「テキスト」制作の裏側 コース・講習
中村敬一 数学科講師 開発研究職
数学Ⅲテキストのスーパーバイザー、全統模試問題作成のチーフを歴任。多くの模試、テキストを執筆し、東大、東工大、医学部志望者などのトップレベル理系生の授業を中心に担当。
谷口直美 教育教材開発部数学科チーム サブチーフ
数学のカリキュラム・テキスト・模試および各種コンテンツの開発・編集を担当。
依田栄喜 数学科講師
大学受験科(高卒生コース)理系標準テキストの作成チーフ、高2生テキスト作成チーフ、全統模試問題作成チーフを務める。高校1年生から大学受験科生まで、東大、医学部志望者を含む幅広いレベルの授業を担当。
河合塾のテキストは、実際に授業をする講師が制作を担当しています。講師たちは毎年、全国の多数の大学入試を解いて、各大学の入試傾向と対策を話し合い、約半年かけてそのエッセンスをテキストに落とし込んでいきます。今回は数学科のテキストを作成している講師・編集者に、テキスト制作の裏側を伺いました。
- 所属・役職はインタビュー当時のものです。
テキストをつくるにあたってまず何をしますか?
谷口: まず、作成を依頼する講師の人選を考えます。全国で授業を担当している講師から選ぶようにしています。
テキスト制作に関わっている方はどのぐらいいるのですか?
谷口: 数学のテキスト制作だけでも、河合塾の数学科講師が100名ほど関わっています。
河合塾のテキストの特徴とは何でしょう?
中村: 入試逆算型で作成している点です。入試をゴールとしたときに、1年や2年の準備期間で考えると、1年前だったら1年後に合格させるためには、何を、いつ、どういうタイミングで生徒に教えていくのか?ということを考えてつくっています。
他の塾で使われているテキストとの一番の違いは?
中村: 問題セレクトの加減だと思います。問題数をどれだけ絞り込むか。問題を増やすことは簡単です。1,000題でも2,000題でもたくさん与えることは誰でもできます。そうではなく、河合塾のテキストは必要最小限の中で勝負をしていく。テキストは問題数が少なければ少ないほど、つくるのが難しいんです。
入試問題は、毎年何問くらい解いているのですか?
依田: 数学だけでも、全体で2,000~2,500問は手分けをして解いていますね。
谷口: 1月から入試が始まるので、入試問題を随時確認し、3月中旬に数学科講師を集めた研究会を開きます。講師には、それまでに120大学の約2,500問を解いてもらいます。研究会ではその分析結果を発表し合います。
入試問題はその年によって傾向が違うことはありますか?
依田: ありますね。この大学は例年こんな感じというのがある一方、数年おきに傾向が変わる大学もあります。それも、毎年問題を解いているからこそわかることであり、長いスパンでの傾向をつかむことができるわけです。
出題傾向はどの程度わかるものですか?
中村: 大きな流れで言うと、学習指導要領が変わるタイミングが節目です。学習指導要領が変わると出題分野も変わります。一方で、学習指導要領の影響を受けず、ずっと残っている問題もあります。たとえば、ある大学で5題出題されるとすると、2題は今までと変わらず、残り3題は学習指導要領の影響で変わると推測することができます。これはかなりの確率で当たりますね。統計的に出題分野のパーセンテージはわかっています。文部科学省の動きや世の中の流れから、ある程度つかめるものもあります。
テキストを評価する基準は決められていますか?
谷口: 内容の精査は執筆者以外の授業担当講師にモニターの依頼をします。各地域1~2人ずつ、7~14人ぐらいの講師に、このテキストで授業をやってみてどうだったかを全部書きとめてもらって、問題とテキスト全体を通しての評価をしてもらいます。その結果は、翌年改訂するときに共有します。授業をした講師も授業の休み時間になるとテキスト制作にかかわっている講師に感想を言いに行くんですよ。依田先生はいつも囲まれていますね。
依田: 集中砲火ですよ!この問題を入れた意図はなんだと。その問題を選んだ背景をちゃんと説明しないといけません(笑)。
谷口: ベテランから若手まで一緒につくっていたり、チームで作成しているので、コミュニケーションもとりやすく、感想を言いやすいのかもしれませんね。
テキストをつくるうえで一番工夫している点やこだわっている点はありますか?
中村: 実際の入試問題には、問題の中で使うべきテーマが2つ以上入ります。特に入試難易度が標準から上の大学になると、1問の中に2~3テーマが融合されるわけです。でも、受験勉強を始めたばかりの生徒には、3テーマあるものは3つの問題でバラバラに教えなければいけません。実際に入試で出題される融合問題を解くためには、何をどの順番で、どの問題で教えるか、一つ一つ問題をつくらないといけないので、その問題の構成、分量や難易のさじ加減が一番工夫しているところではないでしょうか。
依田: テキストでは、基礎を徹底する部分のメリハリが強くでるように意識していますね。基礎を教える時期は、とことん基礎に徹底し、教えたいテーマが際立つように問題をつくります。受験に合格するために必要なノウハウがすべて効率よく、体系的に学べるように問題を配列しています。東大を志望する受験生であっても、はじめから東大の過去問ばかりを並べたテキストを使うようなことはしません。基礎ができていない状態で、複数のテーマが融合された入試問題をいくら解いても数学の力は向上しませんからね。
やはり基礎が大切なんですね。
依田: そうですね。東大に行くには、ひたすら東大の過去問をやるものだと思っている生徒もいますが、実際は基礎を万全にすることが何より大切です。そのため、基礎を固める期間をしっかりつくって授業を展開しています。
実際に合格を手にしたOB、OGの皆さんに、河合塾のテキストを利用してみてどう感じたのか、その声を聞いてみました。
若海 翼さん/東京大学 理科Ⅰ類合格
鈴木 悠さん/東京大学 文科Ⅰ類合格
渡邉 琉菜さん/京都大学 文学部合格
テキストの中に込めている思いはありますか?
中村: それはやはり「生徒の合格」ですね。受験前になると生徒は過去問に取り掛かります。でも、本当にそれだけでいいのか、他に何を勉強したらいいかと聞かれることがありますが、私のアドバイスとしては、テキストをやり直せということです。最後の最後はこれまで、自分がやってきたものが確実になっているかどうかを確認するために、テキストをもう1回やり直せと言っています。7回やり直せと言う講師もいるぐらいです。
それぐらいテキストには大学入試のエッセンスが詰まっているのですね。
中村: 河合塾のテキストで扱わなかった問題は、入試では出ません。先ほど言った通り、私たちは1~3月まで入試問題を2,500問ほど解いています。そこで何をやっているかというと、テキストに載っていないテクニックを要する問題、新傾向や目新しい問題がないかをチェックしています。そういう問題があったら、即座にテキストに反映させなければなりません。私はテキスト制作に関わって20年になりますが、これまでテキストに載っていないテクニックを使った問題はありませんでした。だから、最後はテキストに戻ってこいと自信を持って言います。最後の最後で、生徒たちに「河合塾でやったことだけ復習していれば、絶対に受かる」と言えるかどうかが、テキストに懸けている思いです。
そう言い切っていただけると、受験生も安心できます。
依田: 必要なノウハウがテキストに全部入っているかが大事ですね。合格するために必要なノウハウはすべて網羅する、という信念をいつも持ちながらテキストをつくっています。だから私も、生徒にはテキストをもう1回やり直せとしか言わないですね。
テキストは講師の方の熱意の集大成ですね。
谷口: そうですね。汗も涙も。
依田: 何十年ものノウハウが詰まった、まさに河合塾秘伝のタレです(笑)。
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