”という興味だけであっても、情報学部は興味があれば入学後に自分が打ち込める研究対象を見つけることができる。さらにコンピューター科学科では情報技術の知識を幅広く学ぶことができます。」と情報学部の魅力をご説明され、講演を締め括られました。

複雑系科学専攻(人工生命・生態音響) 炭谷 晋司 氏 [動画上映]

炭谷さんは初めに、自己紹介と経歴についてお話されました。幼いころからパソコンが家にあり、情報系に対する興味があったことや工業高等専門学校に通っているときに名古屋大学出身の先生による研究の話に興味を持ち、名古屋大学への編入を決意されたことなどをお話しくださいました。また、その後の名古屋大学へ入学されてからの経歴についても、時系列に沿って編入ならではの苦労や進学の動機にも触れながらお話しくださいました。
現在炭谷さんは、情報学の観点から生命現象を理解したい!というモチベーションから、「創発現象」といわれる様々なスケールで複数の要素が相互作用することで、新しい構造や機能が生じる現象について研究されています。
講演会では「創発現象」の一つとして着目されている「鳥の鳴き声」を介した相互作用の理解についてご紹介いただきました。まず、鳥は重要な意思伝達手段として鳴き声を目的に応じて使い分けていること、その鳴き声が時間(タイミング)や空間、音響特性など様々な要素に影響され相互作用されていることをご説明されました。
その鳴き声の観測には、研究対象である複数個体が鳴きあう状況を観測するためにロボット聴覚技術を用いられているそうです。このロボット聴覚技術を音響工学の知識を必要とせずに利用するための「HARK」というソフトウェアがあり,マイクロフォンアレイの録音から音源定位・分離などができます。また、HARKを鳥類観測用に拡張した「HARKBird」というソフトウェアを開発しており,パソコン上で録音、分析、可視化、結果の編集や分類を容易に行うことができます。
その後、観測の事例としてウグイスの鳴き声観測を挙げられ、ウグイスが録音したウグイスの再生音(スピーカーウグイス)に対して、再生音がある場合とない場合で大きく反応が異なることや情報論的手法によって移動量が次の鳴き声に影響することが示唆できたとご説明くださいました。また、ウグイスの声はなぜ2種類にわかれているのか疑問を抱き、人工的に作成した中間音に対して本物の音のときと違う様子がわかるなど、現在の研究経過状況についてお話しくださいました。また、他の鳥にも同様の実験を行い、生態的に妥当な空間的行動パターンを抽出することに成功されたそうです。
これらの実験結果から、ロボット聴覚技術を用いると鳥類に関する調査が可能であることを検証できた為、博士後期課程では、本来の目的である複数の相互作用を調査することに挑戦されました。研究目的に最適なキンカチョウに対する観測を行いましたが、環境面は整えることができましたが、個体識別の問題が残っていました。そこで情報学の力として、AIにそれぞれのキンカチョウの鳴き声を学ばせることで個体識別を可能にすることができたこと、その結果、オス2羽の場合とオス2羽・メス1羽の場合で状況に応じて状態が変わる様子を抽出することに成功されたそうです。
最後に参加者に対して、情報学を学ぶ意義や面白味、これからの時代に必要とされる分野であること、是非博士後期課程まで視野に入れて学んでいただきたい!と語りかけられ、講演を締め括られました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、参加者との懇談会が行われました。

Q.AIに興味があり、特に医療に貢献できる(特に病名の判別など)AIを開発する仕事がしたいのですが、何を専攻すればいいですか(学科など)?大学でAIに関する研究をしたいです。
A.(浦田准教授)情報学研究科知能システム学専攻に医療系の研究室がありますが、他の専攻(研究室)でもAIの研究はしています。
(野原さん)情報学研究科の知能システム学専攻に入られるのが良いと思います。そのため、学科ではコンピュータ科学科を選択すると良いと思います。

Q.初心者がプログラミングを習得するのに何年かかりますか?
A.(浦田准教授)習得というところがどのレベルを指すのか分かりませんが、プログラミングは“言語”なので、ある程度の慣れが必要かと思います。
(野原さん)どの程度を習得したというレベルにするかは人それぞれ違うので何とも言えませんが、大学4年間でプログラミングの基礎は習得できると思います。

Q.入学前にプログラミング、タイピング等はできるようになっておく必要はあるか。
A.(浦田准教授)入学前にできていれば、入学後役立つと思いますが、必須ではないので、入学してから身につける学生もいます。
(野原さん)できるに越したことはないですが、できるようになっておく必要はないと思います。

Q.スキル(アプリ)の開発は具体的にはどのプログラミング言語を用いるのか。(画像処理ではPythonが向いていそう。)
A.(浦田准教授)Pythonでもできますが、Node.jsで開発する学生さんが多いです。
(野原さん)どういった開発を行うか、ネイティブアプリかWebアプリかなどによって用いる言語は変わると思うので、開発したいものを明確にして調べてみるのが良いと思います。

Q.データベース処理において、処理するコンピューター側の性能はどのくらいのものを使用されるのでしょうか。また、名大のスーパーコンピューターはその時活用されるのでしょうか?
A.(野原さん)簡易的な実験では基本的にノートPC(CPU:Intel Core i5 4コア8スレッド、RAM:48GB)を使用します。もっと多くのスレッドを使用したい場合やGPUなどを使用したい場合は研究室のサーバーを使用します。弊研究室ではスーパーコンピューターは使用していません。

Q.コンピューター科学科への進学を志す場合、高校時代どのようなことに取り組むといいと思いますか?
A.(野原さん)コンピュータ科学科では講義の中で数学を扱うことが多いので、数学を得意分野にしておくと良いと思います。

参加者の感想(一部抜粋)