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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第34回 工学部 「超伝導の不思議な世界」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

講演の様子

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第34回 工学部を、2019年6月30日(日)河合塾千種校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学工学部の教員の方をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約100人の生徒・保護者の方が名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

講演内容

第1部:名大教員による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2019年6月30日(日)14:00~16:00

会場

千種校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

面白くて不思議で、夢のある超伝導の世界

●第1部:超伝導の不思議な世界
生田 博志(いくた ひろし)教授(工学研究科)

生田 博志(いくた ひろし)教授(工学研究科)

皆さんが、「超伝導」で最初に思い浮かべるのは、2027年開業予定のリニア新幹線かもしれません。地上の推進コイルに電流を流すことで磁界(N極、S極)が発生し、車両の超伝導磁石との間で、N極とS極の引き合う力と、N極同士・S極同士の反発力により車両が前進します。また、車両の超伝導磁石が高速で通過すると、電磁誘導により地上の浮上・案内コイルに電流が流れて電磁石となり、車両を押し上げる力と引き上げる力が発生し、浮上します。
さらに、超伝導はさまざまな分野での活躍がますます期待されています。例えば、超伝導航空機の実現に向けて、日本の技術が期待されています。電動航空機の利点は、二酸化炭素や窒素酸化物などの排出が少なく、静かな音ということです。早ければ20年後に実現するかもしれません。
また、サハラ砂漠に砂と太陽光を活用したシリコン工場と太陽光発電所を建設し、太陽電池で発電した電力を、超伝導ケーブルを使って世界中に送るという「サハラ・ソーラー・ブリーダー計画」があります。何故、ブリーダーかというと、発電した電力で砂に含まれるシリコン(ケイ素)を精製すると、新たな太陽光パネルの原料になるからです。
しかし、超伝導にも未解明の部分があります。1986年以降、理論的予想を上回る高い転移温度の超伝導体が多数発見されました。発見から30年以上経過した現在でも、この高温超伝導発現機構は解明されておらず、その解明が望まれています。また、冷却コストの大幅カットで、より広範囲な応用展開が期待されます。
そこで、生田教授の研究室では、「もっと凄い超伝導を!」を合言葉に、より高温で、より大電流を、より高磁場を、より高機能へ、より使いやすく、より簡便な冷却をめざしてなど、超伝導発現機構の解明や材料特性の向上などに取り組んでいるそうです。例えば、鉄系超伝導体の中でも最も高い超伝導転移系で、世界で初めて超伝導薄膜の成長に成功しました。
最後に、生田教授が日頃思われていること、ぜひ身につけてもらいたい力について、愛情を持って語られました。
「研究は答えを自分で見つける活動で、企業での製品開発なども同じだと思います。そのためには、基礎力をつけることと問題を自分で解くことが重要です。また、英語でのコミュニケーション力は必須です。さらに、工学を志す人は、基礎科学を正しく理解する力と、社会のニーズを的確にとらえて、柔軟に対応できる応用力が大事です。そのためには、いろんなことに興味を持って、広い視野を持つことが大切です。」

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
工学研究科 エネルギー理工学専攻(エネルギーナノマテリアル科学)柴田大地(しばた だいち)氏
工学研究科 情報・通信工学専攻(制御工学、パワーエレクトロニクス)嶋岡 雅浩(しまおか まさひろ)氏

第2部では、名古屋大学工学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

工学研究科 エネルギー理工学専攻(エネルギーナノマテリアル科学)柴田 大地 氏

工学研究科 エネルギー理工学専攻(エネルギーナノマテリアル科学)柴田 大地 氏

柴田さんは高校時代、いろいろな大学のオープンキャンパスに参加し、エネルギーやナノ材料などの目に見えない世界に興味を持ったことがきっかけで物理工学科への進学を決意されました。また、2年生のときには量子エネルギー工学コース(現 エネルギー理工学科)に進まれ、そこで原子力関係の勉強をされました。その流れで3年生のときには北陸電力でのインターンシップにも行かれたそうです。
続けて学部時代の学生生活についてもお話がありました。一般的には、1年生で数学や物理などの基礎学問を習得、2年生で専門的な量子力学や物性物理学などを習得、3年生ではより専門性のある授業や学生実験を通して研究の基礎を学んだうえで、4年生から研究室に配属されて研究生活が始まるとのことでした。
次に、柴田さんの研究内容についてお話いただきました。マトリックスという映画の中で人間をエネルギー源として機械を動かす描写があるのですが、柴田さんは実際に「体温によるエネルギーを電気に変換してものを動かす」という研究をされているそうです。具体的には、熱電材料である半導体の一方を加熱、一方を冷却という温度差を与えることで発電します。実際に体温で発熱するスマートウォッチがあることも紹介されました。さらに、熱電変換の材料は「電圧差の生じやすさ・電気の通しやすさ・熱の伝えやすさ」が重要であり、柴田さんは「C60フラーレン」という物質を使って熱電材料をつくろうとしているとのことでしたが、研究室自体、いろいろな性質があるフラーレンを使った研究をメインでされていることも紹介してくださいました。また、研究室に所属する際は、基本的には自分の希望した研究室に所属できるものの、人気のある研究室は成績が関係して所属できない場合もあるので、「しっかりと勉強をして基礎を身につけることが大事になります」とのアドバイスもしてくださいました。
最後に、柴田さんから「一生勉強、一生青春」という言葉を紹介いただき、「大学生で勉強とは何かを学び、青春とは何かを感じ取っていけば、今後の人生の中で勉強や青春も一生続けていけるはずです。大学生の間にいろいろな経験をして、その後の人生で勉強も青春もどちらも両立できるようにしてほしいです」というメッセージで締めくくられました。

工学研究科 情報・通信工学専攻(制御工学、パワーエレクトロニクス)嶋岡 雅浩 氏

工学研究科 情報・通信工学専攻(制御工学、パワーエレクトロニクス)嶋岡 雅浩 氏

嶋岡さんは現在、名古屋大学大学院工学研究科 情報・通信工学専攻に在籍をしています。工学部を選んだきっかけは、もともと自動車が好きで、F1などの観戦もしていたそうで、その中でもエンジンやパワートレインに興味を持ったことです。そして名古屋大学を志望した理由は、名古屋大学の工学部は専攻が多く充実していること、そして大学入試のレベルについて、自分が頑張ってチャレンジして届くレベルであったことの2点をあげていました。大学院に進んだ動機は、高校の頃から理系は修士課程に進学するという認識を持っていたからだそうです。実際、名古屋大学の工学部では8~9割の方が修士課程に進むそうです。また博士課程への進学については、研究が面白かったこと、そして制約にとらわれず自由に研究ができることに魅力を感じたからとお話されていました。
実際の大学生活について、研究室配属前の大学1~3年生、研究室配属後の大学4年~大学院修士課程2年もしくは博士課程3年の、2つに分けてご説明されました。研究室配属前の3年間は研究を行うための準備期間であると位置づけていました。研究室配属後は、研究目的達成に向けて課題の把握、解決法の検討、その効果検証のすべてを自分で考えて実行するので、自分で道を切り開き課題を解決する期間であるとしていました。また、1日のタイムスケジュールについても、グラフを用いてお話されていました。研究生活については、学生が過ごす居室やミーティング・実験の様子などを写真でご紹介いただき、研究や学会参加・発表の合間に仲間たちと旅行をされたり、BBQを行ったりと充実した大学院生活を送られていました。
嶋岡さんの研究内容は、モータやロボットを対象とした新しい制御法の研究で、その中でもモデル予測制御の適用によるモータ駆動システムの高性能化に関する研究に取り組んでおられます。モータ駆動システムとの説明の中で、それはさまざまな分野から成り立っているものであり、大学1~3年生で受ける講義は大事であることをお話されました。
最後に、「大学入学に向けて、まずは高校の内容をしっかり勉強しましょう。その中で、自分がやりたいことを少し考えてみましょう。名古屋大学工学部はさまざまな分野の研究が存在しているので、自分が興味を持てる分野もきっとあります。制御工学、パワーエレクトロニクスの分野は人材不足なので、就職活動では少し有利に働くかもしれません。」とメッセージをいただきました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、生田教授と大学院生2名でそれぞれのコーナーに分かれ、参加者との懇談会が行われました。

講演者と参加者による懇談会

生田教授の懇談会に参加した方たちからは研究内容に興味を持たれたきっかけや学生たちの大学院への進学についてなど、さまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.超伝導の研究をしようと思ったきっかけを教えてください。
A.1986年に超伝導に関する大発見があり、その当時私は修士課程1年でした。当時は違う分野の研究をしていましたが、同級生が超伝導の研究をしており、とても盛り上がっていたので、私もやってみたいと興味を持ったことがきっかけです。

Q.物質ごとに超伝導になる・ならないといった予想はできるのでしょうか。
A.計算で超伝導になると予想し、実際の実験で本当にそうだった、というものもありますが、まったく予想外のものもあります。実験してみないとわからないものもたくさんあります。

Q.大学の学部から修士課程に進む学生は8~9割とのことですが、修士課程から博士課程に進む学生は1割しかいないと聞きました。なぜでしょうか。
A.色々な要因があると思います。1つは、博士課程に進むとその先の進路が限定されるのではということです。大学に残りたいがポストがないなど不安定な状況になると思われています。しかし、工学部に関しては博士課程修了後に企業に就職する人も多いので、博士課程に進んだことで困ったという話はあまり聞きません。2つ目は、日本の企業が博士課程をそんなに評価してこなかったことだと思います。会社にもよりますが、博士課程まで進むと専門的すぎると思われることもありましたが、近年は経済的な状況等により、一から人材を会社で育てていく余裕がなくなったこともあり、変わってきていると思います。また、世界的には博士課程修了者は評価をされています。日本もグローバル化が進んでいますので、会社の経営者が日本人以外の方になることもあります。このように、会社自体がグローバル化しているので、評価の仕方も変わっていくと思います。

大学院生2名との懇談会に参加した方々からは、授業や学科選択に関することや研究生活などについてさまざまな質問が寄せられました。その一部をご紹介します。

Q.学科を選択したときは、将来性や就職を見据えて選んだのですか?
A.(柴田さん)選択したコースは就職先もあまりないと言われましたが、自分の中では本当にやりたい分野だったのでそのコースを選びました。企業の方によると専門的な勉強をしていなくても人を見るので、心配しなくていいかと思います。
(嶋岡さん)学科を選んだときに修士までの進学は考えましたが、就職に絡めた学科選択は考えませんでした。学科を選ぶ際には自分の興味があることを選ぶべきですし、高校卒業時に選んだ分野が必ずしも伸びるかはわからないので、興味がある分野で研究をすることに重きを置くといいです。

Q.研究で行き詰ったときはどうしていますか?
A.(柴田さん)学部時代は教授から手を差し伸べてもらうことが多かったですが、現在は自分で考えることが多くなりました。研究を進めるうえでは自分から教授や他の学生に聞く姿勢が必要なので、それができれば研究生活も上手くいくと思います。
(嶋岡さん)他の学生とのミーティングや教授との個別研究相談で、何に行き詰っていて、何が問題かをディスカッションしています。研究は行き詰るのが当然で、アイディアの1割で成果が出ればいいほうなので、行き詰ったときは周りに相談したり、研究を見直したりするといいです。

Q.高校や大学での自習で工夫したことはありますか?
A.(柴田さん)大学ではわからないことがあればいろんな教科書を読むようにしました。中には間違ったことが書いてあるものもあるので、自分の中で「ここは正しい」というものをピックアップしながら勉強していました。
(嶋岡さん)学部時代は主に授業の復習やレポート、試験勉強をしていましたが、試験勉強で初めてわからないことが出てくることもあったので、それに対しては教科書で勉強したり、友達と勉強し合ったりしていました。高校のときは教科書や授業の内容以上のことはやらず、基礎固めをしっかりやることを意識していました。

参加者の感想(一部抜粋)