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名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第22回 医学部「先端医療機器研究開発の紹介」 イベントレポート | 体験授業・イベント

名古屋大学と河合塾のタッグで授業。

講演の様子

名古屋大学との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第22回 医学部(保健)を、2017年8月27日(日)河合塾名駅校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、中学生、高校生、高卒生、保護者の方を対象に、名古屋大学医学部の教授と大学院生をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約100名の生徒・保護者の方が、名古屋大学の最先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。

講演内容

第1部:名大教授による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者や大学院生と参加者による懇談会

日時

2017年8月27日(日)14:00~16:00

会場

名駅校

対象

中学生・高校生・高卒生と保護者の方

研究開発の原理は高度、でも試作は手作りで楽しい!

山本 誠一(やまもと せいいち)教授 (医学系研究科・保健学科)

●第1部:「先端医療機器研究開発の紹介」
 山本 誠一(やまもと せいいち)教授 (医学系研究科・保健学科)

はじめに、先端医療機器の代表的な「画像診断装置」について説明されました。先端医療機器は病気を検出する装置で、人体を傷つけることなく、断層像や三次元像を得ることができ、今後ますます重要になっていくものと考えられています。
画像診断装置の主なものに、X線CT(CT)、MRI、PETがあります。CT装置の特徴は、①高空間分解性能(細かい部分が鮮明に見える)、②短時間撮像で、心臓のように動く臓器でもぼけることなく撮れます。MRIは、高い磁場中で画像を撮影する装置で、どんな方向でも好きな場所を撮ることができ、放射線を使わないのが長所です。PETは、陽電子(ポジトロン)を放出する放射性薬剤を患者に投与して撮像し、CTやMRIでは見えない病気を検出でき、腫瘍の検出や、アルツハイマー病の早期診断で注目を浴びています。最近では、PETとCT、PETとMRIを組み合わせた医療機器も開発されています。
山本研究室では、PETやPETとMR Iを組み合わせた装置などを研究開発しています。先端医療機器が大型化していくなか、小型の装置でも新しい試みが可能であることを実証し、その後、医療メーカーが開発していきます。
さらに最近、科学の常識を覆すような新発見をされました。チェレンコフ光閾値以下のエネルギーの放射線照射により、水が発光する現象を発見し画像化することに成功しました。

最後に、山本教授が参加者の方に次のメッセージを送られました。
①医療画像機器は、原理は高度であるが、試作は手作りであり大変楽しい。
②開発した装置を学会発表したり、論文発表するのも、また楽しい。
③放射線治療装置の実験では、思わぬ大発見に遭遇することがある。
④研究はわくわくする。このような気持ちでできる仕事は少ないのではないかと感じる。
山本教授が、先端医療機器の開発にとてもやりがいを持たれており、また楽しく研究されていることが伝わる講演で、参加者の方も熱心に聴かれていました。

大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる。

●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
 医学系研究科 医科学専攻 分子病原細菌学 金山 尭人(かなやま たかと) 氏
 医学系研究科 看護学専攻 健康発達看護学分野 辻 晶代(つじ あきよ)氏

第2部では、名古屋大学医学系研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。

医学系研究科 医科学専攻 分子病原細菌学 金山 尭人 氏

医学系研究科 医科学専攻 分子病原細菌学 金山 尭人 氏

金山さんは、自らの研究したいことを追い求め、現在名古屋大学の医学系研究科で分子病原細菌学を研究されています。
高校生の時、たくさんのことに興味があった金山さんは、学科に分かれない名古屋大学の理学部に魅力を感じ、進学されました。大学入学後の一年次、金山さんは理学部の講義だけでなく、工学部や医学部などさまざまな講義を受講し、図書館に足繁く通って勉強するなど、自らの興味のあることを追い求める生活を送っていたそうです。二年次には進学した物理学科でその基礎を学びましたが、やりたいことが定まらず、生物も物理も勉強できる物理学科の生物物理専攻を選択され、四年次には光合成の卒業研究をされました。こういった環境で勉強や研究をする中で、卒業後は薬の開発に興味を持ち、現在の研究室進学に至ったそうです。
次に自らの研究活動についてお話してくださいました。金山さんは、薬が効かなくなった薬剤耐性菌にも有効な、新しい抗菌薬を開発するという研究をされています。研究するにあたって、まず課題のことを良く知らなければなりません。論文や文献を読んで勉強し、世界ではどのくらい研究が進められているのかを調べていくと、自分はどんなことを研究すればよいのかがわかってくる、と金山さんは説明されました。また、実験して出てきたデータが、自分の知りたいことにどのように関わってくるのか、という意味づけが大切であるとお話されました。トライ&エラーを毎日繰り返して研究を進めていらっしゃるということでした。
また、自らの研究生活についてもお話をしてくださり、最後に参加者へのメッセージとして、「自分が何をやりたいかという思い」と「そのやりたいことのために、いま何をするか」を明確にしていくことが重要であると述べて、お話を締めくくられました。

医学系研究科 看護学専攻 健康発達看護学分野 辻 晶代 氏

医学系研究科 看護学専攻 健康発達看護学分野 辻 晶代 氏

辻さんは病院で看護師として6年間働いた後、現在の修士課程に進学されました。臨床の知識がないと看護学の研究は難しいため、大学院で看護学を専攻するほとんどの方がそのような経歴であるそうです。
看護師として働いて4~5年経ち、仕事に対して物足りなさを感じていたある日、たまたま大学時代の恩師が声をかけてくださったことがきっかけで、現在の研究室に進学を決められました。辻さんが入学した年から博士課程教育リーディングプログラム「ウェルビーイングinアジア実現のための女性リーダー育成プログラム」が始まったこともあり、そのプログラムのカリキュラムをこなしながら研究を進められています。辻さんが所属するプログラムの特徴として、以下をあげられました。

・5年一貫であること
・月々の奨励金の支給があること(返済不要)
・プログラム独自の単位取得が必要であること
・2回の海外研修が必須であること
・国際機関関連のインターンシップの機会があること

前期課程では、授業と研究手法の基本を学ぶことが中心になり、授業自体は平日の夜や土曜日にあるため、社会人として仕事も両立することができます。一方、後期課程は研究中心で、英語の学術誌に論文が1本掲載されることが卒業の要件です。辻さんは、この博士過程の中でJICAやUNFPAでのインターンシップをはじめとし、海外研修に行く機会をたくさんいただいている、とお話されました。
次に、辻さんは自らの研究活動についてお話をしてくださいました。辻さんは、カンボジアでⅡ型糖尿病に罹患している方たちの、糖尿病の自己管理能力に関連する要因の検討についての研究をされています。カンボジアの低所得者の方は病院にも行けない環境で暮らしているため、お金をかけずに自分の体調管理をすることが求められているということでした。
辻さんは、研究は終わりがなく長い道のりであるため、本当に自分の興味がないと続けていけないと身にしみて感じているそうです。国際開発など海外に関わる分野での仕事に就きたいという、自分の将来のための研究であると同時に、インターンシップで行ったカンボジアで過ごした3カ月間の経験が自らに大きな影響を与えているそうです。カンボジアで現状を目の当たりにしたことが、研究を続ける原動力になっているということでした。
大学院では、さまざまなきっかけが重なり、知らなかった世界を知ることができたとお話をされました。それまでは看護師として働く、という選択肢しか知らなかったのが、大学院に進学したことで、国際開発の現場など、将来の仕事の選択肢を広げることができたそうです。大学院でないと出会えない人たちとの出会いもあり、より深いつながりになったことも良かったこととしてあげられました。また、奨励金をもらい、自分の将来のために勉強できる環境のありがたみを感じているということでした。
最後に辻さんの支えになっているという、恩師からの言葉として「chance for change」を紹介されました。「少し勇気を出して、一歩ずつ前に進んでほしい」と伝え、参加者からは大きな拍手が送られました。

専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会。

●第3部:講演者と参加者による懇談会

第1部・第2部の終了後、山本教授と大学院生2名でそれぞれのコーナーに分かれ、参加者との懇談会が行われました。

講演者と参加者による懇談会

山本教授の懇談会に参加した方たちからは、医療機器や研究内容に深く切り込んだ質問が寄せられました。

Q、CTやMRIで人体の組織は撮ることができるのでしょうか?また、MRIに神経は写るのでしょうか?

A、人体のどの部分でも撮ることができます。CTだと柔らかい組織は上手く写らないこともありますので、そういった場合はMRIを使用します。両方使用すればだいたいの形はしっかり見ることができます。神経はMRIにきれいに写ります。

Q、AIはどのように関わってくると思いますか?

A、AIはこれから、画像診断の領域に入ってくると思います。発展するためには、患者画像をAIに学習させる必要がありますが、患者画像の使用に関する制約が強いと、その分野の発展は遅れるのではないかと思います。

Q、CTは螺旋で前に進んでいるのでしょうか?それとも回転しているだけなのでしょうか?また、開発するときには画像を構成するための数式も同時に開発するのですか?

A、回転しているだけで、回転運動とベッドの運動を同時に行い3次元画像に必要なデータを収集します。また、開発するときには画像を再構成するための数式も同時に開発します。センサーを開発する技術、データを送る技術、画像を再構成するプログラミング技術など、さまざまな技術が入っています。

Q、大学に入る前に、放射線に興味を持ったきっかけは何ですか?

A、特別な興味はありませんでした。たまたま大学に合格したことがきっかけです。卒業研究で放射線検出器を扱ったのがきっかけです。もともと手作りで何かを作ることが好きだったこともあり、性格にあっていたのではないでしょうか。

大学院生のお二人には、参加者から「就職後や今後の進路でやりたいことは何ですか?」「大学の研究と企業の研究はどう違うと思いますか?」「大学院に進む場合、看護師としての経験はやはり必要ですか?」「物理専攻から医科学専攻に進む人は多いのですか?」「進路や勉強について保護者からの助言等はありましたか?」など多岐に渡るさまざまな質問がありました。お二人は一つひとつの質問に、ご自身の体験を交えながらわかりやすく親身に丁寧に答えてくださいました。参加者の皆さんにとっては名古屋大学での生活を身近に感じることができた、大変有意義な時間となりました。

参加者の感想(一部抜粋)