名古屋大学×河合塾 共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第3回 文学部「誰の顔なのか:肖像画研究の最新状況」 イベントレポート | 体験授業・イベント
文学部には色々な学問がある。
名大との共催イベント「名大研究室の扉in河合塾」第3回 文学部を、2014年7月6日河合塾 名古屋校で開催しました。
河合塾と名古屋大学が共同で行う特別イベントとして、高校生・高卒生・保護者の方を対象に、名古屋大学文学部の教授と大学院生をお招きし、講演会や懇談会を実施しました。約60人の生徒・保護者の方が、名古屋大学の先端研究者の講演を聞き、大学での研究の奥深さや楽しさを体感できる絶好の機会となりました。
冒頭、名古屋大学文学研究科副研究科長の佐久間教授から、「文学部には色々な学問がある。今回の講演を聞いて、進路選考の参考にしてください。」とのお話がありました。
- 講演内容
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第1部:名大教授による最先端研究についての講演
第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
第3部:講演者と参加者による懇談会
- 日時
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2014年7月6日(日)10:00~12:00
- 会場
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名古屋校
- 対象
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高校生・高卒生と保護者の方
人文学とは、人間の意思的な想像を生み出す学問。
●第1部:「誰の顔なのか:肖像画研究の最新状況」
文学研究科 伊藤 大輔教授
第1部では伊藤教授に、人文学と美術の関連から人文学とは人間の意思、つまり言葉でないものを扱い、そこから想像を生み出す学問であるということと、刺激と発想の世界であることをお話ししていただきました。
まず先生は、最近の美術品はデジタルで作られる物が多く、LINEのスタンプを使って会話をしたり、そのスタンプを生み出して商売をしたりなど、ITやSNSの発達によりVisual Imageが与える影響力が大きいことについて教えてくださいました。
また、私たちが最も身近に感じている肖像画は紙幣に書かれた肖像画であり、古来より肖像画はお金に使用されていたことや、古代ローマ皇帝が積極的に肖像画をお金に活用したこと、中国の皇帝はお金に顔を載せないことで神秘性を高めていたこと、また日本では、戦後の時代的背景とお金に親近感を持ってもらうために、近代の文化人を肖像画を紙幣に載せていることなど、お金一つの肖像画をとってもこんなにも意識の違いや文化が異なるということをお話していただきました。
そして、「神護寺三像の論争」をテーマに、源頼朝・平重盛・藤原成範だと思われている絵が、「風俗的考察」、「素材論的考察」などにより異なる人物の肖像画ではないのか?さらに、「様式的判断」「文献史科的判断」「図像的判断」によるさまざまな見解から、それを裏づけるような説が次々に出ていることについて、「決定的なものは見出せないが、最終的に今回のケースは美術史学者による感覚的判断の如何に再び回帰してきた。諸分野の相互乗り入れの状況の中で、幅広い見解が必要である。」と締めくくり、興味深く聞いていたお客様からは温かい拍手が送られました。
大学生活や研究内容を知り、将来の幅を広げる。
●第2部:大学院生による大学生活や研究についての講演
文学研究科 中條 真実氏
文学研究科 岡 英里奈氏
第2部では、名古屋大学文学研究科所属の2名の大学院生に、キャンパスライフや現在の研究内容をテーマにお話ししていただきました。
文学研究科 中條 真実氏
受験生の時に河合塾 千種校に通っていた中條さんは、大学に入学されてから授業でシェイクスピアの文学に触れた事がきっかけで、受験の時とは違う英語の勉強の仕方を知り、英米文学を選考されました。現在は20世紀以降のイギリス文学や現代イギリス文学についての研究をしている事をお話してくださいました。文献を探すために海外へ赴かれるなど、興味があること、やりたいことは行動してみることが重要と話してくださいました。
文学研究科 岡 英里奈氏
博士課程後期より名古屋大学大学院に来られた岡さんは、日本現代文学・文化を専門とし、昭和10年代における歴史的小説『夜明け前』について研究されています。「大学の教授の一言により、文学に出会い、おもしろいと感じるようになった。」と、実体験を交えながら、現在の研究生活の様子をお話ししてくださいました。受験生の方は大きな関心を持って聞き入っていました。
どの分野の講演も奥深くグローバルな内容で、文学部に対するお客様の視野が広がったと感じられる講演でした。最後には温かい拍手が送られました。
専門分野をより深く、興味と経験・知識の交換会。
●第3部:講演者と参加者による懇談会
第1部、第2部が終了後、伊藤教授と大学院生2名はそれぞれのブースに分かれ、参加者との懇談会が行われました。
伊藤教授の周りに集まった参加者に、「質問がある方」と声をかけると、次々と手が挙げられました。伊藤教授は一つずつ丁寧に質問者が理解できるよう回答されました。
「今のうちにやっておいた方が良いことは?」という質問には、「漫画・映画など人間が表現したものを見ることが大切。さまざまな情報をリアルタイムで知り、教養をつけていくことが大学の学びにも生かされる。」とアドバイスをいただきました。
「肖像画は素材がわかるくらい近くで閲覧できるものですか?」という質問には、「研究目的であれば、申請すると資料の閲覧ができる。また、近年はカメラなどの精度が高くなっているので、詳細まで観察することができる。」と、研究の進め方についてわかりやすくお話をしていただきました。
大学院生のお二人には、参加者から「大学院生活」「文学部を選んだ理由」「受験勉強の計画の立て方」「院試について」など多岐にわたる質問があり、そのひとつひとつに実体験を交え、専門的な内容もわかりやすくお答えいただきました。
参加者と一体となった親しみやすい雰囲気の中で、第一志望合格に向けてやる気が芽生え、大変有意義な時間となりました。