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「ランク」だけでは見えない難度を詳細分析!
2018年度入試の合格者の実態から入試難度を分解して見てみると、大学によって大きな差が明らかに・・・
大学の「ボーダー」と「ランク」
河合塾が大学の難度を示す尺度として、「ボーダー」や「ランク」を発表しています。使い方によく混乱が見られますので、少し言葉の解説をしておきましょう。
「ボーダー」は正確には「ボーダー得点率」のことで、河合塾では「センター試験の必要レベル」を示すものとして使います。ただし、「ボーダー得点率」は絶対合格できるということではなく、「合格可能性50%」の得点率を指します。より正確に表現すると、「合格者と不合格者が同数いるセンター試験の得点率」です。つまり、「その得点率」で「ある大学」を受験すれば半分の人が合格し、半分の人が不合格になるということですね。「ボーダー得点率」は、毎年、各大学の「センター試験の入試結果実態」を検証し、全統マーク模試で修正しつつ、「予想」として次年度の判定に利用するようにしています。
なぜ「ボーダー得点」ではなく、「ボーダー得点率」でなければならないのでしょうか。それは、各大学がセンター試験の得点を独自に傾斜を掛けて採用しているために満点が同じではなく、単純に「得点」で示すと大学どうしで比較した時に、どちらが高いのかがわかりにくいためです。つまり、大学どうしを比較しやすいように「得点率」にしてあるわけです。
さて、一方の「ランク」は「全統記述模試」の偏差値を使用して、国公立大なら二次試験、私立大学なら一般入試での「大学の課す試験の必要レベル」を示すものとして使用します。河合塾は合否人数を「偏差値2.5ごとで集計」していますので、それに応じて難度も「偏差値2.5ごと」で示します。この「偏差値2.5」ごとの集計で合格率50%になる偏差値帯を探し、そこをその大学の「ランク」とします。「大学独自試験の入試結果実態」のランクを検証し、全統記述模試で「予想」として次年度の判定にしていることは、先ほどの「ボーダー得点率」と同様です。
ちなみに、模試ではボーダー得点率の前後やランク偏差値では、「C判定」になります。決してAやBではないところがポイントです。C判定は勝負ポイントとして、基本的には「受験しよう」と考えるべきでしょうね。
医学部/医学科のランク
ここでは大学独自試験のレベルである「ランク」に注目してみましょう。ランクの高い大学ほど受験生も成績上位・・・その中でC判定出るようなら合格の可能性が高いです。もしも自分の第一志望とする大学の判定がそこまで出ないのなら、他の大学に志望を変更することがあってもいいでしょう。
ただし、医学科はランクの最下限に限度があり、どのレベルでも探せるわけではありません。工学部や理学部なら、河合塾が設定しているランクで「13ランク(偏差値35.0)」までどこかの大学があります。一方、医学科では最低でも「2ランク(偏差値62.5)」、多くの大学は「1ランク(偏差値65.0)」~「0ランク(偏差値67.5)」です。それでもランク設定が足らず、「Mランク(偏差値70.0)」や「M2ランク(偏差値72.5)」という数字以外のランク設定さえあります。このあたりが他の学部系統とは異質なところです。
医学科入試はこのレベルの高さですから、多くの受験生は必死に学習しますし、成績が足らなければどう探しても、ピッタリくる大学がないこともあります。では、大学の「ランク」まで成績がない人は、どこも受験先はないのでしょうか?
ここでもう一度思い出してみましょう。「ランク」とは「合格率50%になる偏差値帯」でしたね。ということは、正確な言い方をすれば、受験できないのではなく、合格可能性が50%より低くなるということです。しかし、どれくらい可能性が低くなるかは大学によって若干違いますが、実は「誰もよく分かっていない」ことが多いのではないでしょうか。
私も個人的な長い指導経験の中で、気合いだけで第一志望に当たって砕ける人がいたり、あと一歩で合格できそうな大学なのに、避けてしまう人がいたりするところを多く見てきました。実は大学によって合格する受験生の成績には幅があり、何でも単純に「医学科」とひとくくりにする訳にはいかないのです。ここはひとつ、みなさんに本来の大学ごとの合格状況の分析結果をお伝えする必要がありそうです。
設定ランクだけでは見えない大学の難度
例えば秋田大学と島根大学はいずれも二次試験の科目が「英語・数学」の2教科です。ともにランクは65.0と河合塾では設定しています。では、どの成績の生徒がどれくらい合格していると思いますか?2018年入試でこれを調査したものがグラフ①~④です。
実は、「偏差値67.5以上」の受験者が全合格者に占める割合は、秋田大が34%に対して島根大はわずか14%しかありません。「偏差値65.0~67.4」の合格者をこれに足して集計しても、秋田大が65%(34%+31%)に対して島根大は41%(14%+27%)ですから、合格者層(おそらく受験者層も)が少し違うことが分かります。グラフには「偏差値62.5~64.9」の合格者割合も入れておきましたので、それ以下の成績で合格している人がいることも読みとれます。
一方、高い成績の人が合格者の大半を占めてしまう大学もあります。「偏差値67.5以上」の人が合格者の大半を占めている例では、東京大や東京医科歯科大が100%となっている他、神戸大の95%、京都大と大阪大の93%、名古屋大の88%などが目立ちます。
私立大は複数の大学を併願できるために国公立大ほど明確に高いランクが出にくい特徴がありますが、それでも慶応義塾大で「偏差値67.5以上」の人が92%、東京慈恵会医科大が72%、日本医科大が78%など高い合格者占有率です。したがって、偏差値67.5未満でこれらの大学に合格することは、残念ながら「現実的にはかなり難しい」と申し上げなくてはならないようです。
ざっと大学の状況を見たところでは、東京や大阪近辺の府県など都心部の大学、旧帝大や旧制医科大は非常に「合格者(=受験者)」のレベルが高くなっており、一方で1970年代以降に地方を中心で設立された「新設医大」はやや「合格者(=受験者)」が低めのイメージです。
それでも医学科の入試難度が高いことには変わりがありません。受験生としては最大限の学習をし、最後の出願でこれらの大学のうちいずれを受験するかを決める時の補助として、この情報を活用してほしいところです。合格することを第一に考えて志望変更することは一つの方法です。その一方で初志貫徹して第一志望大学を目指すことも、一つの生き方です。
いずれかが正解なのではなく、いずれも本人の人生を背負った「選択」です。それぞれの大学では、どんな人がどれくらい合格するのか・・・これを受験生本人が考え、そして選択します。いろいろな情報を知った上で出願を選択するならば、考えに考えた上での「自分の前向きな選択だ」と胸を張って結論づけることができるはずです。
受験とは常に受験生本人の選択によるものであってほしいところです。そして様々な情報は、受験生自身の決定に生かされてこそ、その価値を持つものであることを忘れてはならないでしょう。