医進フェスタ「全国国公立大学 医学部医学科 入試相談会」 イベントレポート | 体験授業・イベント
医学部入試情報と合格のノウハウ、医学部教育の現状を解説
2018年11月18日(日)、河合塾 麹町校にて「全国国公立大学 医学部医学科 入試相談会」が開催され、1,000名近くの申込みがありました。
相談会に先立ち、午前中には、河合塾小論文科講師の広川 徹による「医学部面接対策ガイダンス」と、千葉大学大学院医学研究院の丹沢 秀樹教授による「医学を志す人に」と題する特別講演が開かれました。
午後は、筑波大学・横浜市立大学・千葉大学・東京医科歯科大学による大学入試説明会と、13大学の入試担当者・7大学の現役医学部生(河合塾OB/OG)・河合塾進学アドバイザーによる個別ブースでの相談会が行われました。個別ブースではそれぞれの疑問や不安について、熱心に質問する保護者や生徒の姿が見られました。
- 日時
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2018年11月18日(日)
- 会場
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河合塾 麹町校(全国医進情報センタ−)
- 対象
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中学生・高校生・高卒生とその保護者の方、高等学校の先生方
第1部:講師講演「医学部面接対策ガイダンス」
河合塾小論文科講師の広川 徹による講演では、医学部入試の小論文・面接の試験の中で、特に面接は、医師になる適性をみるためのものである、ということが伝えらえました。
医師の適性は「知性」と「人間性」の2つに集約され、このうち「知性」は知識とそれを使う論理的思考力から成り立ち、使える知識は、自分の問題意識や関心に基づいて自然に蓄積されるものです。医師を志すのであれば、当然医療に関する問題意識や関心を持っているはずなので、小論文・面接では医療トピックスについて問われ、さらにその知識を用いて、根拠に基づいて考えられる論理的思考力が問われる、とのことです。
そして、医師としてのもう1つの適性が「人間性」で、患者の苦しみに共感できる力や、患者が納得できるように話ができるコミュニケーション力が大切であり、面接でもそれが試される、ということが伝えられました。
続いて、面接試験には個人面接と集団面接、グループ討論の3つがあり、個人・集団面接では、質問の意図を理解して答えなければ回答したことにならない、との指摘がありました。たとえば、医師を志望する理由を問われた場合、親が医師である、などというのは“きっかけ”であり、志望理由にはならないこと、集団討論は、グループのメンバーを論破する力を見るのではなく、チーム医療に必要なグループで問題解決できる力を見ている、ということです。
最後に、面接での代表的な質問として、①医師の志望理由、②本学志望理由、③医療トピックス、④社会トピックス、⑤個人プロフィールの5つが示されました。重要なのは、やはり質問の趣旨を理解した上で回答することで、①については、医師という職業に対する認識や、現在の医療課題、将来のビジョンに基づいて具体的に述べること、②については、大学や地域の特性に照らし合わせて志望理由を述べること。特に地方大学の場合、卒業後にその地方に残ってくれそうかどうかや、その地方で大学時代や研修医時代を過ごせるどうかを問われている、ということなど、具体的なアドバイスがありました。
講演を通し、小論文や面接の準備は、医師を志すにあたり、その覚悟や医師になって何をしたいかという夢を見つめ直す機会となることがわかりました。
第2部:特別講演「医学を志す人に」
千葉大学の丹沢 秀樹教授からは、科学の研究成果をもとにしたヒトの理解、医学・医師という仕事の魅力と、医学者・医師を志す人へのメッセージが伝えられました。
ヒトの理解について、たとえば、ヒトはチンパンジーに比べ、「その場の状況を瞬時に把握し、記憶する」能力が劣っているが、これは、ヒトが「助け合う力」を持ったために低下した能力である、ということ、また、他の動物は現在のみを生きているが、ヒトは時空を超えて生きており、後悔したり、将来に希望を持つことができたり、過去の類似の事柄を思い出して対策を取ったりすることができる、ということが語られました。
そして、これらは大脳皮質の幹細胞の増殖制御をつかさどる機構に異変が生じ、大脳皮質が巨大化したことによって可能になった、とのことです。この結果、視覚によって認知した情報に意味付けができるようになり、世界を「自己」対「他者」の2項ではなく、「自己」対「他者」対「モノ」(第三者)という3項の関係で認識できるようになりました。とはいえ、非常に多くのヒトで構成されている社会の中でも、真に理解し合い、日常的に強い関係を維持できる範囲は20人程度で、その限界を知った上で、思いやりを持って患者や医療チームのメンバーと接することが大切である、とのことです。
また、ヒトは動物としての能力は決して優秀とは言えないため、「人が偉い」と思ってはいけない、ということ、そして、「野生動物に比べて弱い」とされるヒトの社会が発達したのは、「言語」によって世代を超えて知識を伝えてくることができたためであり、その「言語」の発達は、ヒトが直立し、喉の構造が変わり、細かい音を使い分けることができるようになったためであるので、言葉を大切にしてほしい、とのことでした。
そのほか、医師は患者の食事に、単に栄養が足りるかどうかだけでなく、「美味しい」「楽しい」という価値を伴っているかどうか、ということに配慮しなければいけないことや、小児科医であれば、病気を診るだけでなく、子どもの成長の理解のために、「教育心理学」や「発達心理学」の知識も必要であることなど、「人」として、患者に寄り添った対応が大切である、という医師の心構えが説かれました。
また、医学者・医師は、実証的かつ実用的に科学することが大切である、とのことです。たとえば円周率を3で計算して実際に円筒を作って水を入れると、水は隙間から漏れてしまいます。したがって、理論値で答える課題と、近似値などにプラスαを加えた、実用的に答えるべき課題を区別し、患者に対して適切に取り組むことが重要である、ということ、また、1つ解答が出たらそれで納得するのではなく、解答から新たな疑問を持つような姿勢が必要であることについても説かれました。
最後に、「自分がやりたいことを職業としている人は少ないが、与えられた職を『天職』として捉え、誠実に精進してほしい」と伝えられました。
第3部:大学入試説明会/相談コーナー
筑波大学・横浜市立大学・千葉大学・東京医科歯科大学による入試説明会では、各大学から、一般入試と推薦入試、地域枠推薦入試のシステムについて、合格者のセンター試験・二次試験の得点、二次試験・小論文・面接の内容などについての説明が行われました。
加えて、各大学の特徴が紹介され、筑波大学からは、臨床実習が2年間と国内最長で、海外での臨床実習の機会も充実していることなどが、横浜市立大学からは、二次試験は英語の長文問題が特徴的であることや、合否判定の仕組みについての説明がありました。また千葉大学は、勉強だけでなく運動部の部活も盛んであること、シミュレーターでの内視鏡手術や、模擬患者との診察練習などができる、日本一大きい実習施設を設置していることなどが、東京医科歯科大学からは、教育目標の1つに「国際性豊かな医療人の育成」を掲げているということ、留学生らと行われる英語でのディスカッションについてや、ハーバード大学など海外大学での臨床実習などについての説明がありました。
同時に別室で開催された相談コーナーにも、多くの保護者や生徒が訪れました。各ブースでは、入試システムのほか、地方大学に対しては地方の特徴や生活について、単科医科大学に対しては総合大学の医学部の入試との違いや特徴などの質問が寄せられました。来場者からは、現役医学部生に対しては、具体的な受験勉強の方法や面接の様子、河合塾進学アドバイザーに対しては、受験校の選択の仕方や特定の大学の入試対策などについての質問が多く寄せられました。